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会長声明集
2019年(平成31年)04月16日
熊本震災から三年に寄せる(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
熊本県を中心に九州各県に被害をもたらした熊本地震から3年が経過しました。改めて,震災の犠牲となった方々に対して哀悼の意を表するとともに,被災された全ての方に心からお見舞いを申しあげます。
日本司法書士会連合会(以下「当連合会」という。)は,熊本県司法書士会とともに,震災後直ちに災害対策実施本部を設置し,県下各地の被災状況を調査のうえ,被災者の実情に即した支援を目指し,阿蘇郡西原村における当連合会の災害復興支援事務所(「風の里司法書士相談センター」平成28年8月1日設置)の設置・運営,手続費用を無料とする震災調停の実施(平成30年度までの申立件数は20件)及び応急仮設住宅における巡回訪問相談等の活動を継続してきました。司法書士会が主催,又は地元自治体と共催して行った無料相談会では,平成30年度までに累計4,920件の相談が寄せられています。
平成28年7月から継続して行っている応急仮設住宅への巡回訪問相談については,平成30年度も36回実施しました。仮設住宅から転居する世帯は一定数見受けられますが,今なお仮設住宅からの転居先が見つからない世帯も多く存在します。その背景には,住宅取得のための資金問題,土地の利用制限の問題,相続登記未了問題などがあると思われます。
熊本県では,そのような被災者の住宅再建・住宅確保手段の一つとして,災害公営住宅の建設が始まっており,平成31年3月29日時点で496戸が工事を完了しています。災害公営住宅の建設が,転居先の見つからない被災者の支援につながるものである一方,入居要件や建設の進捗に関する情報が被災者に十分に伝わっておらず,不満や不安を抱えている被災者の声も多く届いています。
みなし仮設住宅については,昨年度に入居期限を迎えた世帯のうち,約6割の世帯に期限の延長が認められたのに対し,本年度は熊本県が延長要件を見直したことにより,4月から5月までに入居期限を迎える世帯のうち,約2割の世帯にのみ期限の延長が認められ,多くの世帯が転居先を探す必要に迫られています。今後,みなし仮設住宅の入居期限が到来することにより顕在化する問題として,退去時のトラブルが考えられます。例えば,震災前まで戸建て住宅で生活していた方は,賃貸物件の利用に不慣れであることから,原状回復に関する問題や継続して賃貸借する場合の契約に関する問題等です。
熊本県司法書士会では,これらの問題に関しても司法書士が市民の方々のサポート役となれるよう,初回相談無料の相談窓口として,平成31年1月15日に熊本県司法書士会賃貸トラブル解決支援センターを設置しており,各自治体・関係諸団体との連携を図っています。
当連合会では,今後も自治体などの関係機関と協力して,無料の常設相談や巡回訪問相談を継続し,被災された方々の声に耳を傾け,寄り添い,その一人ひとりの目の前の問題を解決するための支援活動を継続していきます。