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意見書等

2010年(平成22年)09月24日

法務省民事局参事官室 御中

「非訟事件手続法に関する中間試案」に対する意見

日本司法書士会連合会

 

 

標記中間試案について、以下のとおり意見を述べる。

 

 

1.当事者の役割について
(第1総則-1裁判所及び当事者の責務)
【意見の趣旨】
非訟事件手続法に「当事者の役割」を新設することには賛成するが、あくまでも努力規定であることを明記し、当事者に資料提出義務を課したり、資料を提出しない自由を否定するかのような解釈を生まないような文言とすべきである。

 

【意見の理由】
(1)職権探知主義を採用する非訟事件の手続においても、常に裁判所の職権による裁判資料の収集よりも、当事者による資料の収集・提出を期待する方が合理的な場合が多いということは理解できる。
(2)しかしながら、職権探知主義の下で、非訟事件の手続における当事者の責務が強調されると、責務を怠ったことを理由に審理が打ち切られるなど、国民の権利が侵害される可能性がある。
(3)職権探知主義の下で、裁判所がどこまで真実追求に向けた裁判資料を収集すべきかという問題であるが、一概に非訟事件手続といっても、相手方がなく争訟性のないものから、借地非訟のように争訟性の高いものまで様々である。
(4)特に相手方がある場合において、一方当事者の資料の不提出が相手方や第三者の不利益になるようなときは、この規定が新設されることによって裁判所の資料収集努力が軽減されるようなことのないような規定の仕方が要求される。
(5)よって、この規定を新設するにあたっては、あくまでも努力規定であることを明記し、当事者に資料提出義務を課したり、資料を提出しない自由を否定するかのような解釈を生まないような文言とすべきである。

 

 

2.当事者等の参加について
(第1-6参加)
【意見の趣旨】
非訟事件において、当事者参加及び利害関係参加の規定を置くことには賛成する。なお、従前の当事者が当事者参加及び利害関係参加に対して異議を述べることができる規定を検討すべきである。
脱退については、脱退した当事者に対する非訟手続の効力との関係から、規定を置くべきである。

 

【意見の理由】
(1)非訟事件手続において、現行法においては、民事訴訟手続における訴訟参加の制度はないことから、当事者となる資格を有する者や利害関係人の手続保障を図る必要があるので、参加の制度を規定することには賛成する。
(2)中間試案においては、従前の当事者が当事者参加及び利害関係参加に対して異議を述べられるかどうか不明である。当事者参加及び利害関係参加により参 加人は当事者として扱われるとされている。従前の当事者からは手続上の保証として異議を述べる機会を与えることも検討すべきである。
(3)中間試案においては、利害関係参加の要件として「重大な利害を有するもの」があるが、法律上の利害関係を要件とする民事訴訟法第42条と比較し、当 事者と基本的に同様な地位が与えられることをもって、その要件を狭くしている。そして、「重大な利害を有するもの」であるか否かの判断は、裁判所の許可に よるとされている。非訟事件手続における裁判所の許可については現行実務上安定的に運用されていると考えられるが、(株主が利害関係を有する場合などのよ うに)非訟事件類型によっては明確な基準が必要とも考えられることから、個別に基準を置くことも検討すべきである。
(4)当事者となる資格を有する者が参加をすることで、当事者として扱われることと規定すれば、参加前の当事者が当事者としての地位を失うことも考えられ ることから、脱退の規定を置くべきである。脱退については、訴訟脱退のように相手方の承諾を要するとはしないで、裁判所の許可のみで足りると考える。な お、脱退した当事者について手続の効力がどこまで及ぶのかについても規定を置くべきである。

 

 

3.任意代理人について
(第1-8任意代理人)
【意見の趣旨】
本意見照会は、非訟事件手続法の改正に関するものであることは十分に認識しつつも、国民の利便性の向上の観点から、以下のとおり、これに関連する意見を申し述べる。
簡易裁判所が管轄権を有する非訟事件に関し、司法書士法第3条第1項第6号の業務を行うことができる司法書士(以下、「認定司法書士」という。)を任意代理人とすることができるようにすべきである。

 

【意見の理由】
(1)司法書士法第3条第1項第6号業務については、代理権を与えられている認定司法書士が業を行うことができる認定司法書士は代理権を与えられている。 これは、弁護士不足などにより国民の権利擁護が十分でない実態に鑑みて、司法制度改革審議会から出された「訴訟手続において、隣接法律専門職などの有する 専門性を活用する見地から、司法書士への簡易裁判所での訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じたうえで、これを付与すべきである」という 意見に基づき、平成15年4月1日に施行された改正司法書士法によって新たに司法書士業務とされたものである。そして、施行から7年が経過し、簡易裁判所 における訴訟代理業務等を通じて、特に債務整理を中心とする消費者救済事件や労働事件などで大きな成果を挙げている。
(2)よって、非訟事件手続においても、簡易裁判所が管轄権を有する事件に関しては、認定司法書士を任意代理人となる資格を有する者とする道を開くべきである。

 

 

4.非訟事件の申立ての取下げの要件について
(第2第一審の手続-8裁判によらない事件の終了-(1)非訟事件の申立ての取下げ-ア取下げの要件)
【意見の趣旨】
非訟事件の申立ての取下げの要件としては、【乙案】を採用すべきである。

 

【意見の理由】
(1)非訟事件手続において、取下げの要件を定めることは、手続が明確となるために賛成である。
(2)取下げの要件としては、中間試案において、「終局裁判があるまで」取下げることができるとする【甲案】と、「終局裁判が確定するまで」取下げること はできるが、終局裁判があった後においては、裁判所の許可を要するとする【乙案】と併記されているが、次の理由により、【乙案】を採用すべきである。
(3)非訟事件において公益性が求められることは当然ではあるが、非訟事件の申立人は事情によっては裁判の内容により、当該申立てを取下げようと考えるこ とも想定しうるところである。このようなケースにおいて、【甲案】では、裁判の結果を知った後、申立人が取下げをすることが画一的にできなくなるのに対 し、【乙案】であれば、申立人が取下げをすることも可能となる。すなわち、申立人の事情を勘案し、柔軟な対応をすることができる。非訟事件には様々な事件 類型が該当するのであるから、極力柔軟な対応が期待できる要件を採用することが妥当であると考えられる。
(4)公益性に考慮し、終局裁判がなされた後に自由な取下げを認めるべきではないという考えもあるが、【乙案】においては、終局裁判があった後に取下げるときには、裁判所の許可を要するとされているので、前述の非訟事件の特質も考慮されているものといえる。
(5)一方、裁判所の許可を要するとすると、許可の基準が不明確になるおそれがあるとの指摘もあるが、裁判所の許可を要する手続は、非訟事件手続法は勿 論、他の諸法令まで含めれば数多くあり、既に安定した運用がなされていると考えられるし、また、そうでなければならないものである。
(6)よって、【乙案】を採用するにあたっての弊害はないものと考えられる。

 

 

5.相手方がある非訟事件の特則について
(第6相手方がある非訟事件に関する特則-1相手方のある非訟事件に関する特則の要否)
【意見の趣旨】
相手方がある非訟事件に関する特則の要否については、「特段の特則を置かないもの」とする【乙案】を採用すべきである。

 

【意見の理由】
(1)非訟事件の手続の中には相手方の存在を予定しているものがあり、それについて、相手方の存在を前提に特別の手当をすることの趣旨および重要性については賛成するものである。
(2)しかしながら、非訟事件の手続基本法である非訟法に特則を置くとしても、【甲案】の(注)にあるとおり、どの事件が「相手方がある非訟事件」である のかについては、法令により個別的に定められるのであり、借地非訟事件や労働審判事件など、これら「相手方がある非訟事件」については、それぞれの法令に より手続上の相手方の存在を予定した手続が設けられている。
(3)「相手方がある非訟事件」は、法令により個別的に定まるものとすることを前提としていることから、法令で定められていない「相手方がある非訟事件」 はあり得ず、個々の法令で事件の性質等を考慮した手当てがされているのであれば、あえて一般法たる非訟法に特則を置く必要性はないものと考える。
(4)むしろ、非訟法に特則を設けたとしても結局個別の法令により修正されるのであれば、非訟法に特則を置く必要がないばかりか、かえって混乱を招くおそれもあり得る。
(5)よって、「相手方がある非訟事件」は法令により個別的に定められることを前提とするならば、非訟法に特則を置く必要はないものと思料する。

 

 

6.外国法人について
(第7民事非訟事件-3外国法人及び夫婦財産契約の登記)
【意見の趣旨】
外国法人については、別に特別法を制定すべきである。

 

【意見の理由】
外国法人は、民法第35条第1項の規定により、①国、②国の行政区画、③外国会社及び④法律又は条約の規定により認許された外国法人、の4種に分類される。
上記のうち、外国会社については、会社法に詳細な規律されており、その登記についても詳細な規定が置かれている。
よって、非訟事件手続法第3章が適用される外国法人は、上記「法律又は条約の規定により認許された外国法人」のみであるが、その登記に関しては、民法第37条と非訟事件手続法第3章とに規定が分在している形となっており、わかりづらいものとなっている。
したがって、外国法人に関する民法の規定と非訟事件手続法の規定を統合し、体系的に整理した特別法を制定すべきであると考える。
なお、「法律又は条約の規定により認許された外国法人」として考えられ得るのは、例えば外国の公益法人であるが、現に認許されている実数が極めて少ないことを考慮すれば、外国会社についての規律を統合させた「外国法人法(仮称)」を制定することも検討すべきである。

 

 

7.夫婦財産契約の登記について
(第7-3)
【意見の趣旨】
以下の2点を検討すべきである。
(1)夫婦財産契約の登記制度を廃止する。
(2)登記に関する規定を民法典に移設する。

 

【意見の理由】
夫婦財産契約について、現行民法は、対抗要件主義を採用している(民法第756条)。しかしながら、登記件数は、毎年5件程度であり、ほとんど利用され ていないのが実情である。このような実情に鑑みれば、夫婦財産契約については、登記制度を廃止して、要式行為を要求し、例えば公正証書の作成によって、夫 婦の承継人及び第三者に対抗することができるものとすることを検討すべきである。
登記制度を存続する場合には、非訟事件手続法第3章に置かれている登記に関する規定は、民法典に移設すべきである。

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