メニュー

会長声明集

関連ページ:
2025年(令和7年)06月06日

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の成立にあたって(会長声明)

日本司法書士会連合会

会長 小澤 吉徳

令和7年5月30日、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律が成立した。

本法律は、譲渡担保及び所有権留保の契約の成立から権利の実行に至るまでの法的構成の明文化が行われたのみならず、いわゆる「占有改定劣後ルール」の導入に代表される担保の優先関係の見直し、競合担保登記目録制度の導入や所有権留保登記の新設をはじめとする登記制度の見直し及び倒産手続における取扱いの見直しを含み、その内容は多岐にわたる。

本法律は、動産・債権を利用した与信制度の進展に資するものであり、社会における取引の透明性や効率性を向上させるための法的枠組みとして積極的な活用が期待されている。また、個人保証や不動産担保に過度に依存してきたこれまでの与信からの脱却を目指す動きとしても注目に値する。

 

他方、衆参両院の法案審議では、一般債権者保護の観点から倒産局面において担保権が制約される場面の規律が新設された点につき、その周知広報や労働者の有する賃金債権を念頭においた保護・支援の重要性が指摘されたほか、動産・債権譲渡登記の需要が増大することから、一層の動産・債権譲渡登記手続の円滑化や利便性向上を目指す必要がある旨の懸念が示された。司法書士は、動産・債権譲渡登記手続の担い手であるところ、これらの懸念は、当連合会及び司法書士制度への強い期待が示されたと同時に、当連合会としては、より一層、動産・債権譲渡登記に係る取組を充実させる必要があると受け止めている。

なお、当連合会では、本法律の立法過程においてそれらの検討開始の当初から特に対抗要件の領域を中心に改正案の内容を精査するとともに、国民の権利擁護及び取引の円滑化の両視点を踏まえつつ時機に応じて法制審議会担保法制部会に対して意見を述べる等の活動を展開し、積極的に関与を続けてきたところである。

 

本法律の成立にあたり、当連合会は、全国の司法書士会、司法書士と一丸となって関係各所との協力体制を構築しつつ、動産・債権を担保とする新たな与信制度の発展向上に取り組む所存である。