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総会決議集
貧困問題の改善が多重債務問題の抜本的解決に必要であるとの認識に立ち、貧困問題改善対策を積極的に推進する決議
日本司法書士会連合会は、多重債務問題解決に積極的に取り組む団体として、多重債務問題を抜本的に解決すべくその最大の要因たる貧困問題の改善対策を積極的に推進する。
以上のとおり決議する。
2008年(平成20年)06月20日
日本司法書士会連合会 第70回定時総会【議案提案理由】
- 平成18年12月13日参議院本会議において可決した「貸金業の規制等に関する法律の一部改正」により出資法の上限金利の引き下げ、みなし弁済規定の廃止等が決まった。
これを受けて、内閣府に設置された多重債務者対策本部が公表した「多重債務問題改善プログラム」(平成19年4月20日)においては「関係省庁が十分連携の上、国、自治体及び関係団体が一体となって実行」し、又「多重債務問題が深刻な社会問題であり、その解決が健全な社会の形成に極めて重要であることを国民に訴えていくよう努める」としている。 - その方策として相談窓口の整備・強化、セーフティネット貸付の提供、金融経済教育の強化、ヤミ金の撲滅等々を大きな柱として掲げている。そして、それらの施策に関して司法書士は大きな役割が期待されている。
- ところで、多重債務問題の入り口たる最初の借入原因の多くが生活費不足であることは多くの相談窓口の統計においても顕著な事実である。
- 2006年3月に国民生活センターが発表した「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」によれば初めて借入をした頃の年収は200万円未満が最も多く29.9%、続いて200万~300万円未満が27.9%と、年収300万円未満が約5割を超えている。
- 一方、国は多重債務問題の抜本的改善に対して金融庁や地方自治体を中心として相談窓口の充実等を図る施策を促進するが、セーフティネットの構築、とりわけ貧困問題については未だ不十分であると言わざるを得ない。
- 生活保護の受給を事実上打ち切られ「おにぎり食べたい」との言葉を残して餓死された方、たらい回しにされ役所の前で餓死された方等の報道は後を絶たず、規制緩和の名の下に労働者を商品とする市場を形成してしまった労働者派遣事業法の改正により、多くの不安定雇用労働者が明日の生活保障もない状態で低所得に苦しむ日々を過ごしている。
- そのような方々が多重債務に陥り相談に訪れ法的債務整理をしたところで、根本的解決にはいたらないことは周知の事実である。
- 我々司法書士は多重債務問題解決に積極的に取り組む法律家集団として、貧困に苦しむ一人一人の市民の声に耳を傾け、多重債務問題の抜本的解決を図るべく、貧困問題の改善対策を早急かつ積極的に推進していかなければならない。
よって、議案の趣旨記載のとおりの総会決議を求める。
以上
- 平成18年12月13日参議院本会議において可決した「貸金業の規制等に関する法律の一部改正」により出資法の上限金利の引き下げ、みなし弁済規定の廃止等が決まった。