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意見書等

2005年(平成17年)12月01日

金融庁総務企画局企画課信用制度参事官室 御中

金融庁総務企画局企画課信用制度参事官室あて意見書

日本司法書士会連合会
会長 中 村 邦 夫

意 見 書

 

 
意見の趣旨

 

現在、貸金業制度等に関する懇談会において貸金業制度を取り巻く諸問題についての検討が重ねられているところ、当会は、多重債務問題の法的救済を支援する立場から、以下のとおり意見を述べる。

 

1.出資法の上限金利の引き下げ
出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げること。
2.みなし弁済規定の撤廃
貸金業規制法43条のみなし弁済規定を撤廃すること。
3.出資法の特例金利の廃止
出資法附則に定める日賦貸金業者、電話担保金融の特例金利を廃止すること。

 

 

意見の理由

 

I.はじめに

本意見書は、「貸金業規制法43条の矛盾」「IT書面一括法を貸金業へ適用することへの反対意見」「出資法上限金利引き下げの必要性」の三点を論じる。
貸金業制度の全般を見直すためには、出資法と利息制限法という金利の二重構造の存在を無視することはできない。貸金業界も指摘のとおり、不当利得返還請求 の件数は急上昇している。これは、貸金業規制法43条所定の要件を具備しない貸金業者が、本来得ることのできない利息制限法超過利息を不当に取得している ことの現われである。貸金業規制法43条の存在そのものが、利息制限法違反を常態化させる原因にほかならない。よって本意見書では、冒頭で貸金業規制法 43条の矛盾を論じる。
次に、貸金業界からの要求が高まっているIT書面一括法の貸金業への適用につき、その危険性を説き、反対意見を論じる。
最後に、出資法上限金利引き下げの必要性につき、貸金業界が指摘する「(1) 金利規制を撤廃すべき」「(2) 金利を下げるとヤミ金融が増える」「(3) 金利を下げると中小の貸金業者が倒産する」という3つの主張について、様々なデータを検証しながらその矛盾を説き、一層の金利引き下げが必要であることを 論じる。

 

II.貸金業規制法43条の矛盾

 

1.利息制限法と判例法理
利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約において、同法で定める利率(元本が、10万円未満の場合年2割、10万円以上100万円未満の場 合年1割8分、100万円以上の場合年1割5分)により計算した金額を超えるときは、その超過部分につき無効としている。
債務者が利息制限法超過利息の支払いをした場合、利息制限法超過部分は元本に充当される。元本充当計算の結果、計算上、元本が完済となったとき、元本が存 在しないところに利息・損害金の発生の余地がなく、その後に支払われた金額は、債務が存在しないのに支払われたものにほかならないから不当利得として返還 請求が認められる(最大判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁、最大判昭和43年11月13日民集22巻12号2526頁)。

 

2.みなし弁済の矛盾
一方、貸金業規制法43条は、貸金業者が業として行なう金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として任意で支払った金額が、利息 制限法で定める利息額を超える場合において、一定の要件を満たす場合には有効な利息の債務の弁済とみなすとしている。
第1の矛盾は、貸金業規制法は第1条において、(1)貸金業者の登録制度を実施し、(2)貸金業者の事業に対し必要な規制をし、(3)貸金業者の組織する団体の適正な活動を促進することにより、貸金業者の業務の適正を確保し、もって資金需要者等の利益の保護を図るとともに国民経済の適正な運営に資することを目的としているが、利息制限法超過利息の取得を貸金業者に認めることは、資金需要者等の利益の保護にならないことは明らかであり、反対に貸金業者を保護するものとなっていることであり、貸金業規制法1条と43条は、明らかに矛盾している。
貸金業規制法が、その目的に反してなぜ貸金業規制法43条のみなし弁済規定を設けたかは、端的にいえば、貸金業者に業務規制等(目的規定の(1)(2) (3))を課す代償として、みなし弁済という「アメ」を貸金業者に与えたということであるが、利息制限法や積み重ねられた最高裁判例を否定するような利息 制限法超過利息の取得を貸金業者に認める必要性は、どこにも見出せない。
第2の矛盾は、貸金業規制法43条は、利息制限法上無効な利息が任意に弁済された場合に、これを有効な利息の債務の弁済とみなすとされており、本来無効であったものを事後的に有効なものとする点である。
まず確認しておかなければならないことは、金銭消費貸借の利息の契約時点においては無効な利息の契約であるということである。利息の契約時点においては、弁済が行なわれることはなく、任意の弁済はあり得ないので、利息制限法を超過する部分の利息の契約が無効であることは明らかである。
ところが、貸金業規制法17条においては、この無効な利息を基礎づける約定利率(以下単に「無効な利息」という)を記載することが定められ、貸金業規制法 17条書面の不交付や虚偽記載に対しては1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処されることが定められている。
そして、この無効な利息を記載した契約書面を交付することが、貸金業規制法43条の適用を受ける要件となっているのである。無効な利息を記載した契約書面を交付した場合にのみ、本来無効である利息制限法超過利息の取得を認めるという矛盾がここでも発生しているのである。

 

3.小括-早期撤廃を
貸金業規制法43条は、資金需要者の利益の保護に明らかに反するものであり、立法当初から様々な問題点が指摘されてきている。これによりグレーゾーンといわれる金利が存在しているが、上記のとおりの重大な矛盾を抱えていることから早期に撤廃するべきである。

 

III.IT書面一括法を貸金業へ適用することへの反対意見

近時、貸金業界からの要求が高まっている、貸金業規制法17条の契約書面及び同法18条の受取証書の交付を、電子的手段によって代替できるとする同法の改正については、以下の観点から反対する。

 

1.IT書面一括法
平成13年4月1日から施行された「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」(IT書面一括法)は、民間における 商取引に関する書面の交付や書面による手続を義務付けている関係法律50について、書面の交付等に代えて、顧客の承諾を得て、書面に記載すべき事項を情報 通信の技術を利用する方法(電子的手段)により提供することを認める旨の法改正を行った。しかし、貸金業規制法については、法改正の対象とならなかった。

 

2.改正対象から除外された理由
法律で書面の交付あるいは書面による手続を義務付けているもののうち、次に示す4つの類型の何れかに当てはまるものについては、改正対象から除外された。
ⅰ)公正証書を要求しているもの
ⅱ)取引が相対で行われるものなど電子取引が行われる可能性のないもの
ⅲ)国際条約に基づくもの
ⅳ)契約をめぐるトラブルが現に多発するなど書面の代替が困難なもの
貸金業規制法は、このうちのⅳ)にあたるとされ、その他計16の法律が除外された。平成12年11月18日衆議院商工委員会で審議された際、平沼通商産業 大臣(当時)の発言であるが、「本法律案の立案においては、十分な消費者保護措置を講じました。まず、契約をめぐるトラブルが現に多発している法律、例え ば、サラ金規制に関する貸金業規制法、商品先物取引に関する商品取引所法、訪問販売法におけるマルチ商法規制等については、そもそも本法律案にはなじまな い、ですから対象としないことにいたしました」とあるとおり、貸金業規制法43条の「みなし弁済」の適用について同法17条の契約書面及び同法18条の受 取証書をめぐる裁判が多発している現状を鑑みれば、ⅳ)に当たるのは明らかであり、そもそも、IT書面一括法案が目指す方向には合わないと見るべきであ る。

 

3.業界の要求
近時、貸金業界から、貸金業規制法17条の契約書面や同法18条の受取証書について、書面の交付を免除することを許すように、IT書面一括法の対象とすべきであるとの要求がなされている。
貸金業界は、貸金業制度の見直しに関連して、IT社会の即時性・利便性や消費者ニーズの対応などを理由に挙げて、あたかもIT書面一括法の対象に貸金業規制法を含めることは当然であるかのような動きが見られる。

 

4.危険性
貸金業界は、貸金業者だけが対象外とされているのは、かえって合理的な理由が見あたらないと言うが、貸金業規制法で交付を義務付けている17条書面及び 18条書面は、消費者保護のために設けられた極めて重要な書面であり、これらの書面を受け取る機会を法律上確保することが肝要である。最高裁平成16年2 月20日判決(民集58巻2号380頁,475頁)では本条書面の記載事項、債務者への書面交付に関しては極めて厳格に解することが示され、全国の裁判所 においても、貸金業規制法43条の「みなし弁済」の適用要件については厳格に解釈されている。その点を看過して、利便性を理由として、IT書面一括法の対 象とすべきであるとする議論は成立するものではない。また、金銭の貸し借りの場では、特に貸主と借主の地位に格差が大きいため、借主の電子的手段の事前承 諾についても正当に確保できるか疑問であり、IT化されることによって貸主と借主が非対面となった場合、更にトラブルが多くなるのは明らかである。

 

5.小括
IT書面一括法が制定された平成12年当時において、貸金業規制法がその対象から外された理由が、契約をめぐるトラブルが現に多発しているからであるとさ れているところ、当時から現在に至るまで貸金業界において、取引履歴の開示や契約等をめぐるトラブルが絶えない状況に何ら変化(改善)はなく、むしろ多く なった感がある。
貸金業界の主張は、貸金業規制法の目的である資金需要者保護のためでなく、同法43条の「みなし弁済」規定の要件を事実上緩和しようとするものであり、そ の目的は、利息制限法超過利息の保持である。よって当会は、貸金業規制法17条の契約書面及び同法18条の受取証書の交付を電子的手段により代替させるよ うな法改正を行うことに、強く反対するものである。

 

IV.出資法上限金利引き下げの必要性

 

 

IV-(1) 消費者信用市場では市場原理は機能しない
貸金業界は、論文「消費者信用市場における上限金利規制の影響~米国における先行研究のサーベイ」(早稲田大学・坂野友昭教授)を基に金利自由化論を唱え、上限金利規制を撤廃・緩和し、貸付金利の決定を市場原理に委ねるべきと主張する。
しかし、様々なデータを分析した結果、以下のとおり消費者信用市場では市場原理が機能しないことが実証された。

 

1.業者を選択する理由
資金需要者に対し「貸金業者を選択する理由」をアンケートした結果によると、上位は「無担保・無保証で融資を受けられる」「審査スピードが早い」「困った ときに借り入れができた」「自分の都合に合わせた返済ができる」等、利便性に注目が集まる(資料1)。別の調査でも「手続き(審査)が簡単」「必要なとき に即時に利用できる」「利用できるATM、CDがたくさんある」等、同様の結果が示されており(資料2)、いずれの調査でも「低金利」を選択理由に挙げる 資金需要者は少ない。
およそ生活者であれば、物を購入しサービスの提供を受けるにあたっては、「より安く」を常に最大の関心ごとのひとつとして考慮しているはずである。困窮を 強いられている多重債務者であればなおさらである。資金需要者が、最大の関心事のひとつであるはずの価格、すなわち「金利」で、借入先を選択しない理由 は、貸金業者の営業戦略を分析することで浮き彫りにされる。

 

2.貸金業者の戦略
貸金業者に対する「新規顧客獲得のための施策」に関するアンケート結果によると、「接客対応の向上」「販促方法の見直し」「販促内容の見直し」等、上位には利便性の向上が続く。借主の関心事であるはずの「金利の低下」は4位であった(資料3)。
さらに、興味深い資料がある。資料4は、各貸金業者のキャッチコピーを取りまとめたホームページであるが、これによると金利を売りにする貸金業者は僅少で あり、「お申し込みからお振込みまで最短30分で完了!」(プロミス)、「約10秒で審査結果をお知らせ!」(ほのぼのレイク)、「夜申し込んで翌日中に はお振込み!」(アイク)等、貸金業者が利便性の強調に躍起になっている事実が裏付けられる。さらに、各貸金業者のホームページに当たってみると、トップ ページに金利が謳われている会社は極めて少ない事実も判明する。
このような結果が生じる原因は、貸金業者が意図的に金利を競争の材料とすることを避けている点にあろう。他の市場において、価格低下が需要を喚起する重要 な要素であるのに、消費者信用市場だけがその例外であることを説得力もって説明した論は存在しない。しかし、銀行系貸金業者であるモビット、DCキャッ シュワンなどのホームページは、金利で他社との差別化を図ろうという趣旨が読み取れる構成となっている。
また、テレビCMを通じたイメージと認知度の向上は、資金需要者に対する「大手の会社で安心できる」という刷り込みに寄与した(資料1,2)。資金需要者 は、近くにあり、簡単に借りられ、よく知っている業者であれば、「安心して(「返済可能な金利である」という意味を含む)」借りられるとの誤解のもと、契 約締結に至るのである。
貸金業者が金利での競争を避ける理由は、それによる薄利化への懸念にほかならない。結局、債務者は、利便性に偏重する貸金業者の営業姿勢にまんまと乗せら れているのである。借入先を選択しようにも、どの会社から提供される情報も利便性に集中し、金利については僅かばかりの情報が与えられるにすぎない。すな わち債務者は、最大利益の追求という貸金業者の営業戦略のもと、契約締結の重要な要素である金利について充分な情報を知らされず、また知る機会を奪われ、 契約させられているのである。
まさに「借りる」のではなく「借りさせられる」現実が存在する。

 

3.貸金業者は有用か
「借りさせられた」債務者に対し、次に貸金業者は「借りさせ続ける」ことにエネルギーを注ぐ。枠の拡大、借換えの勧誘、他社借入金の一本化、完済者に対する執拗なまでの再借入れへの勧誘等がそれである。
高利貸しへの批判に対し、貸金業界はよく「短期・小口の貸出しは生産性に寄与しており、一定の社会的役割を果たしている」と存在意義を強調する。しかし、 大手サラ金に限定した場合でも契約期間は「3~5年」が最も多く、中小業者では「10年以上」が最多(資料5)。クレジット会社等を含めた貸金業者全体で は、やはり「10年以上」が最多(資料6)というデータが報告されている。
また、貸付残高が50万円を超える割合は、武富士で全体の67.4%、アコムで49.9%、プロミスで55.2%、アイフルで32.2%(無担保貸付に限 れば43.2%)と報告されており(資料7~14)、「短期・小口」との主張は実態から遠くかけ離れた方便にすぎないことが判明する。
さらに、「新規顧客の他社利用件数」が「0~2件」の割合を調査すると、最大手こそ全体の78.2%を占めるが、それ以外はすべて50%を下回っているこ とが判明する(資料15)。多重債務者の生活状況を観察すれば、3社目、4社目の借入金のほとんどは既往借入先への返済資金であることが容易に推測できる のであり、「生産性のある貸出し」という主張もまた実態と一致してはいない。
貸金業者の社会的有用論は、統計上、破綻を来たしていることが判明するのである。

 

4.借りてみて初めて分かる高金利
借金を完済し終えた債務者に対する「その会社を再利用するか?」とのアンケートがある。完済し終えたということは、契約条項が円満に履行されたことを意味 する。どんな契約であっても、契約を締結しこれを誠実に履行し終える過程の中で、契約両当事者間に相互の信頼関係が築かれていくことが自然であり、その信 頼関係が、将来の再利用への重要な要素となる。しかし、貸金業者と債務者との間には、このような信頼関係は必ずしも構築されていないと考えざるを得ない。
アンケート結果では、再利用を希望すると回答した者はわずか32.2%にすぎず、何と26.6%もの人が積極的に「いいえ」と回答しているのである(資料16)。完済者の実に4人に1人が再利用を希望しないという状況は、他の契約関係ではおよそ考え難いものである。
さらに注目すべきは、再利用を希望しない者の内の80.3%が、希望しない理由として「金利が高い」と回答している事実である(資料17)。多重債務者は決して金利に無関心ではないことが、明確に裏付けられた結果となっている。
この数字が意味することは、貸金業者の高金利が「借りてみて初めて分かる」システムになっているという事実である。すなわち債務者は、金利競争による収益 悪化を避けるため、利便性の強調とテレビCMによるイメージ・認知度の向上に躍起になる貸金業者によって、高金利であることを理解せずに借りさせられるの である。一旦借りさせられた債務者は、何年間にもわたり、金利低下の恩恵をほとんど享受しないまま返済を続けさせられる(資料18,19、新規顧客への平 均貸出金利と既存顧客へのそれでは、最大手こそ2.5%程の差があるが、それ以外はどれも1%程度にすぎない)。
返済に苦しむ借金地獄の中で、初めて高金利であることを知らしめられる実態は、「騙まし討ち」と表現しても過言ではない。

 

5.小括
貸金業界は「省力化等の経費削減により、これまでも貸付金利を下げる努力をしてきた」と主張するが、これは大手数社に限ってのことである。中小業者に関し て言及すれば、企業努力によるコストダウン等によって貸付金利が下がってきたのではない。中小の貸付金利の低下は、法改正による上限金利の段階的引き下げ が最大の原因なのである。中小業者は、どの時代も、企業努力による貸付金利の引き下げをせず、常に上限金利ぎりぎりでの貸付を続けているのであり、その姿 勢は変わっていない。
上限金利が引き下げられなければ、貸付金利も下がらない現実は、消費者信用市場に市場原理がはたらかないことの証左である。
ところで、自由競争市場では、需給バランスによって価格が決定される。市場原理が正当に機能するためには、需要者・供給者が共に合理的な判断能力を有して いることが不可欠であり、ことに消費者信用市場を含むBtoC(事業者対消費者)の市場では、弱者であるC(消費者)に対し十分な情報が提供されるための 環境整備が必要であることは論を待たない。この環境が整備されなければ、B(事業者)による恣意的価格決定が容易になるのである。
提供されていない情報を、消費者自身に収集させることは酷である。とすれば、環境整備のためには、B(事業者)の営業姿勢が問われるはずであるが、検証し た様々なデータは、消費者信用市場が「B(事業者)による情報提供」という課題を克服できていない現実を物語っていた。
貸金業者の営業姿勢が変わらない以上、消費者信用市場で市場原理は機能しないのである。

 

 

IV-(2) 金利規制の影響 ~ヤミ金融は増加するのか
貸金業界は、第3回貸金業制度等に関する懇談会における質疑応答において「上限金利を下げた結果ヤミ金融が増えた」と指摘する。しかし、上限金利引き下げがヤミ金融を増加させたことを裏付けるデータは存在せず、以下のとおり合理性を欠くものである。
(1)ヤミ金融自体は「トイチ」「トサン」などの呼称で、平成11年の出資法改正以前にも存在していた(資料20)。ヤミ金融の社会問題化と上限金利の引き下げとの因果関係は明らかになっていない。
(2)平成12年の出資法改正とヤミ金融被害の報道の急増が、偶々、時期を一にしていたため、貸金業界は両者を関連付けようとするが、ヤミ金融の多くが暴力団関係者によるものであることは、警察の捜査によって明らかとなっている(資料21)。
既存の登録業者が、出資法の上限金利引き下げに対応できずにヤミ金融へと転進したという事実は明らかになっていない。
(3)ヤミ金融業者の融資対象は、破産歴のある者、信用情報がブラックである者等、信用力の著しく悪化した資金需要者であり、彼らは出資法改正前の上限金利40.004%の時代においても、登録貸金業者の融資対象とはなっていない。
以上のとおり、上限金利の引き下げとヤミ金融の存在には、因果関係も合理的な裏付けも存在しないといわざるを得ない。ヤミ金融被害は、金利規制を緩和あるいは撤廃したとしても、解決される問題ではないのである。

 

 

IV-(3) 金利規制の影響 ~中小貸金業者は生き残ることが出来るのか
貸金業界は「金利を下げると中小の貸金業者が倒産する」と指摘し、出資法上限金利の引き下げに強い難色を示す。そこで本稿では、出資法の上限金利が現行の 29.2%から利息制限法の制限利率まで引き下げられた場合、中小貸金業者が市場から排除されるのか、それとも生き残ることが出来るのかについて検討す る。

 

1.中小貸金業者
平成15年3月末日現在の貸金業者総数は1万3260社で、そのうち、消費者向無担保貸金業者は6060社あり、これを大手(貸付残高500億円以上)の23社と大手以外(貸付残高500億円未満)の6037社に分けることができる(資料22)。
ここで議論の対象とする「中小貸金業者」を、出資法上限金利のぎりぎりで貸付を行っているために、上限金利引き下げの影響が最も大きいと思われる「大手以外の消費者向無担保貸金業者」(6037社)に限定する。

 

2.中小貸金業者の主張
最近10年間における貸金業登録業者数の推移を見ると、中小貸金業者の数は2割強減少しており(資料23)、事業の将来性についても、今後さらに「法定上 限金利の引き下げ」が行われれば「廃業を考えざるを得ない」と考える業者が多く(資料23)、上限金利を引き下げた場合、中小貸金業者の多くが経営危機に 陥る旨を主張する。

 

3.金利を自由化した場合の影響
そこでまず、金利規制を撤廃した場合、自由競争が促進される結果として実際の貸付金利が低くなるか否かについて検討する。
過去の金利規制下においても、債務者は、貸金業者間の競争による貸付金利の低下という恩恵を受けていない。大手貸金業者の貸付金利は、上限金利の引き下げ に伴って段階的に下がっただけに過ぎず、自由競争の成果ではない。その証拠に、ハイリスク者層への貸付金利は依然として高い。
また、金利規制を撤廃した韓国の例のように、ハイリスク者層の弱みに乗じる悪質業者の跋扈を許す結果となることは自明である。
貸金業界の主張する金利規制の撤廃・自由化には、合理的な理由がなく、社会に悪影響を及ぼすだけであって首肯できない。

 

4.中小貸金業者の企業努力
次に、出資法の上限金利を引き下げた場合、中小貸金業者は生き残ることが出来るのかについて検討する。
健全な社会の構築に寄与することは、企業の重要な社会的使命である。であるならば、貸金業者は、顧客である債務者の経済生活の破綻を可及的に防止する責務 を負っているのであり、貸倒れを前提とした経営方針を改めなければならない。すなわち「借りたお金を返すことができるシステム」の構築が求められる。その ためには、貸金業界自身が経営課題として掲げている(1)多重債務者の排除、(2)不良債権の削減、(3)新規顧客の獲得により「債権の良質化」を図り (資料24)、過剰貸付の禁止を遵守し、自己資本率を高め、貸倒れ費用その他の経費を削減するなどの企業努力が求められる。
このような企業努力により、中小貸金業者は、上限金利が引き下げられても生き残ることが出来る。

 

5.貸金業界の抱える問題
一方、貸金業者ごとの企業努力もさることながら、貸金業界全体の問題として、以下に指摘するような現状が克服できない限り、上限金利引き下げの副作用として、中小貸金業者が市場から排除されることはやむを得ないことである。
ⅰ)貸金業規制法43条が遵守されていない
利息制限法の唯一例外規定として、貸金業規制法43条による「みなし弁済」規定が定められている。同条の適用にあたっては厳格な法解釈が求められるところ (前掲・平成16年最高裁判決)、多くの貸金業者は、同条の要件を満たさず、かつ、満たしていないことを認識しながら、利息制限法を超過する利息を受領す るという違法行為を常態化させている。
貸金業界が指摘する不当利得返還請求が増加する原因は、法を遵守していない貸金業者の営業姿勢に原因があると考えられるのである。
ⅱ)「借金」は、社会問題の発端
貸金業界は、高利での貸付けに対する需要に応じることで、「生活の潤滑油」としての役割を果たしていると主張する。しかし、高利での貸付けは、結果的に破産者の増加、夜逃げ、自殺、失業、離婚、一家離散などの原因となっている(資料25,26)。
先に、健全な社会の構築に寄与することが企業の社会的使命と述べたが、貸金業者は、高利での貸付けを通じて債務者の生活を破綻・破壊させる要因を作っており、かえって不健全な社会の構築に加担する結果となっていると考えられるのである。
ⅲ)多重債務者は増加の一途
貸金業界は、消費者教育の充実、カウンセリング機能の充実、与信審査の一層の厳格化、信用情報の交流、悪質業者の排除など、多重債務問題への対策と消費者保護への取り組みを強化してきた旨を主張している。
しかし、その取り組みと効果が一致していないことは、多重債務者が増加の一途を辿っている事実から明らかであると思われる。(資料26)。

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