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意見書等
2008年(平成20年)07月07日
法務省民事局民事第二課 御中
「不動産登記規則の一部を改正する省令案」に関する意見
日本司法書士会連合会
会長 佐 藤 純 通日本司法書士会連合会は、平成20年6月6日に公示された「不動産登記規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集つき、下記のとおり意見を申し述べる。
記
1. 申請情報及びその添付情報の保存期間を現行の10年から30年に延長する改正について
【意見】
申請情報およびその添付情報の保存期間の延長については、平成17年の不動産登記法改正の当連合会の主張と同一の方向性にあり、かつ、法改正時の国会の付帯決議を実現するものであり、賛成する。[理由]
法務局における添付情報の保管制度の第一次的意義は、それらを閲覧調査可能なものとして置くことにより、後日に紛争等が発生したときの裁判上の証拠を保全する機能を持たせることにある。その意味で、保存期間が10年というのは、取得時効等の関係では短すぎるので、30年までに延長することは、制度趣旨に適うものであり、今次の改正を高く評価する。[関連意見]
(1) 添付情報の保管制度は、当連合会が法改正時に主張してきたように、個別具体的な各登記申請における実体関係や登記原因を証する情報を調査確認し、次なる取引時におけるいわゆる「権原調査」に資することが期待されているものである。一般公開される登記簿のみならず申請情報、添付情報等の公開制度が一体となり公示制度を補完する重要な機能を果たし、国民の権利保護に資するとともに取引の安全に寄与するものである。
しかしながら、現状の申請情報・添付情報閲覧制度の運用は、旧法時に比して厳格な手続きを要しており、取引の安全に寄与する制度としての活用には困難性を感じるところであり、現に利用率は多くはない。
したがって、保存期間を延長すると同時に、保存情報の閲覧制度の運用を、取引の安全に寄与する制度として充分に活用される制度とするべきである。
ただし、個人情報保護の観点から、何人にも無制限に認めることは、支障があるので、不動産取引決済の円滑な遂行ひいては国民の財産権の保護の観点から、登記申請を業とすることができる資格者代理人に対しては、手続上緩和された「職務上閲覧制度」を導入すべきである。(2) 現状においては、申請情報及び添付情報は紙媒体によるものが多く、保管期間が3倍に延長されることにより、保管される紙の量も3倍となる。その保管場所の確保及び後日の閲覧の際の検索を円滑に行うという観点から、紙媒体による情報をPDFファイル化またはマイクロフィルム化などにより電子化し、当該情報を保管することを可能とする法制度を制定すべきである。
2. 商業・法人登記事務の集中化により、商業・法人登記事務を取り扱わないこととなった登記所において、不動産登記を申請した場合に資格証明情報の省略を可能とするための改正について
【意見】
当面の改正点としては、賛成する。ただし、登記情報システムの導入の意義及び国民の負担軽減の観点から、「商業・法人登記事務の集中化により登記を取り扱わなくなった登記所に限定される」ものではなく、すべての登記所において同様の取り扱いをすべきである。[理由]
登記情報システムの導入の意義及び国民の負担軽減の観点から、登記官が登記情報交換システムを利用して当該法人の代表者の資格を調査し、添付情報を省略可能とすることは、電子政府導入の国民の負担軽減、利便性の向上に適うものとして評価できる。
ただし、「申請を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一である登記所に準ずるものとして法務大臣が指定する」とあるが、「商業・法人登記事務の集中化により登記を取り扱わなくなった登記所に限定される」ものではなく、すべての登記所において同様の取り扱いにすることによって、利用者の利便性は格段に向上し、さらに負担も軽減され、オンライン申請利用件数の増大も見込めると考える。
よって、改正後は、速やかに全国すべての登記所について、法務大臣の指定がなされ、添付情報の省略化を図るべきである。[関連意見]
登記官が調査に際して登記情報交換システムを利用することにより、利用者の利便性を図りその負担を軽減するという観点に立てば、資格証明情報の省略に止まることなく、例えば担保権の追加設定登記申請の際の添付情報である前登記証明書等についても同様の取り扱いを可能とし、電子化の利点を最大限に活用して添付情報の省略化を図り、もってオンライン登記申請の利用促進を加速するべきである。