会長挨拶

司法書士は、法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の形成に寄与します。

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1.使命と職責~新たな日常を生きる法律家として
 令和元年の司法書士法改正により、司法書士法第1条に「司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」との使命規定が創設されました。
 この規定は、司法制度改革や行政改革の基本理念に連なるものであり、他士業の使命規定にはない新たな旗印と考えております。また、この司法書士が行う不動産登記、商業登記、裁判所提出書類作成、簡裁訴訟代理、債務整理、成年後見、遺産承継、民事信託支援など、多様な業務のすべてに通底するものでありますので、司法書士の行う業務のすべては国民の権利擁護に資するものでなければなりません。

 新型コロナウイルス感染症がもたらした生活様式の変化、即ちリモート化などのDX(デジタルトランスフォーメーション)による新しい時代の登記・裁判制度、そして、社会経済のあり方が大きく変容を迫られることによる失業者や経済的困窮者の増加、自死や倒産の増加への懸念に対しても、国民の権利擁護の担い手としての職責をこれまで以上に果たしていく必要があります。

2.空き家・所有者不明土地問題の解決の担い手として
 令和3年4月21日、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立しました(同月28日公布)。
 両法律は、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制の見直しを行うものとされ、まず、「発生の予防」の観点から、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化し、また、相続等によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設することとしています。そして、「利用の円滑化」を図る観点から、所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するなどの措置を講じることとしています。

 司法書士は、この社会問題に関して、以下の役割を担ってまいります。
(1)相続登記の義務化がされたことに伴う、「相続登記の法律専門家」としての役割
(2)新たに創設される土地管理人等や、見直しがされた不在者財産管理人や相続財産管理人等の財産管理人としての役割
(3)新たに創設される所在不明共有者の共有持分の取得手続や、「裁判による共有物の分割」の見直しにより柔軟となった共有物分割訴訟を活用した共有不動産の処分における役割
(4)新たに創設される土地所有権の国庫への帰属の承認手続における役割

 そして、全国の相続登記相談センターにおける無料相談等を通じて、一人でも多くの国民がアクセスできるよう、広報活動も充実させていきます。

3.民事裁判のIT化~今こそ本人訴訟の担い手としての期待に応える
 令和4年に民事訴訟法が改正され、民事裁判のIT化が行われる予定です。「国民に利用しやすく、わかりやすい民事訴訟手続という、現行の民事訴訟法の基本に合った理念の実現」という趣旨こそが、すべてのメリットに最優先されるべき重要な視点であると考えています。
 法改正後、司法書士は、簡易裁判所における訴訟代理人として、また、地方裁判所・簡易裁判所等における本人訴訟のサポーターとして十全な対応をする必要があります。特に、わが国の本人訴訟率に鑑み、本人訴訟のサポート役としての役割に大きな期待が寄せられています。
 司法書士総合相談センター等を基軸とした、本人訴訟のサポート体制につき、裁判所・法務省をはじめとした関係省庁との協議も踏まえたうえで、十全な支援を実施したいと考えています。

4.150周年の節目を迎えて
 司法書士制度は、令和4年8月3日に150周年を迎えます。司法書士の歴史は、変容する国民の法的需要に真摯に応えてきたことによって積み重ねられてきました。
 上記に述べた、空き家・所有者不明土地問題や民事裁判のIT化のみならず、その他、不動産登記、商業登記、裁判所提出書類作成、簡裁訴訟代理、債務整理、成年後見、遺産承継、民事信託支援といった様々な分野において、これまで以上に社会の期待に応えることのできる法律家団体を目指すため、全国の司法書士が使命を自覚しつつ職責を十全に果たし、倫理の涵養を図り、執務レベルを向上させるための研鑽を積むことができるような体制を強化することをここに宣言いたします。

日本司法書士会連合会 会長

小澤 吉徳