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会長声明集
2020年(令和02年)10月30日
生活保護基準引下げに関する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
当連合会は,生活保護基準引下げに関し,幾度となく反対の意思を表明してきた。平成19年12月17日の会長声明においては,「1.生活保護基準の見直しについては、公開の場で市民の意見を十分に聴取した上、生活保護利用者・低所得世帯当事者の生活実態を踏まえた慎重な検討を行うことを強く求める。2.生活保護基準は、憲法25条が保護する「健康的で文化的な生活」を護るものでなければならず、安易かつ拙速な生活保護基準の切り下げには、断固として反対する。」旨表明し,平成25年5月29日,同年12月6日に成立した生活保護法一部改正法案に対してその廃案を求める会長声明を発出した。更に,平成29年12月19日,25年から3回にわたり生活扶助が引下げられたことに関して,これ以上の生活扶助基準の引き下げは行われるべきではないとの会長声明を発出し,厚生労働大臣が社会保障審議会生活保護基準部会における報告書の検証結果を機械的に採用するならば,最大1割を超える削減がなされることについて強い懸念を表明した。
平成25年以降,全国の都道府県で生活保護基準の引き下げの取消を求める集団訴訟が提起され,最初の司法判断として,令和2年6月25日,名古屋地方裁判所において,原告の請求を棄却する判決があった。
当連合会は,改めて次の理由により,安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに関し,強く反対の意思を表明する。1.生活保護基準は,憲法25条が保護する「健康的で文化的な生活」を護るものでなければならず,不明確かつ恣意的な基準でないこと。
2.生活保護基準は,生活保護利用者・低所得世帯当事者の生活実態を踏まえた合理的な基礎資料に基づき,厚生労働大臣の裁量権の範囲も含め慎重に検討を行う必要があること。
3.生活保護基準は,最低賃金法による最低賃金引下げ目標,介護保険の保険料及び利用料,障害者自立支援法による利用料の減額基準,地方税の非課税基準,公立高校の授業料免除基準,就学援助の給付対象基準,公営住宅家賃減免基準,国民健康保険料の減免基準など,医療・福祉・教育・税制など他の社会保障政策と密接に連動し,生活保護を受給していない低所得者の生活水準を引き下げることにも繋がり,極めて慎重に検討を行う必要があること。以上のとおり,当連合会は,今後も被保護者を含む低所得の生活困窮者の権利を擁護し,積極的に支援する所存である。