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意見書等

2012年(平成24年)08月31日

法務省民事局参事官室 御中

「罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する担当者素案」に関する意見書

日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司

第1 優先借地権制度及び借地権優先譲受権制度
 優先借地権制度(現行法第2条)及び借地権優先譲受権制度(現行法第3条)は,いずれも廃止するものとする。
(注)現行法第4条から第9条までは,優先借地権制度又は借地権優先譲受権制度を前提とする規律であるので,これらの制度の廃止に伴い,上記各条も廃止することとなる。

(意見)
 優先借地権制度(現行法第2条)及び借地権優先譲受権制度(現行法第3条)を廃止することについて賛成する。
(理由)
 我が国において、借地権の財産的価値は借家権の財産的価値に比べて極めて大きく、特に都市部においては土地の財産的価値の7割程度と、建物を上回る財産的価値があることもしばしばである。そのため、借家権者が借地権を取得できるとすることは、いかに被災者であるとはいえ、土地所有者や借地権者等が受ける不利益と比べれば、借家権者の保護として過大であることは否めない。また、借地権を取得した従前の借家人は、建物の新築費用の負担等を含めた相当の金銭的な余裕がなければ、優先借地権を行使することはできない。
 借地権優先譲受権制度(現行法第3条)について、借地権者にとっては、借地権譲渡の対価を得ることができる(現行法第8条、第15条参照)ものの、建物損失の被害を受けているのに加え、さらに自らの意思とは無関係に借地権の譲渡をも強制されるのでは、あまりに酷である。
 また、両制度について、当該土地に被災以前から抵当権等が設定されている場合、優先借地権は当該抵当権等に劣後し、抵当権等の実行により排除されかねず、優先借地権及び借地権優先譲受制度が維持されたとしても、借家人の権利の保全とならない場合も発生しうる。

第2 被災地一時使用借地権(仮称)
【甲案】 被災地において設定される借地権に関し,以下の制度を設けるものとする。
① 政令の施行の日から起算して〔1年/2年〕が経過する日までの間に存続期間を〔5年以下〕として借地権を設定する場合については,借地借家法第3条から第8条まで,第13条,第17条,第18条及び第22条から第24条までの規定は,適用しないものとする。
② ①に規定する借地権の設定に当たっては,①の規定による旨を合意しなければならないものとする。
③ ①に規定する借地権の設定を目的とする契約は,書面によってしなければならないものとする。
④ ①に規定する借地権は,当事者の合意によって更新することができないものとする。
(注1)借地権を設定することができる期間をどの程度とするか,その期間を政令で延長することができるものとするかどうかについて,なお検討するものとする。
(注2)借地権の存続期間の上限をどの程度とするか,存続期間の下限について規律を設けるものとするかどうか,規律を設けるものとする場合にはどの程度の期間とするかについて,なお検討するものとする。
(注3)③の書面を公正証書に限定するものとするかどうかについて,なお検討するものとする。
【乙案】 特段の規律を設けないものとする。

(意見)
 【甲案】について賛成する。
 ①については、政令施行の日から起算して2年が経過するまでの間に、存続期間を5年以下として借地権を設定することができるとすべきである。
(理由)
 罹災都市法が適用される災害が大規模な災害に限定されることを考慮すると、被災者のための長期的に安定した居住地域の確保は、復興のために重要な課題ではある。しかし、被災地では、仮設住宅や仮設店舗等の暫定的な土地利用が不可欠であり、また地域社会の崩壊による問題やトラウマによる健康及び精神的な影響等の問題を考えると、コミュニティ単位での支援が必要となり、そのためには多くの一時利用用地を必要とする。したがって、被災地に限定した特別な一時使用のための借地権制度を設ける必要性は大きい。
 この「被災地一時使用借地権」の存続期間は、定期借地権等の最短存続期間が10年以上であること、被災時であっても当該一時使用借地権者にとっては概ね5年程度で別の土地での住宅建築あるいは賃貸建物への入居等居住方法を具体化できること、及び一時使用借地権設定者にとっても、概ね5年程度で当該土地の長期的利用を具体化できると考えられることから5年が相当である。また、被災時の土地利用のニーズは、ごく短期的なものを含めて多種多様であることから下限を設けるべきではない。
 存続期間終了後の更新の可否については、5年後に当該土地を使用する必要があれば、新たに借地権設定契約を締結するという手段もあり、更新することができないものとしても影響は少ない。
 権利の設定可能期間については、災害の規模及びその影響の大小を鑑み、必要であれば政令で延長することができるものとすべきである。
 この制度による借地権が5年以下であり、事業用借地権(借地借家法第23条)と比較してさらに短期であることから、期間満了時の紛争を予防する観点及び同法第23条第3項との均衡の観点から、設定契約の締結は公正証書に限定すべきであるが、災害時の混乱を考慮すると公証人役場の機能が失われている場合も想定されるので、被災者にとって過度の負担とならないような方策を検討すべきである。
 なお、被災地の復興のためには、この「被災地一時使用借地権」が当事者双方に使いやすい方法であるだけでなく、災害時の混乱を考慮すると、取引の安全を確保するための公示機能も重視すべきであるので、設定登記をその効力発生要件とすることも検討すべきと考える。さらに、登記所の機能が失われる場合も想定し、管轄について柔軟に対応できる仕組みを構築すること、及び土地に付着した担保権等に対抗することができるものとすることも併せて検討すべきと考える。
(乙案について)
 乙案を支持しつつ借地借家法第25条の一時使用借地権を活用するという意見もある。その場合は、裁判例で認められている「仮設建築物(バラック)」(最判昭40.2.23東高民時報16-2-31、東京地判昭58.2.16判タ498-121)等に加え、「仮設住宅」や「仮設店舗」等の被災地における暫定的な土地利用に不可欠な使用目的に関しては、これらを列挙したうえで、「これと異なる特約のない限り借地借家法第25条の一時使用目的とみなす」旨の規律を設けるなどして、同借地権の有効活用を考えるべきである。現行の取扱いでは、同借地権は借地権設定登記にあたって設定目的を「臨時建物所有」と記載して登記することができる(民事局長通達平4.7.7民3第3930号)ことから、上記のような「みなし一時使用目的」に関しても、同様の借地権設定登記を行うことを奨励し、後日の紛争回避に努めることが必要となる。

第3 借地権保護等の規律
1 借地権の対抗力
 借地権の対抗力の特例に関する規律(現行法第10条)を見直し,以下の制度を設けるものとする。 
① 土地の上に借地権者が登記されている建物を所有し,これをもって借地権を第三者に対抗することができる場合において,政令で定める災害により建物の滅失があったときは,政令の施行の日から起算して〔6か月〕を経過する日までは,当該借地権は,なお第三者に対抗することができるものとする。 
② ①に規定する場合において,借地権者が,滅失した建物を特定するために必要な事項及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときも,当該借地権は,なお第三者に対抗することができるものとする。ただし,政令の施行の日から〔3年/5年〕を経過した後にあっては,その前に建物を新たに築造し,かつ,その建物につき登記した場合に限るものとする。

(意見)
①について
 借地権に対抗力を与える制度を創設することについて賛成する。ただし、この場合は、対抗できる期間は6か月ではなく1年とすべきである。
②について
 掲示により借地権に対抗力を与える制度を創設することについて賛成する。ただし、掲示により対抗できる期間は政令施行の日から5年とすべきである。
 なお、上記①及び②の制度と併存して、災害前に対抗力を備えていた借地権に関しては、②の期間内に限り、借地契約に借地権設定登記の特約があるものとみなす旨の制度の創設を検討すべきである。
(理由)
 被災直後は、借地権者が滅失建物特定のための必要事項等を掲示することが困難な状況にある可能性が高く、一定の期間は掲示を要せずに対抗力を認めることが必要である。しかし、一方で、現行法第10条のように5年間もの期間にわたり掲示なくして借地権が対抗力を有するとすると、取引の安全を害し、迅速な復興にも支障をきたすおそれがある。
 そこで、現行法第10条の期間を短期間に限定することもやむを得ないと考える。ただし、その期間については、災害時の混乱を考慮して1年にすべきである。
 ②の掲示による対抗力の付与についてであるが、担当者素案では、借地借家法第10条第2項とのバランスを考慮して3年又は5年としている。
 東日本大震災のケースをみれば明らかなように、大規模災害においては、復興計画との関係で建物の建築が制限される場合や、建物を築造する資力の確保が困難である等の事情によって、新たな建物が築造されるに至るには相当な期間が必要である。復興計画との関係で強いられた建物の建築制限が撤廃され、次に借地権者が将来の土地の利用計画を定め、ようやく建物を築造するまでに、5年程度の期間が必要であると思われる。
 また、掲示については、長期間にわたり被災者に掲示が損壊していないかを確認させることは酷であること、そもそもガレキの散乱により掲示が困難な場合もありうること、さらにあまりに長期間にわたって掲示による借地権の対抗力を維持させると、その掲示の損壊を回避するために復興作業に支障が生じる可能性があることなど、様々な問題点や障害があるといわざるを得ない。
 借地権の対抗力について考えるに、そもそもこのような問題が生じるのは、罹災都市法が適用されるような大規模災害においては、火災や津波によって多くの建物が滅失してしまうことが想定されるにもかかわらず、現実的には借地権の対抗要件が借地借家法第10条第1項の建物登記となっているからである。
 そこで、②の掲示による対抗力の付与と併存して、災害前に対抗力を備えていた借地権に関しては、②の期間内に限り、借地契約に借地権設定登記の特約があるものとみなす旨の制度を設けるべきであると考える。この制度により、掲示の損壊による対抗力の消滅の危険を回避できるとともに、建物の再築が困難な借地権者を保護することができるうえ、土地の登記簿に借地権の存在が公示されることにより取引の安全をも図ることができる。加えて、仮に借地権設定者が行方不明の場合であっても、借地権者に登記請求権が認められるため、借地権者が単独で保全仮登記(民事保全法第53条第2項)を行い、事実上の対抗力を確保するとともに、取引に入る者にとっても保全仮登記により借地権の存在を了知しうるので、取引の安全にも資すると考える。
 借地権設定者にとっては、有効に存在する借地権を登記することにより、例えば定期借地権である場合はその旨を明確に公示し後日の紛争を未然に防止できるというメリットもあるが、設定登記及び抹消登記申請手続を行うことの負担等への抵抗感もあることが予想される。したがって、借地権者の保護と借地権設定者の事情等の両者のバランスを考慮して制度設計を検討すべきである。

2 借地権の存続期間の延長
 借地権の存続期間の延長に関する規律(現行法第11条)は,廃止するものとする。

(意見)
 借地権の存続期間の延長に関する現行法第11条を廃止することについて反対する。ただし、同条の借地権の残存期間については、5年未満のときは、これを5年とするよう改正すべきである。
(理由)
 補足説明によると、借地借家法第7条の規律を適用すべきであるとして、現行法第11条を廃止すべきとしている。しかし、借地借家法第7条の適用を受けるためには、借地権の存続期間中に建物を再築する必要があり、そのためには再築に必要な期間を確保すべきである。
 借地権の存続を望まない借地権者にとって存続期間が延長されることは、賃料の支払いを継続するという負担が課されることになるとの批判はあるが、第3の4の地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる旨の制度を併せて設けることにより、不利益は回避できることとなる。
 大規模災害の場合においては、第2及び第3の1の理由中で述べたとおり概ね5年の期間内には建物を再築することが可能であると考えられるので、存続期間の延長は5年が妥当である。

3 借地権設定者の催告による借地権の消滅
 借地権設定者の催告による借地権の消滅に関する規律(現行法第12条)は,廃止するものとする。
(注)現行法第13条は,借地権設定者の催告による借地権の消滅の制度を前提とする規律であるので,この制度の廃止に伴い,同条も廃止することとなる。

(意見)
 借地権設定者の催告による借地権の消滅に関する現行法第12条を廃止すること については賛成である。
(理由)
 補足説明のとおりと考える。

4 借地権者による土地の賃貸借の解約等
 政令で定める災害により建物が滅失した場合においては,政令の施行の日から起算して〔1年〕を経過する日までの間は,その建物の敷地である土地の借地権者は,地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる旨の制度を設けるものとする。
(注)土地の賃貸借の解約の申入れ等があった場合に,借地権がいつ消滅するものとするか(当該申入れ等があった日に消滅するものとするか,又は一定期間を経過することによって消滅するものとするか)について,なお検討するものとする。

(意見)
 借地権者による土地の賃借権の解約等に関する制度の創設について賛成する。申入れをすることができる期間を1年とすることについても賛成する。
(理由)
 制度創設の理由については、概ね補足説明のとおりと考える。
 第3の1で、掲示を要せずに借地権の対抗力を認める期間を1年とし、掲示による対抗力の維持の期間を5年とすべきとした。それは、借地権者が借地権を引き続き継続させるか否かを判断するための期間は概ね1年程度でよいであろうということ、そして借地権を継続させたいと判断した場合には掲示によって対抗力を維持しておき、新しい建物を建築するまでの期間は概ね5年程度でよいであろうという趣旨である。賃借権の解約等に関する申入れ期間は、すなわち借地権を引き続き継続させるか否かを判断するための期間である。したがって、その期間は第2及び第3の1に述べたところと平仄を合わせて1年とすべきである。
 また、借地権者は、本来、借地権の存続期間は地代を負担すべきであり、その負担は自身も想定しているものであるところ、大規模災害という非常事態により特別に解約の申入れができる制度を認めるものであるから、この期間を長期間認めるのは相当ではなく1年が妥当と考える。
 借地権の消滅の時期については、借地権者に特に解約権を認めるのであれば、申入れと同時に消滅するとすべきである。

5 土地の賃借権の譲渡又は転貸
 政令で定める災害により建物が滅失した場合について,以下の制度を設けるものとする。
① 借地権者が政令で定める災害により滅失した建物の敷地である土地の賃借権を第三者に譲渡しようとする場合又はその土地を第三者に転貸しようとする場合において,その第三者が賃借権を取得し,又は転借しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず,借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは,裁判所は,借地権者の申立てにより,借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができるものとする。この場合において,当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは,賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ,又はその許可を財産上の給付に係らしめることができるものとする。
② ①の申立ては,政令の施行の日から起算して〔1年〕を経過する日までにしなければならないものとする。

(意見)
①について
 土地の賃借権の譲渡又は転貸に関する制度の創設について賛成する。
②について
 ①の申立て期間を1年とすることについて賛成する。
(理由)
 制度創設の理由については、概ね補足説明のとおりと考える。
 譲渡または転貸をするか否かの判断は、借地権を継続させるか否かの判断の一態様であると考えられることから、前記4のとおりその申立期間も1年とすべきである。

第4 優先借家権制度の在り方等
【甲案】 優先借家権制度(現行法第14条)は廃止し,これに代わる特段の規律を設けないものとする。 
【乙案】 優先借家権制度に代わり,以下の①から③までのような制度(借家人事前交渉制度(仮称))の一つ又は複数を設けるものとする。
 政令で定める災害により建物が滅失した場合において,建物が滅失した当時における建物の賃貸人が,建物の敷地である土地の上に賃貸する目的で建物を新たに築造するときについて,
① 賃貸募集前の通知
 政令の施行の日から起算して〔3年〕を経過する日までの間に賃借人の募集を行う場合には,建物が滅失した当時における建物の賃貸人は,賃借人の募集に先立ち,建物が滅失した当時建物を使用していた賃借人(一時使用のための賃借をしていた者を除く。)のうち知れている者に対し,その旨を通知しなければならないものとする。
② 誠実交渉義務
 建物が滅失した当時建物を使用していた賃借人(一時使用のための賃借をしていた者を除く。)から,政令の施行の日から起算して〔3年〕を経過する日までの間に新たに築造する建物につき賃借の申出があった場合には,建物が滅失した当時における建物の賃貸人は,信義に従い誠実に交渉しなければならないものとする。
③ 第三者への賃貸禁止
 ②に規定する場合には,当該申出があった日から〔2週間〕の間は,建物が滅失した当時における建物の賃貸人は,正当な理由がない限り,当該申出があった部分を建物が滅失した当時建物を使用していた賃借人(一時使用のための賃借をしていた者を除く。)以外の第三者に賃貸してはならないものとする。
(注1)①から③までのうち,一つの制度のみを設けるものとするか,又は複数の制度を組み合わせるものとするかについて,なお検討するものとする。
(注2)①の通知の際,新たに築造する建物の概要や賃料その他の借家条件を示さなければならないものとするかどうか等について,なお検討するものとする。
(注3)②の誠実交渉義務の内容をどのように考えるか,その内容の全部又は一部を条文上明示するかどうか等について,なお検討するものとする。
(注4)③の制度の具体的な在り方(個別に申出を待ち,申出があった部分のみの賃貸を禁止するものとするか,又は新たに築造する建物の全体について,一律に一定期間は第三者への賃貸を禁止するものとするかなど)について,なお検討するものとする。

(意見)
 【甲案】に賛成する
(理由)
 災害発生時における短期的な居住施設の確保については、災害救助法による仮設住宅の建設や公営住宅等の公的支援もあり、建物賃借人の保護や地域コミュニティの再建等については、政策課題としてとらえるべきである。

第5 貸借条件の変更命令制度
 貸借条件の変更命令制度(現行法第17条)は,廃止するものとする。
(注)現行法第15条,第16条,第18条から第25条までは,優先借地権制度,借地権優先譲受権制度,優先借家権制度又は貸借条件の変更命令制度を前提とする規律であるので,これらの制度の廃止に伴い,上記各条も廃止することとなる。

(意見)
 貸借条件の変更命令制度を廃止することについて賛成する。
(理由)
 補足説明のとおりと考える。

第6 見直し後の新たな制度の適用の在り方
1 政令による災害の指定
 見直し後の新たな制度を適用する政令で定める災害は,大規模な火災,震災,風水害その他の災害とするものとする。
2 政令による地区の指定
 見直し後の新たな制度は,政令で指定する地区に対し適用するものとする。
3 政令による制度の指定
 見直し後の新たな制度の適用に当たっては,政令で一部の制度を指定してこれを適用することができるものとする。その指定の後に他の制度を適用する必要が生じたときは,当該他の制度を政令で追加して指定すること(制度の分割適用)ができるものとする。

(意見)
1について
 政令による災害の指定について賛成する。
2について
 政令による地区の指定について賛成する。
3について
 政令による制度の指定について、政令で一部の制度を指定して適用すること及び他の制度を政令で追加して指定することについて賛成するが、その場合は指定地区ごとに適用される制度が異ならないようにすべきである。
(理由)
 1、2、3とも補足説明のとおりと考える。
 なお、指定地区ごとに適用される制度が異なるとすれば、地区によって適用される制度に差が生じ、被災者が不平等な扱いを受ける可能性が生じるので、指定地区全部に対し同一の制度を適用すべきである。

【その他の意見】

(意見)
 罹災都市法の適用については、「建物の滅失」について、定義付けをするべきである。
(理由)
 司法書士は、災害発生時に、避難場所や仮設住宅をはじめ様々な場所で積極的に被災者からの法律相談を受けている。被災者は、個人的にも復興を強く望んでいることから、公的な復興支援としての助成に関する相談も多い。その中でも、「災害に係る住家の被害認定基準運用指針(以下「被害認定基準」という。)」に関する相談は多いのが実情である。
 今回の罹災都市法の改正の担当者素案には取り上げられていないが、「建物の滅失」の概念に関しては、社会一般に定着しているとはいえない。
 「建物の滅失」について、最高裁昭和38年5月21日判決では、「滅失した場合」とは、「建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取毀しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を指すものと解するのが相当である。」とされ、火災による建物の焼失や地震・台風・水害による建物の倒壊の他に借主が再築のために建物を取壊す場合も含まれるとされている。罹災都市法では、「災害のため滅失した建物」とされているので、再築のために任意的に取壊す場合は該当しないことは明らかと考えられるが、その場合でも、避難経路の確保を目的として通路を拡充するために緊急的に取壊した場合はどうなるのか疑義が残る。
 また、最高裁昭和42年6月22日判決では、賃貸借の終了原因である建物の滅失の認定の判断について、本件は類焼による場合ではあるが、「賃貸借の目的となっている主要な部分が焼失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否かによってきめるべきであり、それには消失した部分の修復が通常の費用では不可能と認められるかどうかも斟酌すべきである。」とされ、賃貸建物の修繕が不可能な場合には勿論、修繕するより新築した方が経済的であるとされる場合でも滅失と認定されるとしている。例えば、賃貸アパートが水害等で一階部分の全室の窓及び壁の大部分が流され骨組みだけとなり、2階部分は無傷で階段部分は補修可能で2階の賃借人は居住に問題がない場合でも、修繕するより新築した方が経済的である場合には、「建物の滅失」に該当するか否かについても疑義が残る。
 災害時には、被害認定基準により早い段階で「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」及び「半壊に至らない(一部損壊)」の4段階の分類の判定がなされ、社会一般的にその分類になじみがあると考えられる。したがって、被災者にとっては、罹災都市法における「滅失」と被害認定基準の「全壊」及び「半壊」等との関係が大きな関心事となる。
 被害認定基準に関する平成21年6月内閣府作成の文書によると、「全壊」とは、「住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの、すなわち、住家全部が倒壊、流失、埋没、消失したもの、又は住家の損壊が甚だしく、修繕により元通りに再使用することが困難なもので、具体的には、住家の損壊、消失若しくは流失した部分の床面積がその住家の延床面積の70%以上に達した程度のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が50%以上に達した程度のものとする。」とされている。
 「滅失」と「全壊」及び「半壊」等の概念が異なる場合は、被災者だけでなく借地権設定者にとっても大きな混乱を生ぜしめることとなる。したがって、「建物の滅失」の明確な概念あるいは定義付けを示す必要があると考える。
 なお、担当者素案第3の4の借地権者による土地の賃貸借の解約等の制度及び借家権者による建物の賃貸借の解約の申入れ制度においては、「建物の滅失」の概念に東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により建物が使用できないような場合をも含めるべきである。

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