日本司法書士会連合会について 情報公開

ホーム > 日本司法書士会連合会について > 情報公開 > 総会決議集

総会決議集

改正貸金業法の早期完全施行を求める決議

【議案】

 日本司法書士会連合会は、国に対し、改正貸金業法平成18年法律第115号の未施行部分全部について、早期施行を求める。

 

以上のとおり決議する。

2009年(平成21年)6月19日
日本司法書士会連合会 第71回定時総会

【提案の理由】

  1. 改正貸金業法成立の背景

     
     自己破産申立をした個人は、平成20年129,508人、平成19年148,252人、平成18年165,917人、平成17年184,422人と、平成15年の242,377人をピークとして減少傾向を見せたものの、平成11年からの10年間を振り返っても累計で172万人を超えている。これは、我が国の人口から計算すると、少なくとも1%以上の人が自己破産の申立をしたことになる。
     また、消費者金融業者いわゆるサラ金業者との契約に関する全国の消費者生活相談件数は年間10万件を超えており、大きな社会問題となっているほか、我が国における自殺者は10年連続で年間3万人を超えており,うち経済生活問題による自殺者は、2005年には10年前の2.8倍に相当する7,800人に及ぶ。
     消費者金融業者は、こうした多重債務問題が社会問題として注視されるようになった後も、法の趣旨や国民の生活権を無視した過剰融資や過酷な取り立て行為を続け、人々を自己破産、自殺へと追い込んでいったものであり、こうした多重債務問題への対応は急務であった。

  2. 改正貸金業法の概要

     
     平成18年法律第115号「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」は、深刻さを増している多重債務問題の解決のため、上限金利の引下げ、返済能力を超える借入を防ぐ総量規制の導入、貸金業の業務適正化のための参入規制・行為規制の強化など、総合的かつ抜本的な対策を講じ、画期的なものである。この法律は平成18年12月20日に公布され、段階的施行を経て、平成19年12月19日から2年半以内に完全施行される予定にある。なお、完全施行を待つ重要項目は,次のとおりである。
      ① みなし弁済規定の廃止
      ② 出資法上限金利の引下げ(出資法の刑罰金利を利息制限法の上限金利に一致。)
      ③ 総量規制の導入(総貸付残高が年収の3分の1を超えるなど,債務者の返済能力を
         超える貸付を禁止する。)
      ④ 貸金業の適正化・参入条件の厳格化(純資産5000万円以上を求める。)
      ⑤ 事前書面交付義務の導入(貸付にあたり,全ての元利負担額など契約の内容を
         説明した書面の事前交付の義務づけ。)
      ⑥ 日賦貸金業者・電話担保金融の特例の廃止

  3. 社会情勢

     
     確かに、ここ数年来、自己破産申立件数が減少傾向にあることは、統計上明らかである。
     しかし、依然として多重債務に苦しんでいる人々は多く、その数は全国で150万人ともいわれている。また出口の見えない世界的経済不況にあって、今後も中小企業の倒産が続くものと思われ、失業者の増加やワークシェアリング等による労働収入の低額化も懸念されるところである。このような状況を鑑みれば、多重債務問題の解決には未だほど遠く、貧困問題の解決に至っては、未だスタートさえ切れていないと言えるのではないだろうか。
     金融広報中央委員会が実施した世論調査によれば、平成20年における貯蓄を保有していない世帯の比率は22.1%にも上っている。また労働者の34.6%が非正規雇用者であると言われており、年収200万円以下の階層が1,032万人(100万円以下は366万人、100万円超200万円以下は666万人)であるとのデーターも公表されている。給与所得者の22%が生活保護水準以下の収入で、苦しい生活を強いられているのである。

  4. 問題点

     
     事実として、事故・病気等による緊急の出費や収入減少による生活費不足を消費者金融に頼る人々、また運転資金を商工ローンから借り入れる零細・個人事業者は後を絶たない。しかし、そのような借り入れは一時しのぎにしかならず、すぐに高金利の返済に追われ、どんなに苦しい生活に耐えて返済を続けても多重債務状態に陥ってしまうのである。
     データーによれば、自己破産の6割以上が非正規雇用者で、その半数は月収10万円以下となっている。多くの人が、不安定かつ低賃金の雇用形態による生活苦から多重債務に陥っているという調査結果が明らかにされているのである。
     必要とされるのは、その場しのぎにしかならない高金利の融資ではなく、生活保護等の社会保障の充実、貧困問題の解決に向けた社会システムの確立である。
     ところが最近、改正法において、「出資法及び利息制限法に基づく金利規制のあり方について、施行から2年半以内に、改正後の出資法及び利息制限法の規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性の有無について検討を加え、その検討の結果に応じて所要の見直しを行うこととする。」との規定が設けられていることから、貸金業界を中心にグレーゾーン金利の廃止や上限金利引下げを阻止しようとする動きが目立っている。万一、このような動きが功を奏するようなことにでもなれば、貧困問題や多重債務問題が更に深刻化するであろうことは、火を見るより明らかであり、司法書士として、また一人の国民としては到底容認できないものである。

  5. その他

     
     なお、本議案は、平成21年6月6日に開催された日本司法書士会連合会中部ブロック会の定時総会において採択された決議に基づき提出するものである。

  6. 結論

     
     以上のとおり、一般国民の貧困問題・多重債務問題解決のためには、改正貸金業法によるいわゆるグレーゾーン金利廃止、上限金利引下げ等が可及的速やかに施行されるべきであり、本総会において前記決議を採択し、改正貸金業法完全施行を国に対し強く求めるべきである。

音声で読み上げる