会長声明集
改正民事訴訟法等の全面施行に関する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳
いま、わが国の民事裁判手続は、かつてない構造的変革の只中にある。
本日、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)が全面施行された。これにより、オンラインによる訴えの提起、訴訟記録の電子化、ウェブ会議を活用した各種手続が現実のものとなり、長く続いた「対面・書面」という司法手続の伝統的形態が、大きく書き換えられることとなった。
民事裁判手続のデジタル化は、電子申立てによる手数料の低減、郵便費用の手数料への一本化、訴訟記録への随時アクセスなど、国民にとって大きな利便性をもたらすものである。他方で、本人訴訟の当事者の中には、オンライン手続の利用に困難や不安を抱える人も少なくない。改正法が、本人訴訟の当事者についてオンラインによる申立て等の利用を任意としているのは、こうした実情に配慮した措置である。
もっとも、オンライン利用を任意とするだけでは、デジタル化による利便性を十分に活用できない人が残されるおそれがある。民事裁判手続のデジタル化が新たな司法アクセスの格差を生じさせないよう、その橋渡しを担うことこそ、わたしたち司法書士に課された重要な使命であると確信する。
改正法案の審議において、衆議院・参議院両法務委員会は、附帯決議で、訴訟代理人によらない当事者への支援体制の確保、制度周知の徹底、利便性向上のための意見聴取など、司法書士を含む関係者による支援体制の整備への期待を示した。当連合会は改正法成立時の会長声明において「全国の司法書士会、司法書士と一丸となって本人サポートに取り組む」と表明した。本日の全面施行は、その決意を具体的な実践へと移していく重要な契機である。
当連合会は、全面施行にあたり、本人訴訟のITサポートに対応する司法書士事務所の把握及び情報提供、市民向けリーフレットの作成・周知、全国157か所の司法書士総合相談センターにおける相談・支援体制の充実など、地域の実情に応じた取組を進めていく。
また、民事裁判手続のデジタル化への対応は、本人訴訟支援に限られるものではない。認定司法書士は、簡易裁判所における民事訴訟手続等について代理する権限を法律上付与された法律専門職として、平成15年以来、国民の身近な紛争解決を担ってきた。当連合会は、認定司法書士がデジタル化された民事裁判手続に的確に対応し、その職責を十分に果たすことができるよう、実務研修及び運用情報の提供等を通じて必要な支援を行っていく。
司法書士は全国の簡易裁判所所在地の98.9%に事務所を有し、司法過疎地域を含め、国民に最も身近な法律専門職として、簡易裁判所における訴訟代理、本人訴訟支援等を通じて、誰もが法的手続に自らアクセスしうる環境の整備に努めてきた歴史がある。今回の民事裁判手続のデジタル化においても、その根底にあるのは、「誰ひとり取り残さない司法アクセス」の理念にほかならない。当連合会は、全国の司法書士会及び司法書士とともに、本人訴訟を行う国民への支援と、認定司法書士による簡裁訴訟代理業務のデジタル化への対応の双方を着実に進め、この理念の実現に向けて不断の努力を重ねていく所存である。