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総会決議集
各単位会が実施する裁判所提出書類の作成に関する相談についての法律支援事業への助成の検討を開始する決議
【提案の趣旨】
日本司法書士会連合会は、各単位会が実施する裁判所提出書類の作成に関する相談についての法律支援事業への助成に向けて、日司連の助成制度の拡充等の検討を開始する。
以上のとおり決議する。
2017年(平成29年)06月20日
日本司法書士会連合会 第80回定時総会【提案の理由】
1 司法書士は司法書士法第3条第4号に定める裁判所提出書類の作成を通じて市民の司法アクセスに寄与してきた。平成12年には民事法律扶助法が施行され、民事法律扶助事業に書類作成援助が創設され、日本司法支援センター(以下、「法テラス」という。)の事業に引き継がれている。
法テラスの法律扶助事業は、相談援助、代理援助、書類作成援助の3つに分けられる。相談援助については、単独の法律相談のみならず、代理援助の受託の前段階としての法律相談として利用されることが多々ある。相談援助の対象となるのは、弁護士法その他の法律により法律相談を取り扱うことを業とすることができる者による法律相談、つまり司法書士法第3条第7号の相談に限られ、書類作成援助の前提とした相談である司法書士法3条5号による相談には利用できないのである。
2 司法書士の書類作成業務は、最近、大きくクローズアップされて来ている養育費の問題、過重労働やブラック企業を起因とする労働問題、後見開始申立や相続放棄などの家事事件等、市民の権利擁護に役立つことが明らかな分野が目立ってきている。しかし、その入り口である相談については相談料の助成制度が著しく不十分であり、かつ、これらの問題を抱えている当事者は生活に困窮していることが多く、相談料を負担する経済的な余力がない。それゆえに、相談を受けることを躊躇する司法書士は多く、そのため書類作成事件の受任の前提である相談を受ける司法書士が少ないという現状にある。これでは我々の書類作成業務が市民の権利擁護に活用されづらいことは明らかである。
日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。)では、従前より、法改正の働きかけを行ってきたということは、私の平成27年の定時総会における質疑に対する答弁でも明らかである。しかし、いまだ総合法律支援法改正は実現されておらず、市民の権利の擁護の視点から甚だ問題のある事態である。
長野県会では家事事件相談料助成制度を導入し、家事事件についての裁判所提出書類作成に関する相談料の援助を開始したと聞き及んでいる。また、埼玉会では、長野県会での取り組みを参考として、会員の実施する裁判所提出書類作成業務の前提とした相談への助成について、予算措置を行い、導入に向けた検討を行っている。
3 日司連では、平成20年度より各単位会が実施する「経済的困窮者に対する法律支援事業」への助成制度(以下「本助成」という。)を実施している。本助成の対象は、助成の要領において、「司法書士会の実施要領等に基づく経済的困窮者に対する法律支援事業において会員に支払う相談日当等」等としており、各単位会が実施する会員の経済的困窮者に対する法律支援(社会保障給付の支給等に関する相談を含む法律相談会の開催、申請同行支援等)事業を想定している。しかしながら、本助成は、相談会の開催や同行支援に限られていると思われ、個別の事務所での相談費用の援助は予定されていない。
4 そこで、日司連が、「経済的困窮者に対する法律支援事業」の要綱の見直し等を行い、各単位会が市民の司法アクセスを確保するため、会員の行う裁判所提出書類の作成を前提とした相談についての事業を円滑に実施できるよう検討をすることを提案する。
よって、議案の趣旨記載のとおりの総会決議を求める。