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会長声明集
2012年(平成24年)08月01日
社会保障制度をなし崩しにする社会保障制度改革推進法案に反対する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司
社会保障制度改革推進法案が衆議院を通過し、参議院で議論されようとしている。この法案には、我が国の社会保障制度をどのようなものにすべきであるかという根本的課題についての理念も目標も示されておらず、社会保障制度の改革を推進しようとする法案とはいえない。
それどころか、同法案は、その目的を「安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため」とし、「家族相互及 び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援」することを基本的な立場としている。これらの考え方は、国の責任を放棄し、これを個人に押し付けよ うとするものであり、社会保障制度の理念に反する。
また、社会保障制度にかかる給付を「受益」と表現していることは、明らかに不適切である。さらに、たびたび使われている「適正化」という言葉は、公費負担の割合を低下させ、国民の負担を増加させようとする懸念がある。
現在、様々な議論がされている生活保護制度については、その根拠となる条文が附則第2条という不自然な場所に置かれ、不正受給者への厳格な対処とともに生活扶助、医療扶助等の給付水準の「適正化」を早急に行うこととしている。
不正受給者への厳格な対処や就労の支援は当然のことであるが、問題は、生活保護受給者の増加の原因が社会の構造そのものにあり、本来は生活のために受給 が必要な世帯に生活保護が行き渡っていないことにある。生活保護受給者が増えたから給付額の基準を切り下げるという考え方は、健康で文化的な最低限度の生 活を営む権利を保障する日本国憲法第25条の趣旨に反して、国の責任を放棄するものであり、認められるべきものではない。
この社会保障制度改革推進法案が成立すれば、社会保障制度は、より良い改革が推進されるどころか後退することになるものであって、当連合会の姿勢とは相容れないもので、その成立には断固として反対する。