会長声明集
父母の離婚後等の子の養育に関する「民法等の一部を改正する法律」の施行にあたって(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳
令和8年4月1日、父母の離婚後等の子の養育に関する規律を含む「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)(以下「本改正法」という。)が施行された。今般の改正は、父母の離婚が子に与える影響や子の養育の在り方の多様化、養育費や親子交流の取決率及び履行率が低調である現状を踏まえ、離婚後も父母双方が適切な形で子を養育する責任を果たすことが子の利益の確保にとって重要であるとの考えのもと、親権、養育費及び親子交流等に関する規律を見直したものである。
1.本改正法の周知について
人口動態調査によれば、令和6年の離婚件数は18万5904組にのぼり、親が離婚した未成年の子の数は16万4428人とされている。親権や離婚に関する制度は多くの親子に影響を及ぼし、その運用は子の利益や将来に直結する。そのため、親権や離婚といった本改正法の内容について市民への十分な周知を図り、正確な理解を広めていくことが重要である。
2.当事者の合意の真意性について
全離婚件数の約9割を占める協議離婚においては、裁判所等の第三者が介在せず、離婚届のみで成立するため、当事者が本改正法を正しく理解し、真意に基づく合意を形成することが不可欠である。
当連合会は、合意の真意性を確保する観点から、司法書士会調停センターを含む裁判外紛争解決手続であるADRの利活用の促進に取り組むとともに、離婚届のチェック欄の設置に留まらず、親権の定めに関する第三者による確認制度の創設等の制度整備について引き続き提言していく。
3.親権等について
本改正法により新設された離婚後の共同親権の選択は、父母双方が真摯に離婚後の子の養育について協議し、離婚後も父母の信頼関係のもとで子の養育に誠実に取り組むことを前提としている。しかしながら、現実には父母の関係性は多様であり、DVや虐待により親子の心身の安全が脅かされる場合、力関係の不均衡や圧力により真意に基づかない合意を余儀なくされる場合、DV等はなくとも父母の協力関係の構築が困難な場合、そもそも子の養育に無関心な場合等、様々な困難を伴うことが多い。この点、子の安全安心な家庭環境の確保という観点から、DV等のおそれがある場合やその他の事情により父母の共同親権行使が困難な場合には必ず単独親権とするとの本改正法の厳格な運用が必要である。本改正法は親の権利利益の確保のためではなく、子の最善の利益を確保するための制度である。共同親権にせよ、単独親権にせよ、子が自分らしく健やかに成長していくため、本改正法の適切な運用が求められる。
父母双方が親権者である場合の親権行使方法の規律が明確化され、共同親権であっても、監護教育に関する日常行為や子の利益のため急迫の事情があるときは親権の単独行使が可能とされた。具体的にどのような行為が該当するか等の判断については、本改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議において作成されたQ&A形式の解説資料に公開されているが、実際の運用はこれからであり、実務現場で判断に悩む事例も発生することが想定される。子の意向や意見を尊重したうえで、子の最善の利益を確保する判断が集積されることを望む。
4.養育費について
養育費の履行確保策として期待されるのが、取決めまでの暫定的、かつ、補充的な法定(暫定)養育費の創設、一般先取特権の付与、ワンストップ給与債権執行であり、市民の正確な理解と確実な実施を図る必要がある。裁判書類作成関係業務を担う司法書士は、各種調停申立書、民事執行申立書、離婚協議書等の作成業務を通じ、適切な養育費の履行確保に寄与していく。
5.子どもの意見表明権について
子どもの意見表明権の確保は、本改正法の目的を実質的に実現するために重要な課題である。当連合会は、子どもが誰でも声をあげることができ、尊厳ある一人の人間として子どもに向き合う社会を実現するため、子どもアドボカシーへの取組みを含め、今後も研究を進めていく。
当連合会は、これまでも本改正法に関連して意見を表明する等の取組みを進めてきたところであるが、父母の離婚等による家庭環境の変化に直面する子が不利益を受けることなく心身の健全な発達を図ることができるよう、当事者を含む社会全般の本改正法への理解を深め、子の利益を最優先にした手続選択と適切な運用を推進するための支援を行っていく。また、司法書士による相談や業務の取組み促進策を講じることで個別事件の解決を図るとともに、子どもの権利擁護の観点から必要な制度改善について積極的に提言していく所存である。
(本改正法に関連した当連合会の過去の意見)
家族法制の見直しに関する中間試案に対する意見|意見書等|日本司法書士会連合会
母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針(案)に関する意見|意見書等|日本司法書士会連合会
「民法第三百八条の二の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令案」に関する意見|意見書等|日本司法書士会連合会