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意見書等

2004年(平成16年)04月05日

法務省民事局参事官室 御中

「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案」に対する意見

日本司法書士会連合会

動産・債権担保制度対策部

 

 

I.始めに
今回の公示制度の整備は、「動産担保及び債権譲渡担保の実効性を高め、資金調達の円滑化を図る」という目的を担うことから、意欲と能力のある企業の新事業 への挑戦を支援し、新たな事業を創出することに寄与し、また、それらの企業が担保不足等による資金調達の困難さから破綻に追い込まれる状況を回避できる制 度にすべきである。
金融機関等が中小企業の信用リスクを把握する際の問題点として「開示される情報量が少ない。」「決算書に信頼が置けない。」ことがあるということから、貸 手側と借手側の「情報の非対称性」が発生している。このように借手側(特に中小企業)と貸手側(金融機関)の情報量には、大きな乖離があり、与信に当たっ て透明性・予見可能性が問題になる。貸手側である金融機関として中小企業への貸出を行う場合は、その金額が大企業に比べ少額であるので、審査コストや貸出 後のモニタリングコストを如何に下げるのかも重要な課題であり、審査能力、方法の改善は急務である。
また、借手側である中小企業側においては、財務情報等の資料を自主的に高頻度で貸手側に提出することと信用情報の開示請求に応えられる体制の整備が必要である。
一 方、ミドルリスクである中小企業等への貸出を担う、貸出金利4パーセント以下の銀行の貸出と、20パーセント以上の商工ローンの貸出の間にあるミドルリス ク・ミドルリターンでの貸出を行っているノンバンク・商社・ファイナンス業者自体の社会的認知を引き上げ、ミドルリスク市場を育成することも課題である。
現在は、中小企業の多くは、資金調達を銀行、ノンバンク等からの借り入れに依存し、自己資本が少ないことを考えると資金供給主体・方法の多様化を進めるこ とが必要であり、この制度を導入することにより、動産担保及び債権譲渡担保を基礎とするキャッシュフロー融資を可能とし、融資の実行性を高めるものとして 期待できる。
中小企業の場合、経常赤字企業で債務超過の場合でも、その半数が数年後に業績の好転が見られることから、足下の財務状況だけでは実力は分からず、再生・再 起における資金調達について金融機関の対応は遅れている。同じような財務状況にある企業でも倒産に至る企業は、一時的な資金難の解決に重点を置き、本来事 業の収益体質改善への取組が疎かになりがちである。貸手側の銀行などにとって中小企業向けの現在の貸出は事業基盤などの定性情報より、財務状況、債権保全 を重視する傾向にあるため、不動産担保融資に過度に依存している。
近年の地価下落傾向の継続により中小企業の与信枠が急速に減少していることを 考えると、この状況を改め、定性情報のモニタリングを的確に行うキャッシュフロー融資の環境整備は必要である。売掛債権の証券化比率は、米国の13パーセ ントに対して日本ではわずか1パーセントと少ないことなどから、日本の動産担保及び債権担保の実効性を高めることは急務である。
なお、労働問題 専門家・倒産問題専門家からは強い反対論も多くある。公示制度の整備は重要では有るが、様々な諸施策のひとつにすぎず、公示制度の整備だけですべてが解決 するものではない。この制度も、いわば「両刃の剣」であり、制度を活かすのか、悪用するのかは制度創設後の法務・経済・労働関連行政機関・経済界・金融 界・労働界・司法書士・弁護士・隣接専門家などが行う環境作りと取引慣行自体の見直しを含む運用の如何によるところが大きいことを指摘しておく。

 

 

日本司法書士会連合会動産・債権担保制度対策部は、上記の基本的な視点から中間試案の個別項目について以下の通り意見を述べる。

 

 

II.意見
第1 動産譲渡に係る登記制度の創設について
(1) 登記制度の創設の目的について
意見  賛成する。
理由  動産担保の実効性を高め、資金調達の円滑化を図る観点から賛成する。特に、不動産資産価値の長期的下落による担保不足は、中小企業を直撃し信用収縮を生 じさせている。この事態を打破するために動産譲渡担保公示制度を整備し、動産を担保とした安定的な資金調達・資金供給の選択肢を増やす効果が期待できる。

 

 

(2) 登記の対象となる譲渡の譲渡人を法人に限ることについて
意見  賛成する。
理由  法人が行う動産譲渡を対象とすれば、事業者が行う動産担保がほぼカバーされること。動産譲渡の登記の内容を容易かつ確実に調査することができるようなか たちで制度内容が設計されねばならないこと。個人事業者が、資金調達に当たって、事業用資産の範囲だけでなく生活のための財産を含む全財産を譲渡担保に供 するよう強要される事態が懸念される等のことから、妥当と考える。但し、法人と自然人を個別に扱うことの必要性については、諸外国における同様の制度を参 考にして、将来の見直しの余地も考慮する必要がある。

 

 

(3) 登記対象となる動産が個別動産か集合動産かを問わないものとしている事について
意見   賛成する。
理由  現在でも個別動産・集合動産とも動産担保の客体とされていることから、どちらか一方のみを登記の対象とする理由は希薄である。固定的動産と流動的動産という視点も有り、画一的に定義することは難しい。以上の理由により賛成する。
しかし、集合財産の定義については、特別の配慮が必要であり、特に集合財産の特定を登記事項としてどのように行うかについては、十分な検討を要する。

 

 

1. 登記の効力等
(1) A案とB案との対比について
意見  A案が妥当と考える。
但し、登記制度創設以前に設定された譲渡担保については、後になされた登記に直ちに劣後することがない様に経過措置をおくなどの配慮が必要である。
理由  占有改定の公示方法としての不明確さを是正するために創設する制度である以上、登記に占有改定に優先する効力を認めなければその効果が減殺されることに なるからである。また、この制度創設の大きな目的として譲渡担保権者の地位の不安定さを解決する事に大きな主眼がおかれ、特に「先行する隠れた譲渡担保に 劣後するおそれ」を解消することが必要とされている。
これらの事を考えると、「ウ」の規律(=「登記された担保目的の動産譲渡は、当該登記が、他の担保目的の動産譲渡が占有改定により対抗要件を備えた後にされたものでも、この動産の譲受人に対抗できるものとする」)は必要である。

 

 

(2) 1案と2案(登記を担保目的に限定するか、限定しないかについて)の対比について
意見  1案が妥当と考える。
理由  この制度創設の大きな目的として、譲渡担保権者の地位の不安定さを解決する事が大きな主眼であることから、担保目的に限定することで十分であり、登記に 対する一般的理解を考えると、真正譲渡まで登記を認める事は、「真正譲渡においても、登記が他の対抗要件に優先するのかのような誤解を生じる恐れがあるか ら、担保目的に限定しない事によりかえって混乱を招くおそれが強い。

 

 

(3) A案・B案共通の後注について
意見 占有代理人の占有下にある動産については登記の対象とすべきである。
理由  直接占有・間接占有が明確でなく、占有代理人と譲渡担保設定者との関係もわかりにくい点などから、登記の対象として認めるべきである。但し、倉庫業・運送業者等の地位と権限が明確な場合は、別途検討する余地が有る。

 

 

(4) A案関連後注について
意見 反対する。
理由  登記によって、引渡しの態様を問わず対抗要件を具備することのほうが、明確でわかり易い制度である。

 

 

2. 登記情報の開示
(1) 登記情報の開示方法について
意見  賛成する。
理由   不利益情報も含めて開示するほうが、企業の透明性が増し、結果的に企業の信用性が増すことに期待したいので、出来る限りの情報公開は必要と思われる。しか し、情報の中には、営業戦略に関わるものも含まれる可能性が大きく全面公開する事は企業の競争力を阻害するおそれがあることから、二段階開示方法とするこ とに賛成する。
但し、開示制度の周知には特段の配慮をすべきである。

 

 

(2) 法人登記簿への記載について
意見   動産譲渡担保に係る登記事項証明書のオンラインによる検索が容易に出来る環境を整備することを条件に、法人登記簿への記載は不要と考える。
但し、検索と概括的登記情報については、無料若しくは、安価な手数料で情報収集ができるようにすべきである。
理由   企業の積極的な不利益情報の公開は、ディスクローズに耐える企業体質を育成し、その結果として企業の透明性の増加・信用力の増加・競争力の強化という正の 循環を期待する事が出来る。また、一覧性の面からも法人登記簿に記載する事は有効と考えられる。しかし、企業情報全体に占める動産・債権譲渡担保の情報割 合が高いとはいえず、特別視する必要は無い。限られた基本情報を公開する目的の法人登記簿への記載の必要性は少なく、逆に一般国民から見ると、動産・債権 譲渡担保の情報だけが特別な不利益情報と捉えられるおそれが有る。
法人情報は原則的に特段の不利益が予想される場合以外は、出来るかぎり開示されることが好ましく、開示方法を周知し、他の開示方法の利用に特段の負担を要しない措置を講じた上で法人登記簿には記載しないこととすべきである。
また、動産・債権譲渡担保の情報を含む他の情報開示制度の周知には特段の配慮を必要とする。

 

 

3.その他

 

 

意見  所要の現実の整備に当たって、以下の事項を配慮すべきものと考える。

 

 

1.登記が紛争予防手段として大きな社会的・歴史的役割を果たしている事の十分な配慮。
2.集合動産の特定方法など登記事項に対応する十分な検討。
3.労働債権等についての配慮。特に労働力を付加することにより価値を高めたものについて、労働債権の保全を講じられる措置を別途検討すべきである。
4.他の先取特権との整合性を図る。
5.登記手続については、低コストで利用しやすく、わかりやすい制度とすべき。

 

 

第2 債権譲渡に係る登記制度の見直しについて
1. 債務者不特定の将来債権譲渡の公示について
意見   債務者が特定していない将来債権の譲渡について、債権譲渡登記により、第三者に対する対抗要件を具備することが出来るようにすることには賛成する。
理由   将来債権については、キャッシュフロー融資を育成するという立場からは必要性は高いと考える。将来債権については、企業が正常に活動する事が債権者にとっ ても必要なことであり、無理な債権回収を行うことにより事業自体を破綻させることは「将来債権という金の卵」を産む鶏自体を殺してしまう事に他ならない。 公示制度以外の環境整備に十分な配慮を行いながら制度を導入すべきである。

 

 

2. 法人登記簿への記載について
意見  債権譲渡に係る登記事項証明書のオンラインによる検索が容易に出来る環境を整備することを条件に、法人登記簿への記載は不要と考える。但し、検索と概括的登記情報については、無料若しくは、安価な手数料で情報収集ができるようにすべきである。
理由  企業の積極的な不利益情報の公開は、ディスクローズに耐える企業体質を育成し、その結果として企業の透明性の増加・信用力の増加・競争力の強化という正の循環を期待する事が出来る。
また、一覧性の面からも商業登記簿に記載する事は有効と考えられる。
しかし、企業情報全体に占める動産・債権譲渡の情報割合が高いとはいえず、特別視する必要は無い。限られた基本情報を公開する目的の法人登記簿への記載の必要性は少なく、逆に一般国民から見ると、これだけを特別な不利益情報と捉えられるおそれが有る。
法人情報は原則的に特段の不利益が予想される場合以外は、出来るかぎり開示されることが好ましく、開示方法を周知し、他の開示方法の利用に特段の負担を要しない措置を講じた上で法人登記簿には記載しないこととすべきである。

 

 

3. その他
意見  所要の現実対応にあたっては、前記第1 3.に加えて次の事項を配慮すべきである。
(1)  将来債権の特定方法など登記事項について十分な検討をすること。
(2)   債権全体として特定可能なものは、将来債権だけに限らず、債務者を登記事項から除外できることを検討すべきこと。特に、債務者が非常に多数となる債権については特段の配慮をすること。

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