日本司法書士会連合会について 情報公開

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意見書等

2003年(平成15年)09月01日

司法制度改革推進本部事務局 御中

総合的なADRの制度基盤の整備について(意見)

日本司法書士会連合会

 

 

 

はじめに

 

 

日本司法書士会連合会(以下、「連合会」という。)は,司法制度改革推進本部ADR検討会における「裁判手続きと並び国民に選択される魅力ある紛争解決手段としてのADR手続きの基盤整備」に対する熱意あふれる検討作業と議論に深甚の敬意を表します。
そして,弁護士制度とともに司法の一翼を担う司法書士制度を基盤として,これからのADR制度の健全な発展のために貢献することを自覚し,意見を申し上げます。

 

 

I 司法書士会意見の対象について

 

 

今般の標記に関する意見募集に対し,連合会としては、第一「検討の対象とするADRの範囲」・第二「基本的事項」・第三「一般的事項」・第四「調停手続法 的事項」及び第六「各事項の適用対象」の論点については,意見を申し述べる対象とするまでもなく,検討会の指向する広く国民に利用されやすい制度設計の基 本を見失うことなく実現されるものと判断した。但し,論点4・6・9・16・17の五つの論点においては,次に述べる点に若干の課題があるものと考える。
第五「特例的事項」については,ADR手続きが司法制度の一環として健全に発展し,国民に信頼され,活用されるために必要と考えられる制度が構築されることを期待して,以下のとおりの意見を申し上げる。

 

 

II 個別的検討結果に基づく意見について

 

 

第二 基本的事項

 

 

1.ADRに関する基本理念【論点4】

 

 

ADRの健全な発展を図るための諸方策を講じる上で,利用者による多様な選択の機会を確保するために,地域性を十分に考慮し,例えば司法過疎地における巡回型ADR等,各地域の実情に応じた方策を可能とするべきである。

 

 

2.国の責務等【論点6】

 

 

国が一部のADR機関,手続・手法や解決基準のみに対し,財政上の措置等の形で直接的支援を行うことについて,これを基本的施策とすることには消極的意見 が示されている。しかし,適切な手続運営に関する研修実施等,各ADR機関に共通して必要な最小限度の制度整備に関しては,限定的な補助金の交付が検討さ れるべきではないかと考える。この点について更に検討をすべきである。

 

 

5.国民の役割【論点9】

 

 

ADRが社会に根付き活用されるためには,利用者である国民がADR等の自主的紛争解決手段の重要性を認識する必要がある。そのための方策として,初等中 等教育における「法教育」の充実が極めて重要である。このことは別の視点から司法制度改革における検討課題と捉えられており,効果を上げるためにはできる 限り低年齢から司法との関わりを認識する教育の機会が多く与えられることが望まれる。
ADRの自立的発展のために「国民に…(中略)…重要性を認識することを求める(後略)…。」との役割の論点に示された説明は抽象的であり,これからの検討の方向性が見えない。
よって,先に述べた法教育の重要性に鑑み,国民の役割は論点に示したものとしつつも,具体的な手段として初等中等教育において法教育を充実し,その役割において国や地方公共団体が担うべき責務を明示すべきである。

 

 

第四 調停手続法的事項

 

 

1.調整型手続から裁断型手続への移行に関する手続ルール

 

 

(1)調整型手続の過程で得られた情報の利用制限【論点16】
標記情報の利用については,制限を設けるべきである。
調整型手続は当事者の合意がもっとも尊重されるべきものであり,そこで利用された情報が真実であるか否かは必ずしも重要ではない。むしろ合意を得るために は,事実が脚色されることがあり得るし,又自己に不利な情報であっても躊躇なく呈示できる環境を整えることが重要である。従って,調整型手続から裁断型手 続に移行した際は,従前の情報の利用が制限されるべきである。但し,裁断的手続においては,当事者自治の範囲内として,本人が同意する限りにおいて,その 者の呈示した情報を利用できるとすることは賛成する。なお,具体的な情報等の範囲については限定すべきでない。

 

 

(2)調整型手続の主宰者を仲裁人に選任することの制限【論点17】
論点16と同様の観点から,制限するルールを設けるべきである。つまり,調整型手続の主宰者は玉石混淆の情報をもとに調整型手続を進行していたのであり, 同じ紛争に関する仲裁人となることは予断を持って手続に関与するおそれがあると言わなければならない。この「おそれ」を了解する限りにおいては,制限が適 用されないとすることも当事者自治の範囲内である。

 

 

第五 特例的事項

 

 

まず,特 例的事項を個別に検討する前に,ADRにおける法的効果の付与は,司法制度改革審議会意見に基づく検討によるものであるが,法的効果の付与を進めること が,ADRの基本理念とされる主体性の尊重・多様性の重視を損なうおそれがあることに気づかなければならない。
論点に示されたものは,一律に法的効果を付与するものではなく,ADR機関の選択に依るものとは言え,特例的事項の適用に当たっては,ADRの存在価値に関わるきわめて重要な問題を含むとの認識を有し,慎重に取り扱われることを望みたい。

 

 

1.ADRを利用した紛争解決における時効の中断

 

 

(1)基本的な考え方【論点19】
時効完成の懸念により,当事者による多様な手続選択の可能性が阻害されることとなり,また,時効制度の本来の趣旨からしても,ADR利用による時効中断の特例を設けるべきである。

 

 

(2)考えられる時効の中断に関する特例【論点20】
特例の仕組みについては,時効中断の濫用防止や,当事者による予測可能性の保護のために,一定の適格性を有するADRを対象とすることが求められる。(適格性の確認方法については論点35において後述する。)

 

 

2.ADRにおける和解に対する執行力の付与【論点21】

 

 

ADR和解文書に基づく執行の特例については論点に示された仕組みに賛同するものであるが,強制力を伴う作用であるため,執行力の付与については,上述の 時効中断効の対象となるADRの適格要件をさらに厳格化し,一定の法的資質・能力を有するADRに限って認めることとするべきである。

 

 

3.ADRを利用した場合の調停前置主義の不適用

 

 

(1)基本的考え方【論点22】
ADRを利用した場合は,調停前置主義を適用しないこととする特例規定を設けるべきである。
現行裁判制度において,調停前置とされる事案であっても,本案裁判所の裁量により調停に付すことなく終局判決に至る場合があり,また,調停前置を必要とし ない事案であっても裁判所の調停に付すことが適当との個別判断が行われる場合がある。このような裁判所による運用上の対応により,ADR手続を経た案件に ついては,一律に調停前置主義の例外としても不利益が生じることはない。

 

 

(2)考えられる調停前置主義に関する特例【論点23】
ADR手続を経た案件については,すべて一律に調停前置主義の例外とし,その範囲についても限定の必要はない。ここにおいては,当事者立証方式を採用し,ADR後の訴訟手続において特例が適用されることを示すものとする。

 

 

4.ADRの手続開始による訴訟手続の中止

 

 

(1)基本的な考え方【論点24】
一定の場合には,ADRの手続開始による訴訟手続の中止を認めるべきである。

 

 

(2)考えられる訴訟手続の中止に関する特例【論点25】
訴訟手続の中止を認める要件としては,裁判所の個別判断がされることが十分に期待できることから,中止について当事者双方の合意を得た上で,裁判所の自由裁量により中止決定がなされることで足りるとすべきである。よって,ADRの適格性に関する要件は不要である。

 

 

5.裁判所によるADRを利用した和解交渉の勧奨等【論点26】【論点27】

 

 

裁判所による勧奨については,上記の訴訟手続の中止に関する特例において,裁判所の自由裁量による決定が行われることと併せ,ADRとの手続的連携を図る観点から,明確化することに賛同する。
また,論点27に示された「ADRの審理のための証拠調べ等」「ADRによる争点・証拠整理等の結果の訴訟手続における活用」については,何れもADRに 共通の制度として設ける必要はないとの意見に賛同する。両者の制度化によりADR機関が相当程度拘束され,負担を強いられることとなり,本来のADRが実 現されずに国民が利用しにくいADRとなるおそれがある。

 

 

6.民事法律扶助の対象化等【論点28】

 

 

紛争解決の手段として,裁判と並んでADR手続が選択されうるか否かを判断するにあたり,費用の問題は避けて通れない。そこにおいては,ADRの利用手続費用や手続代理人費用の負担が予想される。
そこで,これらの費用について法律扶助が適用されるとしても,裁判手続との比較において相当と認められる範囲に限定されることはやむを得ないが,法律扶助 の対象そのものから完全に除外されるべきではなく,今後更に適用の範囲及びADR機関の適格性要件等を検討すべきである。

 

 

7.専門家の活用

 

 

(1)ADR主宰業務に関する弁護士法第72条の特例【論点29】【論点30】
【論点31】

ADR主宰業務においては,「紛争解決に関する専門的知見」を有していることが重要であり,「紛争分野に関する専門的知見」については,活用が期待される 専門的知見を有する専門家の選択が各紛争分野ごとに適切に行われることが必要である。よって,弁護士法第72条の適用に関する特例を設けるべきである。
と ころで,司法書士法は一定の要件のもとに司法書士が法律事務を取り扱うことを可能としている。このことから,「法的知識の不十分さが補完されること」とし て弁護士の関与・助言を例示している点については,ADRの地域性も考慮に入れたADR主宰業務に対する法的関与・助言の担い手を弁護士に限定することな く,「弁護士・司法書士」とすべきである。
また,論点31の趣旨に賛同するものであるが,その方策として一定の不適格者に関する対応については,各職能団体の有する自治能力に委ねるべきである。よって,このような仕組みを設けることについては反対である。

 

 

(2)相談業務に関する弁護士法第72条の特例【論点32】
一定の範囲内における相談業務を認めるに際しては,専門家の有する専門的知見の範囲を明確にした上で認めるべきである。

 

 

(3)ADR代理業務に関する弁護士法第72条の特例【論点33】【論点34】
  専門的知見の活用は必ずしも代理人として求められるものではなく,むしろ鑑定人・補佐人・参考人等としての活用が適切な場合が多い。専門家の役割分担と区 別して検討が行われるべきである。特に論点34の代理受任していない場合の相対交渉については慎重な検討を行い,法律分野についての高度の専門能力を有す るものと評価できる専門職種に限定すべきである。

 

 

8.特例的事項の適用におけるADRの適格性の確認方法

 

 

(1)事前確認方式に関する基本的な考え方と仕組み【論点35】
ADRに関する基本理念が,主体性の尊重・多様性の重視・信頼性の確保の3点を旨とすべきであるとして検討が進められていることから,信頼性の確保の観 点において一定の手続・一定の効果を付与する際は,一定の適格性が求められることも考えられる。その場合には,確認方法のひとつとして事前確認方式を採用 することについても,利用者である国民にとって明確な選択の基準となりうることから,これを認めるべきである。ただし,論点の説明において仕組みの検討は 十分でないとされており,今後の検討結果については,関係団体等に対する意見照会の実施を期待するが,少なくとも「確認基準の明確化とその公開」を仕組み として付加することを求める。

 

 

(2)各法的効果等への適用【論点36】~【論点40】
論点19から論点34までの間で個別に述べたとおりである。つまり,認められる法的効果の影響度によって,確認の程度も変わってくることは当然であり,事 前確認方式だけでなく当事者立証方式の併用も含めて適格性の確認方法が確立されることにより,論点36以降に示された考え方に基づき,法的効果ごとに手続 の軽重に応じた適用を可能とする考え方に賛同する。

 

以上

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