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意見書等

2011年(平成23年)12月28日

消費者庁消費者制度課 御中

「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の骨子」についての意見

日本司法書士会連合会

意見の対象

 日本司法書士会連合会は、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の骨子(以下、「骨子」という)のうち、次の各事項について下記のとおり意見する。
  2.一段階目の手続(共通争点の確認の訴え)
  3.二段階目の手続(個別請求権の確定訴訟)
  4.その他

第1 「2.一段階目の手続(共通争点の確認の訴え)」について

意見の内容

1 対象となる権利を消費者契約に限定せず、少なくとも「事業に直接関連する目的で取引するものに基づく請求権」を除く請求権とすべきである。
2 対象となる権利には、契約関係を前提としない損害賠償請求権を含めるべきである。
3 対象となる権利には、事業者の役員等に対する損害賠償請求権を含めるべきである。
4 一段階目の手続においても、被告である事業者の収益散逸を防ぐための措置が講じられるべきである。

意見の理由

1 骨子では、対象となる権利を消費者の事業者に対する請求権としているが、悪質な事業者による個人事業主などに対する電話機などの通信機器リース契約被害のように、個人事業主をターゲットとする様々な商品や役務の訪問販売などを行う被害例も散見されている。個人事業主とはいっても、専門分野以外については消費者と同様に情報の量と質、交渉力の格差が存在するため、一定の場合には被害回復が図られる必要がある。したがって,本制度の除外の対象としては,少なくとも契約の当事者間に情報の質等の格差を考慮する必要性が減少すると考えられる「事業に直接関連する目的で取引をする場合」に限るべきである。
  また、骨子2(1)②ないし③の各請求権が生じるケースは消費者契約に限定されない。このため、対象から個人事業主を除外することにより、個人事業主が一段階目の手続の結果をみて別訴を提起することが考えられ、訴訟経済上も、被告である事業者の負担を増大させる結果を招くこととなる。

2 骨子では、2(1)①ないし④の各請求権を対象となる権利として掲げており、これらはいずれも契約に基づく請求権であるため、契約関係を前提としない下記の各請求権は訴訟対象とならない。
  しかし、下記の各請求権は共通性や多数性が認められ、かつ被害額が少額である請求権が多く、本制度によって迅速に被害回復が図られるものである。
  一方、対象となる請求権の範囲を拡大することによって、濫訴が生じたり事業者に不当な不利益が及んだりするとの批判もあるが、そもそも個別性が強い事案は本制度の対象になりにくいのであるから、このような懸念は現実化しないものと考えられる。
 ① 商品に欠陥がある場合の販売行為には直接関与しないメーカーに対する損害賠償請求権で、製造物責任法の適用を受けないもの
 ② 個人情報の漏洩による損害賠償請求権
3 前項で、契約関係を前提としない損害賠償請求権を含むとしても、骨子のとおり対象となる権利を事業者に対する請求権に限定するのでは、なお本制度の実効性は確保できない。
  というのも、悪質な事業者の多くは、被害者から得た収益を役員らの個人名義の口座へ移動させる等の方法により、被害者による保全手続や執行手続を不奏功とさせる例が少なくないからである。
  本制度を利用することにより、より多くの被害者が被害回復を図ろうと二段階目の手続を利用することになれば、さらにその傾向は強くなることが予測され、結果的に被害者が被害回復を図ることは困難となる。
  したがって、本制度の実効性を確保するため、対象となる権利に、事業者の役員等に対する損害賠償請求権をも含めるべきである。
4 本制度は、事業者の違法な収益を剥奪し消費者被害の回復を図ることを目的としていることから、被告である事業者から個々の対象者に対し、確実に金銭の支払いがなされることが重要である。
  この点、被告である事業者が、一段階目の手続の係属中に財産を散逸させてしまうことも考えられるため、二段階目の手続だけに保全手続の規定を設けるのではなく、一段階目の手続においても、特定適格消費者団体に対し、被告である事業者に関する財産調査権や口座凍結のための措置等を認めるべきである。

第2 「3.二段階目の手続(個別請求権の確定訴訟)」について

意見の内容

1 通知・公告の費用は、被告が負担することを原則とすべきである。
2 申立団体が、消費者庁や独立行政法人国民生活センター等の行政機関に対し、個々の対象者への通知・公告すべき事項の周知を要請することができる規定を設けるべきである。

意見の理由

1 通知・公告は、本制度の目的である、多数の少額被害者の被害回復を実現するために重要な手続であり、実効性のある方法とすべきである。このためには、個々の対象者に対する個別通知が最も望ましいが、被告である事業者が対象者のメールアドレスを把握しているなどの事情がない限り、個別通知に相当の費用を要することは確実である。
  原告である申立団体は、通知・公告のための事務作業を担うだけでも大きな負担であるのに、さらに費用の負担を課すことになれば、本制度を活用することを躊躇せざるを得ないケースも予測され得る。
  一方、被告である事業者には、一段階目の手続ですでに共通争点についての責任が認容されているのであるから、仮に通知・公告に要する費用を負担することになったとしても、それは履行費用の一部にすぎず、不相当に過大な費用を負担させることにはならない。
2 通知・公告の実効性を確保するために、原告である申立団体が消費者庁や独立行政法人国民生活センター等の行政機関に対し、ウェブサイトやテレビコマーシャルによる対象者への通知・公告すべき事項の周知を要請することができる規定を設けるべきである。
  民間団体である申立団体による通知・公告よりも、行政機関による周知の方が広く対象者に通知・公告すべき事項が行きわたるうえ、行政機関のウェブサイトを周知媒体として活用することで通知・公告のために要する費用の軽減化を図ることも可能である。
  また、対象者への広い周知という点ではテレビコマーシャルも効果的であるが、テレビコマーシャルには多額の費用を要するため、原告である申立団体が行うことは困難である。
  しかし、個々の対象者のメールアドレスや住所が判明しない場合のように個別通知が困難な事案の場合には、より多くの対象者に情報が行きわたる周知手段を検討することが必要であるから、行政機関に対象者への周知機能を担わせることが効果的である。

第3 「4.その他」について

意見の内容

1 本制度の趣旨を評価し、速やかな立法化を求める。
2 本制度が活発に活用されるよう、貴庁に対し、関係機関の連携強化に積極的に取り組むことを要請する。

 

意見の理由

1 本制度の制定にあたっては、さまざまな問題点や事業者による反対が指摘されているが、本制度は、もともと個々の対象者が有している請求権に基づく手続であり、新たな請求権を創設するわけではないのであるから、事業者に過大な負担を強いるものではない。
  したがって、消費者被害の回復と健全な経済市場の確保のために、速やかな立法化を求めるものである。
2 個々の対象者が、一段階目の手続における共通争点に関する審理についての結果を確認した上で二段階の手続への参加を決定することができる本制度は、泣き寝入りを強いられる個々の対象者の減少につながる制度であり、当連合会は、本制度が有効に機能することを期待する。
  本制度の実効性を確保するためにも、司法書士・弁護士などの実務家や消費生活相談に携わる専門員が、消費者被害事件の相談を受けて本制度の利用を検討する際には、特定適格消費者団体との連携がスムーズに進められるような体制作りが不可欠であるから、当連合会は、貴庁に対し、関係機関の連携強化に積極的に取り組まれることを要請する。

以上

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