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会長声明集
2022年(令和04年)03月11日
東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故から11年~被災地の課題に目を向け、復興へのさらなる歩みを支援する~(会長談話)
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳
東日本大震災から丸11年となりました。巨大地震と大津波、それに続いた東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下「原発事故」という。)により、多くの人々の命、平穏な暮らし、そして生業が奪われ、未だ多くの被災者がふるさとに戻ることができない状況が続いています(福島県民の避難者は33,365名、うち福島県外への避難者は26,692名。令和4年3月福島県災害対策本部公表値)。
あらためて、この震災で犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、避難生活を送らざるを得ない方々に心よりお見舞いを申しあげます。
甚大な被害のあった東北の被災地に目を向けると、津波被害の沿岸部では、被災地域住民の移転先の宅地整備や市街地のインフラ整備は防災集団移転促進事業により進んだものの、移転元地の多くは利用計画が立てられないでいます。国は、被災自治体に負担がないように復興交付金を使った津波復興拠点整備事業により移転元地の整備を促してきましたが、その事業も震災から10年が経過した2021年3月で終了しました。移転元地の活用には民間企業の進出への期待も大きいものの、今次の新型コロナウイルス感染拡大の影響でそれも頓挫している状況となっています。
また、いわゆる震災孤児の多くが今年成人を迎えることとなりますが、十分な心のケアをほどこされないままでいる中、これからの生活に大きな不安を抱かざるをえません。これは、不登校の問題や若者の自死の増加にも現れています。
さらには、原発事故によりたまり続けている放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋に放出するという政府の基本方針が示されたことにより、今後さらなる風評被害を生み出すことへの懸念も広がっています。この原発事故により避難区域が設定された福島県の12市町村全てで避難指示の解除が進む一方、帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域から外れた地域の解除は、見通せないでいます。今も原発事故による長期にわたる避難生活の影響による震災関連死者数が増加しているという現実もあります。令和4年3月4日には、原発事故の損害賠償を巡る集団訴訟のうち、3件の訴訟において、最高裁判所が東京電力に関する上告を退け、国の基準である中間指針を上回る賠償を命じた判決が初めて確定しました。引き続き原発事故被害者が救済されることを求めていきます。
当連合会では、これまで被災地の司法書士会と連携をしながら、国が進めてきた被災地復興のための用地取得加速化事業から見えてきた所有者不明土地や相続登記未了問題に取り組んでまいりました。これは、今次の所有者不明土地関連法の制定という成果につながっております。震災孤児の支援では、未成年後見人として子どもたちの成長とケアを継続し、原発事故による賠償問題には、原子力損害賠償紛争解決センターへの和解仲介申立手続の支援にも取り組んでいます。原発事故による福島県外避難者に対しては、全国各地の避難者支援団体と連携をして、多様化している避難者の問題解決の支援を行っています。
震災と原発事故から11年という長い年月を経た今も山積する課題解決には、引き続き被災地及び被災者に寄り添い続ける司法書士及び司法書士会と協力をして本来目指すべき「人間の復興」のためにも関係機関及び団体との連携をさらに強化して取り組み、被災者の生活再建を後押しする伴走型支援を続けていきます。
司法書士制度は、今年8月に150周年という歴史を刻むこととなりますが、ここにあらためて市民のための法律家としての司法書士の使命を胸に、被災地及び被災者の復興のために力を尽くし、そして、この取組を通じて学び培った体験と知見を今後の災害対応への糧として一人一人の司法書士が備え持てるように努めていくことをここに宣明します。