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意見書等
2005年(平成17年)08月12日
法務省民事局商事課 御中
「債権譲渡登記令及び債権譲渡等規則の一部改正案」に対する意見書
日本司法書士会連合会
企業法務対策部1 債権譲渡登記令の一部改正
意見のある条文についてのみ、取り上げることとする。第9条(登記申請書の受付)
【意 見】8時30分から12時59分59秒までに到達した登記申請書は、当該登記申請書を受け取った日の14時に、14時以後に受付をすべき他の登記申請書に 先立ち受付を行い、13時以降に到達した登記申請書は、当該登記申請書を受け取った日後最初に執務を行う日に、同日に受付をすべき他の申請書に先立ち、そ の受付をしなければならないこととすべきである。
【理由】動産・債権譲渡登記の申請については、いわゆる出頭主義を採用していないので、 郵便または信書便による申請(以下、「郵送申請」という)が可能である(動産・債権譲渡登記令案(以下、「令案」という)第9条ただし書)。この郵送申請 がされた場合、登記官は、令案第9条ただし書により、登記申請書を受け取った日後最初に執務を行う日に、同日に受付をすべき他の登記申請書に先立ち、その 受付をしなければならないとされる。これは、郵便または信書便が法務局の総務課に届き、そこから他の課に分けられ、最終的に登記官の手元に届くという、実 際的見地から、やむを得ない措置として行われているものと思われる。
しかし、書留郵便であれば、日本郵政公社のホームページで、引受番号から調 べることで、配達時間を確認することが可能となっている。また、動産・債権譲渡登記では、動産譲渡登記ファイル又は債権譲渡登記ファイルに登記の時刻が記 録される(動産・債権譲渡登記規則案(以下、「規則案」という)第16条第1項第4号)。
このように、配達時刻及び登記時刻がかなり正確に把握 できることに比較すると、令案第9条ただし書のように、一日のうちの何時に法務局に登記申請書が配達されても、その受付が一律に翌日となるというのは、到 底容認できるものではない。民法第97条第1項に定める意思表示の到達主義に鑑みれば、先に到達した登記申請書から優先的に登記を実行していくことは、申 請人間の公平に反しないと思われる。法務局の総務課の職員の手数を考えても、せめて、法務局の一日の執務時間を半分に分け、例えば12時59分59秒まで に法務局に到達したものは、その後の一定の時刻に受け付けるものとし、13時以降に法務局に到達したものは、翌日に受け付けるというような処理の方が、公 平にかなうものと思われる。2 債権譲渡登記規則の一部改正
意見のある条文についてのみ、取り上げることとする。第9条第1項第5号
【意見】譲渡の目的である債権の発生年月日が数日に及ぶ場合及び譲渡の目的である債権が将来発生すべき債権である場合は、当該債権の始期及び終期を登記事項とすべきである。
【理 由】譲渡の目的である債権の発生年月日が数日に及ぶ場合はもちろん、譲渡の目的である債権が将来発生すべき債権である場合、始期と終期を記録すべきことは 平成10年法務省告示第295号のとおりであるが、最高裁平成11年1月29日判決及び最高裁平成14年10月10日判決で明らかにされたことを、動産・ 債権の譲渡に関する民法の特例等に関する法律第8条第2項第4号の委任に係る規則第9条第1項第5号にも、明確にしておくべきである。
その他
【意見】規則第一章に次の一条を加え、規則の別表に債権譲渡登記ファイル及び債権譲渡登記ファイルの記録事項の一覧を設けるべきである。(動産譲渡登記ファイル及び債権譲渡登記ファイルの記録事項)
第○条 動産譲渡登記ファイル及び債権譲渡登記ファイルは、別表第一及び第二の上欄に掲げる各ファイルに区分したファイルをもって構成する。
2 前項の各ファイルには、その区分に応じ、別表第一及び第二の下欄に掲げる事項を記録する。
3 各ファイルには備考欄を設け、申請又は嘱託により、必要に応じて記録することができるものとする。別表第一 動産譲渡登記ファイル
ファイル名 データ項目名 登記事項共通ファイル 登記の目的(令第7条第3項第1号・同条第2項 第1号)
申請人の代理人の氏名及び住所(令第7条第3項 第1号・同条第2項第4号)
譲渡人の数(令第7条第2項第3号・規則第12 条第1項第1号)
譲渡人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所 (法第7条第2項第1号)
譲渡人の本店又は主たる事務所が外国にあるとき は、日本における営業所又は事務所(法第7条第 2項第3号)
譲受人の数(令第7条第2項第3号・規則第12 条第1項第1号)
譲受人の氏名又は商号若しくは名称及び住所又は 本店若しくは主たる事務所(法第7条第2項第2号)
譲受人の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所(法第7条第 2項第3号)
登記原因及びその年月日(法第7条第2項第4号)
動産個数(令第7条第3項第3号・規則第12条 第1項第2号)
動産譲渡登記の存続期間(法第7条第2項第6号)
登記番号(法第7条第2項第7号)
登記の年月日(法第7条第2項第8号)
登記の時刻(規則第16条第1項第4号)譲渡人ファイル 譲渡人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所 (法第7条第2項第1号)
譲渡人の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所(法第7条第2項第3号)
※譲渡人が2人以上いる場合、2人目以降から調製する。譲受人ファイル 譲受人の氏名又は商号若しくは名称及び住所又は 本店若しくは主たる事務所(法第7条第2項第2号)
譲受人の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所(法第7条第2項第3号)
※譲受人が2人以上いる場合、2人目以降から調製する。
動産個別事項ファイル 動産通番(法第7条第2項第5号・規則第8条第2項)
譲渡に係る動産を動産の特質によって特定する場合
動産の種類(法第7条第2項第5号・規則第8条第1項第1号イ)
動産の形式名、記号、番号その他同種類の他のものと識別するために必要な特質(法第7条第2項第5号・規則第8条第1項第1号ロ)
譲渡に係る動産を動産の所在によって特定する場合
動産の種類(法第7条第2項第5号・規則第8条第1項第2号イ)
動産の保管場所の所在地(法第7条第2項第5号・規則第8条第1項第1号ロ)
動産の名称その他動産を特定するために有益な事項(規則第12条第2項)別表第二 債権譲渡登記ファイル
ファイル名 データ項目名 登記事項共通ファイル 登記の目的(令第7条第3項第1号・同条第2項第1号)
申請人の代理人の氏名及び住所(令第7条第3項第1号・同条第2項第4号)
譲渡人又は質権設定者の数(令第7条第2項第3号・規則第12条第1項第1号)
譲渡人又は質権設定者の商号又は名称及び本店又 は主たる事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第1号)
譲渡人又は質権設定者の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務 所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第3号)
譲受人又は質権者の数(令第7条第2項第3号・規則第12条第1項第1号)
譲受人又は質権者の氏名又は商号若しくは名称及び住所又は本店若しくは主たる事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第2号)
譲受人又は質権者の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第3号)
登記原因及びその年月日(法第8条第2項第2号)
債権個数(令第7条第3項第3号・規則第12条第1項第2号)
質権の被担保債権の額又は価格(法第14条第1項ただし書・同第8条第2項第2号)
債権譲渡登記の存続期間(法第8条第2項第5号)
登記番号(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第7号)
登記の年月日(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第8号)
登記の時刻(規則第16条第1項第4号)
備考譲渡人ファイル 譲渡人又は質権設定者の商号又は名称及び本店又は主たる事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第1号)
譲渡人又は質権設定者の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第3号)
※ 譲渡人又は質権設定者が2人以上いる場合、2人目以降から調製する。譲受人ファイル 譲受人又は質権者の氏名又は商号若しくは名称及び住所又は本店若しくは主たる事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第2号)
譲受人又は質権者の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所(法第8条第2項第1号・同第7条第2項第3号)
※ 譲受人又は質権者が2人以上いる場合、2人目以降から調製する。債権個別事項ファイル 債権通番(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第1号)
債務者の数(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第2号)
債務者の氏名又は商号若しくは名称及び住所又は本店若しくは主たる事務所(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第2号)
原債権者の数(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第2号)
原債権者の氏名又は商号若しくは名称及び住所又は本店若しくは主たる事務所(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第2号)
債権発生原因(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第3号)
債権の種類(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第4号)
債権発生年月日(始期)(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第5号)
債権発生年月日(終期)(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第5号)
発生時債権額(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第6号)
譲渡時債権額(法第8条第2項第4号・規則第9条第1項第6号)
弁済期その他債権を特定するために有益な事項(規則第12条第2項)【理 由】債権譲渡登記ファイル及び債権譲渡登記ファイルの記録事項は、法律、政令、規則にバラバラに規定され、その全体を把握することは容易ではない。そこ で、商業登記規則の別表に倣い、債権譲渡登記ファイル及び債権譲渡登記ファイルの記録事項の一覧を設ける必要があると考える。
また、申請人の側としては、令第7条第4条に基づく法務大臣指定の告示を見れば、申請磁気ディスクへの記録事項が分かるが、その記録事項の中で、重要なも のとそうでないものとがあるはずである。条件の「任意」か「必要」かは、単にその記載がなくても申請は受理されるという意味に過ぎず、各データの重要性と は関係ない。そこで、申請人が申請磁気ディスクの記録内容を容易に理解する必要性があるので、その一覧を設けるべきと考える。3 その他
【意見】登記に係る登録免許税性を撤廃し、手数料制を基調とする「登記費用等に関する法律」(仮称)を立法すべきである。
【理由】登記は、裁判の提起と同様に課税の対象とされるべきではない。
裁判においては、濫訴健訟を絶つことの対策として「民事訴訟費用等に関する法律」によって裁判の提起につき手数料を徴収しているが、登記についても、同様に、「登記費用等に関する法律」(仮称)を立法すべきである。
ただし、裁判制度とは異なって少なくとも「登記制度の維持管理に要する費用を合理的に負担する限度」の手数料制を導入し、現在の登記特別会計の見直しを含めて総合的な制度設計をすべきである。