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意見書等

2018年(平成30年)10月05日

文部科学省高等教育局私学部私学行政課 御中

「学校法人制度の改善方策について(案)」に対する意見

日本司法書士会連合会

会長 今川 嘉典

 
標記に関して,当連合会は,次のとおり意見を申し述べる。
 
1.評議員会の機能強化について

【意見】

 評議員会の位置付けを単なる諮問機関ではなく,一般財団法人や社会福祉法人における評議員会と同様に,理事及び理事会を監督する機関とすべきである。

【理由】

 今回の改善方策の趣旨として,公益法人制度改革等に伴うガバナンス構造の抜本的な見直しを踏まえた学校法人のガバナンス強化が謳われている。そうであれば,評議員会の位置付けを単なる諮問機関ではなく,一般財団法人や社会福祉法人における評議員会と同様に,理事及び理事会を監督する機関と位置付けるべきである。

 評議員会については,理事会の意思決定に対するチェックや,理事の職務執行に対して監督する等の機能が期待される。方策(案)においては,公益法人や社会福祉法人等の制度と異なり,学校法人の評議員会について諮問機関としての位置付けを維持すべきとされているが,ガバナンス強化の観点からは,評議員会を議決機関として位置付けるとともに,理事と評議員の兼務を見直すべきである。

 

2.登記事項について

【意見】

 学校法人が役員等に関して登記しなければならない事項として,現行の「代表権を有する者の氏名,住所及び資格」「代表権の範囲又は制限に関する定め」に加えて,「理事,監事及び評議員の氏名」を登記事項にすべきである。

【理由】

 今回の改善方策の趣旨として,公益法人制度改革等に伴うガバナンス構造の抜本的な見直しを踏まえた学校法人のガバナンス強化が謳われている。そうであれば,公益財団法人と同様に「理事,監事及び評議員の氏名」を登記事項として,一般に公示すべきであると考える。

 また,実務においても,「理事,監事及び評議員の氏名」が登記事項として公示されていないと,その証明に難がある場合が多いと思われる。例えば,理事会議事録や評議員会議事録の提出を受けた場合に,出席者として記載され,又は議事録の末尾に記名押印をした理事,監事又は評議員の氏名等の真正を検証することが困難である。

 例えば,今回の方策により,理事の利益相反取引に関して,理事会の承認事項とされる場合には,不動産登記における理事と学校法人との利益相反取引に関する申請において理事会議事録が添付書面となる場合があるが,この場合も理事会議事録に記名押印した理事及び監事が真に当該学校法人の理事及び監事であることの証明に難があるという問題が生じる。このような問題を解消するためにも,「理事,監事及び評議員の氏名」を登記事項として公示すべきである。

 また,情報公開の推進の観点からも重要であると考える。

 

3.役員の任期について

【意見】

 学校法人の役員の任期を法定すべきである。

【理由】

 学校法人においては,当該学校法人の設置する私立学校の校長(学長及び園長を含む。以下同じ。)は,当然に理事の地位に就くものとされている(私立学校法第38条第1項第1号)。

 学校法人の理事の任期については,法律の定めはないが,寄附行為において,校長以外の理事については任期を定めるのが一般的である。校長職にある理事については,校長職にある限り,理事の地位に在り続け,任期がないものである。

 このような場合において,校長職にある理事が理事長であるとき,理事長として退任事由が生じず,かつ,理事として退任事由が生じないのであれば,理事長の変更の登記はする必要がない,ということになる。

 しかし,今般の学校法人制度の見直しがガバナンス強化を図る趣旨であれば,役員の任期を法定し,理事長についても,定期的に改選の手続が行われるべきである。

 

4.理事長の職務を代理する理事に関する登記について

【意見】

学校法人の理事長が欠けた場合の「理事長の職務を代理する理事に関する登記をすることができない問題を解決すべきである。

【理由】

 寄附行為に理事長の職務代理に関する規定がある場合,理事長に事故があるとき(疾病による職務遂行困難等)や理事長が欠けたとき(死亡等)には,寄附行為の規定により,理事のうち理事長の職務を代理することが定められた者が理事長の行うべき職務を行うこととなる(私立学校法第37条第2項)。

 学校法人の代表権を有する者の氏名,住所及び資格は,登記事項(組合等登記令第2条第2項第4号)であって,登記の後でなければ,これをもつて第三者に対抗することができない(私立学校法第28条第2項)ところ,「理事長の職務を代理する理事」は,私立学校法第37条第2項及び寄附行為の定めに基づいて代表権を有する理事である。

 また,理事長が欠けた場合に「理事長の職務を代理する理事」が学校法人を代表して第三者と取引行為等を行うときは,登記上代表権限が公示されていることが期待される。

 しかしながら,登記手続上の問題で,理事長の辞任,死亡等による退任の登記と同時に,「理事長の職務を代理する理事」の氏名,住所及び資格並びに代表権の範囲を登記することはできないようである。

 この場合,退任した理事長の退任の登記は,後任の理事長の就任の登記と同時に行うことになる。

 このように,「理事長の職務を代理する理事」を登記できない状態又は「退任した理事長の退任の登記を留保する」状態は,好ましくない。

 商業・法人登記制度は,商号,会社等に係る信用の維持を図り,かつ,取引の安全と円滑に資することを目的とする(商業登記法第1条)のであるから,速やかに,登記手続上の問題がクリアされるべきである。

 以上のとおりであるから,「理事長の職務を代理する理事」制度が維持されるのであれば,登記により公示することが可能となるようにすべきである。

 

5.解散に際しての清算人について

【意見】

 解散に際して,原則として理事全員が清算人となる規定を改め,他の方法によって選任された者がある場合には,その者のみが清算人となることを許容すべきである。

【理由】

 学校法人には,役員として,理事5人以上を置かなければならない(私立学校法第35条第1項)。理事のうち1人は,寄附行為の定めるところにより,理事長となる(同条第2項)。そして,寄附行為に別段の定め(同法第37条第2項)がなければ,理事長のみが学校法人を代表し,その業務を総理する(同条第1項)。登記される役員は,原則として,理事長のみである。

 しかし,学校法人が解散したときは,破産手続開始の決定による解散の場合を除き,理事がその清算人となる(同法第50条の4本文)。寄附行為に別段の定めがあるときは,この限りでない(同条ただし書)とされているが,逆に言えば,寄附行為に別段の定めがない限り,解散時の理事全員が清算人となる。清算人は,各自学校法人を代表するので,清算人全員の氏名及び住所が登記事項となる(組合等登記令第2条第4号)。

 元々,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が施行される前の私立学校法第58条は,同整備法施行前民法第74条を準用していたので,評議員会において他人を選任することができたはずである。

 しかし,同整備法の施行により,私立学校法第58条が削除され,同法第50条の4が追加されたことから,寄附行為に別段の定めがない限り(通常は,ない。),評議員会において他人を選任することができず,解散時の理事全員が清算人となってしまう。

 結果として,清算人の登記の申請に際して,清算人となる者に関しては,「その者が解散時の理事であったことを証する書面」(解散時の理事全員の氏名及び住所を列挙する。)を添付する必要があることになる(「私立学校法の一部を改正する法律の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」(平成17年3月3日法務省民商第496号民事局商事課長通知))。

 NPO法人においては,理事が各自NPO法人を代表するが,清算人に関しては,整備法施行前特定非営利活動促進法第40条は,整備法施行前私立学校法第58条と同様に,同整備法施行前民法第74条を準用していた。同整備法施行により第40条は削除され,第31条の5が追加されたが,同条ただし書は,「定款に別段の定めがあるとき,又は社員総会において理事以外の者を選任したときは,この限りでない」と規定しており,社員総会において理事以外の者を清算人に選任することができる。

 比較するに,私立学校法第50条の4ただし書の立案趣旨が不明である。解散の決定に際して,理事の同意又は評議員会の議決によって選任された者がある場合には,その者のみが清算人となることを許容すべきである。

以上

 
「学校法人制度の改善方策について(案)」に対する意見

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