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意見書等
2009年(平成21年)06月30日
法務省民事局(総務課登記情報センター室) 御中
新オンライン登記申請システム骨子(案)に対する意見
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司日本司法書士会連合会(以下、「日司連」という)は、今般、貴局より公表された新オンライン登記申請システム骨子(案)(以下、「骨子案」という)に対し、以下のとおり意見を申し述べます。
【はじめに】
日司連は、骨子案における「利用者の利便性に配慮する」との基本姿勢を高く評価します。また、現行の汎用システムから不動産登記手続等利用増加が予想さ れる手続に特化した個別システムを構築すること、並びにヘビーユーザー専用のシステムを構築するとの基本設計構想に賛意を表します。さらに、仕様公開範囲 を拡大して民間事業者が提供するソフトウェアとの連携を強化することは、まさに実効性のある改善策であると認識します。
以下、骨子案に対して上記意識を基礎として意見を申し述べますが、システム構築にあたっては最大の利用者である司法書士の意見を可能な限り取り入れてい ただくよう要望致します。また、より利便性の高いシステムを再構築するためには、骨子案の段階から現実の操作方法を視野に入れることも必要であるとの観点 から、一部具体的なシステム内容についても意見を申し述べることとします。
なお、日司連としては、今後ともオンライン申請特例措置やシステム障害時の特別措置さらには不動産登記制度における法改正等につき、実務実態を踏まえつ つ国民の権利保護の視点から積極的に意見を述べる所存であり、したがって、ハード的側面が制度改正の障害とならぬように配慮した柔軟性のある新オンライン 登記申請システムの設計を望むものであります。意 見
1 「JRE」について
現行システムにおいて、その利用のための環境設定に大きな障害となっているのが、いわゆる「JAVA」のバージョンアップ対応であ る。旧バージョンを削除し、新バージョンをインストールする手続は、煩雑で非常に効率が悪い。オンライン利用の一層の促進のためにも、「JRE」を利用し ないシステム構築を是非実現すべきである。なお、可能であれば、特定のOSの動作環境に限定されないシステムが望ましい。2 複数代理人の関与について
オンラインによる一申請について、複数の代理人が同時に申請できるように、また連件事件について各申請につき別の代理人による複数の申請を連件事件とし て一括して送信できるようにすべきである。なお、この場合、遠隔地間の複数の代理人による上記各申請を可能とすべきであり、これによりより実務に対応した システムとなり、司法書士利用者の利便性は格段に高くなると考えられる。3 複数管轄物件の申請について
オンラインによる申請窓口がひとつと考えられる以上、複数登記所の管轄物件に対する登記申請を一括して同時に申請できるようにすべき である。なお、この場合、「オンライン申請特例措置」による登記原因証明情報原本のPDFによる提供につき運用面での対応(例えば、複数登記所への登記申 請であったとしても、一つの登記原因証明情報の提供のみでこれを可とする等)が必要となると考えられる。4 電子署名について
①【概要】 休日・夜間においても電子署名を含む全ての申請準備ができるようにすべきである。
【詳細】 現行システムは、ログインしなければ電子署名ができない。司法書士は、連件事件あるいは大量事件を取り扱うことが多く、前日夜間あるいは休日に それら申請準備を行うことが必要になる場合があり、実際に行っている。よって、電子署名に相当時間を要する現行システムが改良されたとしても、休日・夜間 の事前準備事務においても電子署名を含め全ての準備を完結することができるようにすべきである。
②【概要】 電子署名は一申請につき一回で済むようなシステムにすべきである。
【詳細】 現行システムでは、複数当事者の登記識別情報は当事者ごとに電子署名することが必要であり、また登記識別情報の電子署名に加えて申請情報の電子 署名も必要である。複数回の同レベルの電子署名をするという煩雑な作業は回避されるべきであり、当該申請における登記識別情報の全てにつき一回の電子署名 で済むようにすること、さらに登記識別情報の電子署名を省略し一申請につき一回の電子署名で済むシステムを構築すべきである。なお、このような電子署名方 法の変更によっても当該変更に起因するセキュリティーの低下はないと考える。5 連件事件について
【概要】 大量連件事件に対応したシステムにすべきである。
【詳細】 骨子案では、大量事件に対応することは明示されているが、現行システムにおいて司法書士が煩雑さを感じているものの一つに連件一括申請事件があ り、大量事件対応の射程として連件一括申請事件が入っていないのであれば、是非それに対応したシステムを構築すべきである。連件一括申請事件における各申 請相互間での当事者や物件情報のコピー機能を充実させること、あるいは連件一括申請事件全体で一回の電子署名で済むシステム構築が必要である。6 申請情報入力画面について
現行システムでは、書面申請のイメージ上に申請情報を入力しているが、書面申請形式を維持することによりかえって入力が煩瑣となり、 またその応用ができなくなっている。たとえば、Q&A方式などの書面申請形式にこだわらない入力方法も選択できるようにすべきである。7 登記情報提供サービスについて
司法書士は、夜間や休日に申請準備を行い、また依頼者の相談に応じることが少なくない。その際には、物件情報の入手が不可欠となる。よって、登記情報提供サービスを24時間利用できるようにすべきである。
8 お知らせメールについて
現行システムでは、一申請ごとに同じ内容のメールが送信されるため事件が特定できない。そのため処理状況画面を開いて各事件につき確 認しなければならず、簡易迅速な事務処理ができない。複数申請あるいは連件申請を行うのが常態となっている司法書士に対しては、申請番号等により事件を特 定できるメールを送信するようにすべきである。9 処理状況一覧について
処理状況一覧について、例えば連件事件の場合は連件ごとに表示をする、あるいは申請事件ごとに任意のタイトルを入力できるようにし処理状況一覧にそのタイトルを表示する等容易に確認できるようにすべきである。10 システム障害の対応について
現行システムでは、システム障害時の対応策として特別措置が用意されているが、特別措置に加えて、障害時には別に用意したシステムを稼働する等の措置を 用意すべきである。また、このようなシステム障害時におけるいわゆる「レスキューシステム」を構築し、これを公開すべきである。これにより、万が一のとき に、どのように対応することが最善であるかを迅速に判断し、処理することができるという、オンライン申請実務に対するある種の安心感が生まれ、利用をさら に促進するものと考えられる。11 公文書のダウンロードについて
現行システムでは、一申請ごとに登記完了証や登記識別情報をダウンロードしなければならないが、連件事件を一括してダウンロードでき るシステムはもちろん、同一代理人であれば、連件でない複数の事件についても一括してダウンロードできるシステムにすべきである。これにより、申請件数が 増加しても対応できるシステムとなる。12 登記識別情報の証明請求について
登記識別情報の証明請求(有効証明請求及びいわゆる未失効証明請求)については、現在、司法書士の代理請求における簡便な利用が可能となりその利便性は 向上したが、証明に時間がかかりすぎることが利用促進の障害として残っている。是非とも自動チェック機能を有するシステム等を導入すべきである。13 登記識別情報の提供について
①現行システムにおいては、登記識別情報の入力につきアスタリスクを使用しない方法を用意する等一定の改善が実現しているが、登記識別情報通知に二次元バーコード等を表示し、簡便に入力ができるようにすべきである。
②登記識別情報提供様式の入力につき、申請情報から当事者および物件情報等をコピーできるようにすること。また、同一申請における他の登記識別情報の入力項目をコピーできるようにすることなど入力方法の簡便化を図るべきである。
③現行システムにおいては、申請情報と登記識別情報を別ファイルで提供するようになっているが、申請情報に直接登記識別情報を入力するなどの簡便な提供方法にすべきである。
④申請情報が送信された場合、同時に送信された登記識別情報について自動チェックシステムによるチェックを行い、登記識別情報についての補正情報を速やかに通知できるようにすべきである。
その他
①新システム設計が完了した際には、徹底的に実験を重ねてシステムエラーが発生しないよう周到な準備を行うべきであり、また運用実験についても司法書士が参加できる機会を設けていただきたい。
②新システム設計のつき、司法書士のほか、金融機関や不動産業者なども交えて協議すべきである。
③新システムに使用するOSは、ウインドウズのみではなく他のOSでも利用できるよう 汎用性を高めた設計にすべきである。