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会長声明集
2020年(令和02年)07月10日
「自筆証書遺言書保管制度」の創設に伴う会長声明
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
声明の趣旨
当連合会は,「遺言者の遺志の実現及び相続に起因する紛争予防の観点」及び「長期相続登記未了問題,所有者不明土地問題,空き家問題等の社会的問題の解消の観点」から自筆証書遺言書保管制度はこれらに資する新たな制度であると位置づけ,相続実務の専門家として本制度の利用を必要とする市民と社会の期待に応えるべく,全国の司法書士会,司法書士と共に本制度に係る利用者支援,相談活動及び利用促進活動に取り組む。
声明の理由
本年7月10日,「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され,全国の遺言書保管所で自筆証書遺言の保管が開始される。
近年,民法(相続法)や相続税法の改正が行われ,相続への関心が高まり,遺言書を作成しようとする人が増加傾向にある。遺言書を作成しておくことで,相続人間の紛争を予防することができる等その有用性は広く知られているところ,家族関係の複雑化,法律上相続人がいないケースの増加,相続に起因して発生する可能性が高いと言われる空き家・所有者不明土地等問題,長期相続登記未了問題等を背景として,遺言制度の利用促進が注目されている。
この度始まる自筆証書遺言書保管制度では,自書により作成することができる自筆証書遺言を法務局が保管することにより,遺言書の紛失,改ざんを防止するだけでなく,事前に遺言者が相続人等のうちの1名を指定して届け出ていれば,遺言者の死亡後に法務局から指定された相続人等に遺言書が保管されている旨の通知がされる制度も予定されており,これにより作成した遺言書が発見されないという自筆証書遺言が抱えていた問題を解消する等の措置が講じられている。
一方,本制度は,その利用にあたり,例えば遺言書の保管の申請,遺言者の死亡後に相続手続に用いる遺言書情報証明書の請求等に必要とされる書類の様式や添付書類等が細かく定められており,自書した遺言書さえあれば直ちに保管が開始され,遺言者が死亡すれば,直ちに証明書が発行されるというものにはなっていない。したがって,この制度の利用にあたっては,法律専門家が適時適切に支援していくことが求められている。
司法書士は,全国に22,771名(令和2年7月1日現在)おり,市民に寄り添い,相続,登記,成年後見,裁判等の分野で法律専門家として活動をしている。当連合会は,自筆証書遺言書保管制度の創設にあたり,本制度の利用を希望する市民を支援し,制度の利点が十分に発揮されるよう取り組むことが法律専門家としての司法書士の使命であることをここに宣明し,社会の要請に応えていく所存である。