会長声明集
民法等の一部を改正する法律(遺言関係)の成立に関する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳
本日、遺言制度等に関する民法等の一部を改正する法律(以下「本法律」という。)が成立した。
本法律のうち、遺言制度に関しては、普通の方式におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式として保管証書遺言を設けるとともに、死亡危急時遺言及び船舶遭難者遺言について、録音及び録画を同時に行う方法による新たな方式を追加するなど、デジタル技術の活用を踏まえた制度整備が図られた。
従来、自筆証書遺言が担ってきた真正性、真意性及び熟慮性等を、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式においていかに確保するかが大きな課題であった。本法律により創設される保管証書遺言は、遺言者による遺言書保管官の前での全文口述、遺言書保管官による形式的確認、法務局による保管等を通じて、この課題に正面から応えるものである。これにより、遺言が無効となるリスクや、作成した遺言書が発見されないというリスクを低減し、遺言者の最終意思をより確実に実現するための環境が整備されることとなる。
また、死亡危急時遺言及び船舶遭難者遺言に関しても、録音及び録画を同時に行うことを要件として、証人要件が緩和された。加えて、船舶遭難者遺言については、特定の者に送信することにより証人を要しない方式も整備された。これらの制度整備は、緊急時又は特殊な状況下においても、遺言者の最終意思を可能な限り実現するための重要な一歩である。
遺言制度がより利用しやすく、かつ、信頼できる制度となることは、相続人間の紛争を予防するのみならず、円滑な相続登記の申請にも資するものである。本法律による遺言制度の整備は、令和6年4月1日より施行された民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)による相続登記の申請義務化と相まって、空き家・所有者不明土地問題の根本的な解決にも大きく寄与するものと期待される。
司法書士は、登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、また身近なくらしの中の法律家として、これまでも多くの相続及び遺言に係る事件に適切に関与してきた。遺言には高度な機微情報が含まれることを踏まえ、当連合会は、遺言者のプライバシーの保護とデータセキュリティの確保に最大限の注意を払うとともに、司法書士が最新のデジタル技術を十分に活用できるよう取り組んでいく。その上で、保管証書遺言をはじめとする新たな遺言制度が、利用しやすく、かつ、信頼できる制度として定着するよう、周知及び相談体制の整備、関係機関と連携並びに依頼者の状況に応じた適切な遺言の方式の選択に係る説明助言等を通じて実務の側面から適切に対応することで、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与していく所存である。