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2026年(令和8年)08月03日

「AI時代における民事司法を考える研究会」取りまとめの公表に当たって(会長談話)

日本司法書士会連合会

会長 小澤 吉徳

本日、「AI時代における民事司法を考える研究会」(座長・宍戸常寿東京大学教授)による取りまとめが公表されました。本研究会では、2025年(令和7年)11月の第1回研究会以降、12回にわたり、民事司法分野におけるAIの利活用とこれに伴う諸課題について、法的・実務的側面と技術的側面等を架橋した多角的な検討が行われたものであり、当連合会も関係団体として参画し、議論に加わってまいりました。

本取りまとめは、司法書士を、裁判所・弁護士とともに民事司法を支える「法律実務家」として位置づけ、その業務におけるAI利活用の価値・便益とリスク・課題を正面から検討されています。

また、本取りまとめは、AIの利活用が民事裁判の充実・迅速化と司法アクセスの拡充に資するとの積極的意義を確認しつつも、裁判を受ける権利及び個人の尊重に立脚し、AIに司法の判断作用を代替させることを指向することは相当ではないと位置づけました。そして、法律実務家がAIを利活用するに当たっては、AIを活用する範囲や条件について、法律実務家自らが最終的な実質的判断を行うこと、すなわちヒューマン・イン・ザ・ループを形骸化させず、その内実を確保することが重要であるとの基本的視座を示しました。当連合会は、これらの整理をいずれも高く評価しています。

本取りまとめにおける検討の対象は、主として訴訟代理人としての活動を想定するものですが、司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務にとどまらず、裁判書類等作成関係業務を通じ、訴訟代理人を選任することなく訴訟を追行する当事者本人を支援してきました。本取りまとめも指摘するとおり、今後、当事者本人がAIを利活用して裁判所に提出する書面を作成する場面が増加すると思われるところ、AIの出力に対する適切な検証を踏まえず、そのまま裁判所に提出されるならば、当事者本人の権利の適切な実現を妨げるおそれがあります。当事者本人が語る生の社会的事実を丁寧に聴き取り、AIの出力の適否を、法律実務家である司法書士としての知見から批判的に検証し、本人の主体的な意思決定を支える場面においてこそ、ヒューマン・イン・ザ・ループの視点は不可欠であり、司法書士はまさにその担い手です。当連合会は、本人訴訟支援におけるAI利活用の在り方が今後の検討課題として深められることを強く期待するとともに、その検討に積極的に貢献する所存です。

また、AI利活用の環境に地域や経済的基盤による格差が生じることは、司法アクセスの観点から望ましくありません。地域に根差した法律実務家である司法書士は、この格差を埋める社会的基盤であり続ける必要があります。

さらに、当連合会は、AI時代において、法律実務家である司法書士自らが、批判的思考力を向上させることが重要であると考えます。本取りまとめが指摘するとおり、AIの技術的進展に伴い、現在以上にもっともらしく、形式が整った出力がされるようになると考えられるため、これを過信するおそれは一層高まります。AIの出力内容が法的・倫理的に妥当であるかを批判的に検証する能力は、基礎的な法的知識と法的分析能力の涵養によって成り立つものであり、この能力こそが、AI時代における法律実務家としての司法書士の職責の中核です。当連合会は、このような批判的思考力を備えた法律実務家の育成が国民の権利擁護の基盤であるとの認識のもと、司法書士に対する研修の在り方や、次世代を担う司法書士の養成課程等についても検討を深めてまいります。

当連合会は、司法書士がAIを利活用する際の在り方の検討、司法書士に対する周知啓発、AIを利用して作成された証拠への対応をはじめとする実務上の課題の検討に取り組むとともに、国民の権利擁護の観点から積極的に意見を述べてまいります。

司法書士は、国民に最も身近な法律実務家として、AIをはじめとした新たなテクノロジーを国民の権利の適切な実現につなげ、自由かつ公正な社会の形成と維持に寄与してまいります。