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総会決議集
セクシュアルマイノリティの司法アクセスの改善に向けて具体的施策の実施に向けて検討する決議
【決議の趣旨】
日本司法書士会連合会は、セクシュアルマイノリティの司法アクセスの改善のために具体的施策の実施に向けて検討を開始する。
以上のとおり決議する。
2015年(平成27年)06月26日
日本司法書士会連合会 第78回定時総会【提案理由】
- 性自認とは、自分自身について、「どのような性別に属するか」という認識のことであり、性的指向とは、性愛が向かう方向のことである。
性自認及び性的指向の面で、社会の中で少数者に属する、いわゆるセクシュアルマイノリティ(LGBT、性的少数者)と呼ばれる人々が存在する。統計にもよるが、セクシュアルマイノリティ当事者は人口の3~10%の割合で存在する。 - セクシュアルマイノリティ当事者は、多数者である異性愛者を基準として作られた法や社会制度で構築された社会の中で生きざるを得ず、多くの困難を抱えている。
政府の作成した自殺総合対策大綱でも触れられているとおり、生きづらさを抱えたセクシュアルマイノリティ当事者の自殺リスクが高いことが知られている。
性自認や性的指向が少数者に属することになる原因は分かっていない。しかし、セクシュアルマイノリティであるというだけで多くの困難を抱えて生きていかざるを得ず、現代社会の大きな人権課題である。 - セクシュアルマイノリティ当事者は、社会の無理解や偏見を恐れ、様々な社会資源にアクセスができず、困難をより深化させてしまう。司法アクセスにおいても、これは当てはまる。セクシュアルマイノリティ当事者は多くの法律問題を抱えている。同性カップルがパートナーシップを保護するために作成する遺言や共同生活に関する契約書の作成、高齢者になった場合の任意後見人、セクシュアルマイノリティ当事者同士の民事紛争、セクシュアルマイノリティであることを理由とした企業からの差別的な対応や、非正規雇用に追い込まれがちであることに起因する貧困や多重債務など様々なものがある。多くの法律問題が発生しているにも関わらず、セクシュアルマイノリティ当事者は、自己の抱えている問題が法的な問題であるとは考えず、法律家に依頼をすることで解決ができるということを知らない現状や、法律家に依頼をしたくとも、依頼の際には自分自身がセクシュアルマイノリティであることを明かさざるを得ず、明かした場合に、理解を示されないことや、差別的な対応をされることを恐れ、依頼に踏み切れない現状があり、司法アクセスが大きく阻害されている。
- このような現状を変えるためには、司法書士がセクシュアルマイノリティやセクシュアルマイノリティの抱える法律問題についての研修を受けること、司法書士会に相談体制を構築すること、セクシュアルマイノリティには特有の法律問題があり、その問題を解決するために、司法書士はセクシュアルマイノリティについての研修を受けており、司法書士会には相談窓口があることを社会に対してアピールすることが必要である。その前提として、日本司法書士会連合会には、セクシュアルマイノリティについての研究や研修の実施、シンポジウムの開催、司法書士会に対してセクシュアルマイノリティについての情報の提供や相談体制の構築を促すことなどが求められる。
よって、議案の趣旨記載のとおりの総会決議を求める。
- 性自認とは、自分自身について、「どのような性別に属するか」という認識のことであり、性的指向とは、性愛が向かう方向のことである。