-
総会決議集
日本司法書士会連合会に(仮称)「司法書士法施行規則第31条業務検討委員会」を早急に設置する決議
【議案の趣旨】
日本司法書士会連合会は、司法書士法施行規則第31条の条文の解釈ならびに、同条がなぜ司法書士法施行規則に存在するのかを研究して、本条を根拠に司法書士の業務を拡充することを後押しすることが必要である。そこで、司法書士の業務を規制するものではなく、積極的に業務展開できるスキームを構築する観点から、司法書士法施行規則第31条に規定する業務について検討する委員会を、早急に日本司法書士会連合会内に設置すること。
以上のとおり決議する。
2013年(平成25年)06月21日
日本司法書士会連合会 第76回定時総会【提案の理由】
長引く日本経済の低迷を要因として司法書士業務も例外なく影響をうけており、司法書士の基幹たる登記業務は減少傾向にあります。全国の簡易裁判所民事通常訴訟事件数も平成21年658,227件を頭打ちにして年々減少の一途をたどり、多くの司法書士が業務の減少に苦慮しています。早急に業務権限の拡大が求められていますが、連合会執行部の提言する次期司法書士法改正大綱の実現には、まだ時間がかかります。
そこで司法書士法の改正を待たなくても直に実行可能な業務拡充として、司法書士法施行規則第31条に規定する財産管理業務(以下、「規則第31条業務」という)の積極的な研究による、研修と推進が考えられます。ここでいう財産管理業務とは、司法書士法施行規則第31条第1号(以下、「規則第31条」という)に「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務」と定められている業務であります。この業務は、他の法律により司法書士が行うことが禁止されていないため、慣習等により司法書士も行っている業務として「附帯業務」とも言われています。もっとも、規則第31条は司法書士法人の業務範囲を定めた規定ですが、同条は司法書士法第29条の「法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務」を規定した条文の構造から、もともと司法書士であれば行うことができるとされている業務ということになります。同様の規定は、弁護士法に「弁護士法人の業務及び会計帳簿等に関する規則」が定められており、この様な他人の事業の経営や他人の財産の管理若しくは処分を行う業務をすることができる旨を、法令で規定されている職業は、司法書士と弁護士のみとなります。
この規則第31条でいう管財人を法的な管財人だけに限定せず、私的契約に基づく管財人としての業務を司法書士が行えば市民の利益にも寄与できるのではないでしょうか。例えば相続が発生した場合、相続登記は司法書士の本来業務ですが、被相続人名義になっている預貯金や株券等の有価証券の解約、配分、書換えなどの手続きは、相続人が行うには煩雑で手間がかかります。また相続財産を預かって管理したり処分したりするには専門的な法律知識と高度な倫理観が求められます。司法書士は、近年成年後見制度により成年後見人等に就任して第三者の財産管理業務を実践している実績があり、その信頼性は広く国民に認知されているところです。現在、一部の司法書士の有志により財産管理協会が発足しています。
この規則第31条業務を研究して研修を行うことや推進することは、連合会が率先して行うことではないでしょうか。おりしも平成24年6月28日、29日に開催された第75回連合会定時総会では、神奈川会上杉代議員、東京会鈴木代議員の質疑に対して今川副会長、櫻井常任理事の回答が規則第31条業務に関して触れられています。
今般、連合会において条文の解釈の研究、同条がなぜ司法書士法施行規則に存在するのかを研究して、本条を根拠に司法書士の業務を拡充することを後押しすることが必要であり、司法書士の業務を規制するものではなく、積極的に業務展開できるスキームを構築する観点から、検討する委員会を早急に設置することを提案します。(経費と財源)
委員会運営の経費は、事業費の中の業務推進対策費をもって充てる。