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総会決議集
憲法第25条の生存権保障を実現するため、生活保護をはじめとする社会保障制度利用の支援及び同制度の整備・充実を求める活動に積極的に取り組む決議
【議案の趣旨】
日本司法書士会連合会は、市民に寄り添う「くらしの法律家」として、市民の命と生活を支えるため、現在の日本社会が直面している貧困問題に真正面から向き合い、経済的困窮者支援活動を更に推進することを決意し、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を求めて、下記の事項に積極的に取り組むことをここに決議する。
記
- すべての人の健康で文化的な生活を保障するため、貧困の実態を明らかにし、生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護をはじめとする社会保障制度の整備・充実を求めるため、積極的に国等に対する提言助言を行うこと。
- 生活保護をはじめとする社会保障制度を必要とする人が当たり前に、そして安心して利用できるよう、福祉事務所の窓口規制等の違法な運用を是正するために、全国各地における相談体制の構築を図ること。
- 生活保護制度や社会保障制度全体のあり方が冷静に議論され、経済的困窮者が社会保障制度を利用することについて、謂われなき差別・偏見により人権の侵害を受けない様に社会に対する啓発活動を行うこと。
- 上記活動を真に意味のあるものにするために、貧困問題に取り組む関係諸団体との連携・協働を積極的に行うこと。
2013年(平成25年)06月21日
日本司法書士会連合会 第76回定時総会【提案理由】
- 現行生活保護法が制定された1950年以来前例のない大幅な生活保護基準の引き下げが、本年8月から実施される。さらに、多くの問題点の指摘があるにもかかわらず充分な議論がなされることなく、生活保護法の一部を改正する法律及び生活困窮者自立支援法が今国会にて可決、成立されようとしている。
子ども貧困対策推進法、社会保障制度改革国民会議も含め、同時進行的に、わが国の今後の社会保障の方向性を左右する非常に大きな議論が進められている。 - そもそも、生活困窮にいたる要因は、雇用状況や労働環境の悪化、家族からの暴力や家族関係の断絶、さらには社会保障の不備など、社会的かつ複合的であり、そのような市民を支えていくのは「自助努力」や「家族の扶養」などといった、あいまいで不透明なものではなく、公的な、確かなセーフティネットとしての社会保障制度である。
現在日本における、生活保護利用者は過去最多の約216万人に上るものの、受給資格がある世帯のうち、実際に受給できている世帯の割合を示す「捕捉率」は2~3割であり、これは先進国中で異常に低い状況である。
このような状況であるにもかかわらず、社会保障制度を利用することに新たな障壁を設定し、個人や家族にその責任を転嫁してしまうことは、社会全体が自らのその責任を放棄することにつながる。 - 生活保護バッシングにみられるように、自助や共助のみを過度に推し進めるのではなく、貧困の実態に即し、一人ひとりの「いのち」に目を向けた、「持続可能な社会」に向けた、社会保障制度の構築を目指さなければならない。
- 我々司法書士は、全国にあまねく存在し、日常生活から生じる法的なトラブルの解決とその予防のため、国民の信頼を得ながら現場において活動してきた。
特に多重債務の背景には貧困問題があり、貧困問題は個人の努力のみによって解決困難な社会構造的問題であるというのが長年多重債務問題に携わってきた我々の共通の認識である。
よって、市民の命と生活を支えるため、貧困問題と真正面から向き合い、経済的困窮者の支援のための担い手となり、生活保護をはじめとする社会保障制度の整備・充実を求めることは、市民に寄り添う「くらしの法律家」としての司法書士の使命であり、司法書士全体で積極的に取り組まなければならない重要な問題であると考え本決議案を提案するものである。
以上