日本司法書士会連合会について 情報公開

ホーム > 日本司法書士会連合会について > 情報公開 > 意見書等

意見書等

2004年(平成16年)01月09日

司法制度改革推進本部事務局 御中

「司法ネットの整備」について(意見)

日本司法書士会連合会

 

 

 

はじめに
司法制度改革推進本部におかれては、1年余の短期間にもかかわらず「司法ネット構想」実現のため司法アクセス検討会、公的弁護制度検討会等において、精力的かつ慎重な検討を重ねられてきたことに深く敬意を表するところである。
国民には、「法律サービスの提供や紛争解決のための情報が得られない」「誰に相談をして良いのか分からない」との声が多く、それにより「泣き寝入り」をし てしまうという現状がある。そこで、国民が全国どの地域にあっても法的紛争解決のための情報を得られるような司法アクセスポイントの設置、国民誰もが法律 サービスを受けられるような仕組み等、国民生活に不可欠なインフラとして司法ネットを官民協働で整備することの必要性は、当連合会としても深く認識してい るところである。したがって当連合会は、国民の司法へのアクセスを容易にし、国民に身近で、利用しやすく、わかりやすい司法機能の充実・強化を図るための 司法ネット構想の実現に全面的に協力する所存である。
司法書士の歴史は、民事司法の実務現場に在って、登記手続の代理や裁判書類の作成をとおして国民の法的生活の安定を長い間支援してきた歴史である。今般の 司法書士法改正により簡易裁判所における代理権を取得した司法書士は、弁護士過疎といわれる国民の司法へのアクセスが阻害されている実情を熟知している職 能集団である。国民の身近な司法制度の実現には、何よりも司法へのアクセスの整備拡充が重要であって、その実現には利用者のニーズに沿った、使い勝手の良 い多様な制度の整備が不可欠である。当連合会は、この観点から「司法ネットの整備」について以下のとおり意見を述べるものである。

 

 

【項目1】司法ネット構想全般について

 

 

1.司法ネットの趣旨

 

 

司法は誰にとっても「手を伸ばせば届く」存在でなければならず、法的紛争を抱えた市民が気軽に相談できる窓口を広く開設し、全国どこの街でも法的サービスを受けられるよう、司法ネットの整備を進める必要がある。
司法制度改革の具体的施策の一つとして、これに応える仕組みを国の責任において整備することは司法制度をより利用しやすいものにする観点から重要であり、司法書士の日常業務や司法書士会でのリーガルサービスの実情からみても異論のないところである。

 

 

2.予防司法の観点から
新たに設ける運営主体を中核として、民事・刑事を問わず、国民が全国どこでも法律上のトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるような総合 法律支援の体制を整備することはもとより、トラブル(紛争)を未然に防止する観点も司法ネット構想の趣旨としてとらえるべきである。
この紛争を未 然に防止する一つの方策として法教育を挙げることができる。この法教 育は、自己責任を求められる社会の中で、正しい自己決定や判断をするために必要な基 礎教育であり、特にリーガルマインド・人権感覚の養成は、公平・公正な国民生活を守るために最も重要であり、社会生活に必要な基礎的法律知識や法的な考え 方の習得も可能となる。

 

 

【項目2】相談窓口(アクセスポイント)について

 

 

1.国民に身近で利用しやすいアクセスポイントの設置
弁護士会、司法書士会や行政機関等による法律相談は、一定の評価は得ているものの、まだまだ場所的・時間的に十分ではなく、司法の場にたどり着けずに泣き 寝入りしている国民は少なくない。また、これら相談機関相互の連携も十分ではないため、司法へのアクセス障害の原因となっている。
そこで、全国各地に司法アクセスポイントを設置し、国民が広く法律サービスを受けられる体制を整備する必要がある。さらに、国民のアクセスを容易にするた め、例えば相談時間を拡大し夜間・休日利用の実現や、具体的な相談費用に関する情報提供等の広報活動を積極的に進める必要がある。
2.人材の育成
アクセスポイントにおいては、相談の受付、司法に関する総合的な情報提供や関係機関(既存の法律サービス機関等)とのネットワークによる連携活動、利用者 の相談内容に応じて法律サービス提供機関・専門家・ADR等への適切な振り分けが主な業務となる。そのためには、各アクセスポイントに上記業務を担える専 任の職員を数名配置する必要があり、専任職員の確保・育成は喫緊の課題であり、運営等を担う職員についても広く人材を求めて、体制を整える必要がある。

 

 

【項目3】司法過疎対策について

 

 

司法過疎地域等においては、常勤弁護士・司法書士等による法律サービスの提供が行われ得る体制を整備すべきである。
1.簡易裁判所所在地を基準とした拠点の設置
司法ネットが国民の司法へのアクセス改善を目的とするのであるならば、とりわけ司法過疎地において地域住民の法的需要に応える様々な方策を検討しなければならない。
先の司法制度改革推進計画における簡易裁判所の機能充実の観点から、その検討が行われた結果、事物管轄140万円への引き上げ、少額訴訟における目的物の 価格60万円までの引き上げが予定され、今後簡裁の役割は当然に拡大し、その利用が一層拡充すると考えられる。そこで、司法過疎地域への拠点の設置につい ては、地方裁判所管轄地域を基準とした弁護士ゼロワン地域に限定するのではなく、財政的に許されるのであればむしろ全国の簡易裁判所所在地を基準として、 弁護士・司法書士ゼロワン地域への設置が望まれるところである。
2.運営主体が主宰するADRの検討
司法過疎地域については、法律サービスの提供にとどまらず、ADR(裁判外紛争処理手続)について民間による対応がない場合や過疎地で誰も対応しない等の 場合は、運営主体自らが主宰するADRについても検討する必要がある。この場合、その人的確保については、ADRの特性を十分考慮し、隣接法律専門職種以 外についても一定の範囲でその対象として考えることができる。
3.人材確保のための体制整備
司法過疎地域において、常勤(スタッフ)弁護士・司法書士等や職員に対する、給与、勤務期間、生活面でのサポートについて十分考慮する必要があり、これら人材確保のための体制を整えることが重要である。

 

 

【項目4】民事法律扶助について

 

 

司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)において、「民事法律扶助制度について、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方・運営主体の 在り方等につき更に総合的・体系的な検討を加えた上で、一層充実することとし、本部設置期限までに、所定の措置を講ずる」として民事法律扶助の拡充が挙げ られている。
1.対象事件の範囲
司法ネットにおける各関係機関との連携の上に立った総合的な観点から、司法に関する総合的な情報提供、法律相談・助言、そして裁判手続に限定するのではなく、行政手続やADRについてもその範囲とすべきである。
2.対象者の範囲
民事法律扶助制度における現在の資力要件の緩和はもとより、高齢者や未成年者並びに障害を持った人などについてはその資力要件を大幅に緩和すべきである。
また、外国人については、適法な在留資格者に制限されるが、それ以外の外国人についても検討することが望まれる。
3.利用者負担の在り方
民事法律扶助法においては、利用者の全額償還を原則としている。しかし、一方では、この全額償還が扶助制度の利用障害の要因の一つにもなっている。そこ で、利用者負担の軽減を考慮するとともに、原則、全額償還制を維持しつつも、一部或いは全部の免除等の例外的規定を検討すべきである。また、償還金につい ては、事件の性格及びサービスの内容等にもよるが、利用者である国民が納得できる合理的なものであることを要する。
4.運営主体の在り方
司法ネット構想の中の運営主体における民事法律扶助事業の拡充は、本構想の中心的事業であり、その予算措置については大幅な増額が不可欠である。また、事 業の実施にあたり、現行ジュディケア制に加え一部常勤(スタッフ)による弁護士・司法書士の活用については、今後の事件増加が予想される中、その実現につ き積極的な対応が必要である。

 

 

【項目5】公的刑事弁護について
刑事被疑者段階から弁護人が付くことにより、一貫した活動が可能となるため裁判の長期化を防ぐとともに国家のコスト軽減に繋がり、冤罪の防止や、迅速な裁 判の実現が可能となる。このことから、公的弁護制度の対象事件については幅広く検討する必要がある。また、この弁護士によるサービスの費用負担ができない 者に対する援助負担は国の責務であり、その財政的措置は十分考慮する必要がある。

 

 

【項目6】犯罪被害者支援について
運営主体が刑事被疑者・被告人に対する公的刑事弁護と利害が相反する犯罪被害者支援を行うことについて、その対応を慎重に検討する必要がある。

 

 

【項目7】運営主体の組織等について
1.運営主体の設立
司法ネットの中核となる運営主体については、既存の団体・機関等との総合調整連携機能や司法アクセスポイントでの事案の振り分け・相談対応機能、そして、総合的法律サービスの提供機能を有しなければならない。
2.組織形態
  運営主体の組織形態としては、財団法人法律扶助協会の意見を尊重・評価し、経験者が引続き担当して行くことが望ましいが、その法人格については独立行政法 人に限定することなく、全国にアクセスポイント等の現場を有する新たな法人格として運営・経営・管理に自主性・柔軟性そして明確性を備え、質の高い効率的 な法律サービスが提供できる組織とする必要がある。
また、国民から信頼される組織形態とするため、業務運営において利用者の「苦情処理」に関する規定を整備し、評価を受けるものとし、更に必要がある場合は有識者等からなる機関を設置し審査を受ける制度を検討する必要もある。
3.財政措置
財政面に関して、業務運営については国選弁護報酬、民事法律扶助事業の補助金を有効活用するとともに相当量の公的資金が必要になる。運営コストについて は、運営主体と提携・協力関係をもつ団体や機関からの資金を積極的に活用すべきである。また、法律サービスに要した費用は原則利用者負担となるが、同時に 法律扶助制度の一層の拡充を図り、費用の負担が困難な低所得者については償還免除等の方策の検討や国民の低所得者層が十分な司法サービスを受けられるよう にすべきである。これに伴い、費用回収の実効的な仕組みについては、これを慎重に整備する必要がある。また、アクセスポイント設置、法律扶助、公的刑事弁 護、司法過疎対策、犯罪被害者支援の5つに関する事業運営費や人件費、管理費等についても十分に予算を確保する必要がある。
4.業務内容
運営主体の業務については、国民のニーズや社会の動向に直ちに対応できるよう、上記の5項目以外にも業務の設定が可能な制度にする必要がある。
5.役員
運営主体における役員については、司法ネットが全国的規模で行う事業であり、各地域によってそのニーズは多様であることから、利用者である国民の要請を十 分反映できる者を求めるべきである。それには、広く国民からの参加を求めるとともに、サービス提供者や司法ネットとの連携機関の代表者並びに有識者等から 参加できるようにすべきである。
6.弁護活動・訴訟活動の独立性
運営主体は、契約関係にある弁護士の個別の弁護活動・訴訟活動について、指揮命令できないものとすべきである。また、司法書士や隣接法律専門職種についてもその活動の自主性や独立性を尊重した制度設計が必要である。
7.専門家の活用・各機関との連携
既存団体との連携について、全国的に設置されるアクセスポイントでは、広範囲な法律問題につきその各専門家がサービスを提供するためにサービスを提供する 専門家の協力、提携がなければ司法ネット構想は計画倒れになる。運営主体の業務を担う人材を、いわゆる法曹のみに求めるとするならその需要は到底まかなえ ないと考えられ、広く人材を求めて体制を整える必要がある。具体的には、運営主体のスタッフとして弁護士、司法書士などの専門家の活用や、弁護士会、司法 書士会、ADR機関、行政機関などとの有機的な連携が求められ、従来の枠にとらわれることなく、様々なリーガルサービスを提供している人材や機関との実効 性ある横断的なつながりが必要である。このためには、それぞれの職能、機関の個々の独立性は維持、尊重しながらも、国民へのリーガルサービスの提供という 観点から積極的な協力体制を構築する必要がある。

 

 

【項目8】その他について

 

 

司法ネットと司法書士について
司法ネットが国民の司法へのアクセスを容易にし、自己責任、事後救済型の基本的インフラとして機能するためには、地域に根ざした制度として広く利用される ものとならなければならない。全国をくまなく網羅する司法ネットを制度構築するうえで、地域でのリーガルサービスの担い手として、その役割を果たしている 司法書士や司法書士会は、本構想において重要な役割を担えるものである。
司法ネット構想では、法律扶助、公的弁護制度、司法アクセスポイント、司法過疎対策、犯罪被害者支援の5つを柱としているが、ほかにADRについてもその 協働は可能である。ただし、現在、民間団体の多くがADR機関の立ち上げを準備しており、本構想の予算規模にも関わるが、積極的な取り組みはなされていな い。しかし、司法過疎地域において民間ADRがない場合、或いは対応しきれない場合などは、本運営主体が対応する必要があり、その際、司法書士ADRセン ター(仮称)において、引き継ぎ、受け入れ態勢を整備し、運営主体が主宰するADRへ人材派遣等の対応が可能である。
法律扶助事業の拡充は、本構想における最重要課題であり、司法書士の役割が最も期待されるところである。特に法律相談援助は運営主体でそのまま継続される ことが予想され、アクセスポイントでの振り分けについても司法書士の関わりを積極的に行う必要がある。また、これまでの書類作成援助に加えて代理援助の担 当者として、より国民に利用しやすい扶助事業を支えていく努力を当連合会は進めていく所存である。
過疎地域におけるアクセスポイント設置は、予算の都合上さしあたり地方裁判所管轄での弁護士ゼロワン地域に設置される予定であるが、当該地域における簡裁 代理権を有する司法書士はとりわけ重要な役割を有している。そもそもアクセスポイントは司法への窓口(道案内)であり、各司法書士会への振り分けは運営主 体にとっても重要な問題で、受け入れる側の司法書士会にとっても、窓口機能の整備はもとより、運営主体との相互連携を密接に図る必要がある。
今般の司法書士法改正により、簡裁代理権はもとより法律相談権の付与を受け、司法ネットの担い手として、また人材の供給源として、司法書士は本構想におけ る役割を十分担えるものと考える。司法ネットが真に国民の司法へのアクセスの拡充に役立つものとなるよう、当連合会、各司法書士会、そして司法書士ひとり ひとりが積極的な対応ができるものと認識している。

以上

音声で読み上げる