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意見書等

2011年(平成23年)12月16日

総務省自治行政局外国人住民基本台帳室 御中

「住民基本台帳法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令案」及び「住民基本台帳法施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」に対する意見書

日本司法書士会連合会

「住民基本台帳法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令案」及び「住民基本台帳法施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」に関し、以下のとおり意見を提出します。

 外国人住民票は、第一義的には在留外国人が日本における市民生活を円滑に過ごすための機能を有しなければならない。それにより外国人住民票は在留外国人住民の「利便性」に資することになる。
 その観点に立って次の諸点につき意見を述べる。

 

1 外国人登録法第4条1項の「外国人登録原票」(以下、「登録原票」という)の記載事項である①「国籍の属する国における住所又は居所」(以下、「国籍国の住所又は居所」という)(7号)、②「出生地」(8号)、③「申請に係る外国人が世帯主である場合には、世帯を構成する者(当該世帯主を除く。)の氏名、出生の年月日、国籍及び世帯主との続柄」(18号)「本邦にある父母及び配偶者(申請に係る外国人が世帯主である場合には、その世帯を構成する者である父母及び配偶者を除く。)の氏名、出生の年月日及び国籍」(19号)(以下、18号と19号を合わせて、「家族事項」という)を、外国人住民票の記載事項とすべきである。

 その理由は、下記の通りである。
①「国籍国の住所又は居所」は、本国に備置又は記録される身分登録簿にアクセスする機能を有している。
  外国人の身分登録簿は本国に備置されるのが原則である。それら身分登録簿にアクセスするには「氏名」「生年月日」「男女の別」「国籍」の指標だけでは不可能であり、備置されている本国の場所的指標が必要である。特に在留外国人の多くを占める「中国」人や「韓国・朝鮮」人(「中国」687,156人、「韓国・朝鮮」 565,989人)の身分登録記録簿といえる「戸口簿」「戸籍」「家族関係登録簿」が備置されている場所は渉外的家族関係の把握には必須の事項である。
②「国籍国の住所又は居所」や「出生地」は、本国法決定の際の一つの指標である。
  日本の渉外的法律関係を規律する「法の適用に関する通則法」(以下、「法適用通則法」という)では、渉外的家族関係の準拠法は原則的に「本国法」を採用しているが、在留外国人の多くを占める「中国」人や「韓国・朝鮮」人の本国となる国家は国際私法上「分裂国家」といわれる。そこで、「中国」人や「韓国・朝鮮」人の本国法がいずれになるのか(「中国」人であれば「中華人民共和国」法か「中華民国」法かであり、「韓国・朝鮮」人であれば「大韓民国」法か「朝鮮民主主義人民共和国」法か)を決定する「密接関係地法」(法適用通則法38条1項後段、同条3項の「密接関係地法」)の一つの判断材料になる。
  また、アメリカ合衆国などの様に本国が複数の法域である地域的不統一法国の本国法決定をする際に「規則」がないときの「密接関係地法」(法適用通則法38条3項)を決定する際の一つの判断材料になる。
③「出生地」は、出生届等を取り寄せる指標である。
  在留外国人は本国に居住していないので、身分変動事項(婚姻・離婚・養子縁組・離縁等)が自動的に本国に備置される身分登録簿に直接反映されることはない。一定のタイムラグが生じることが通例である。また、国によっては本国の一定の場所に身分変動事項を連続的に記録し備置する方法を採用していない国も少なくない。その際に出生届等により、親子関係の成立の有無を確かめることは貴重な情報になる。日本国内か国外かを問わず「出生地」の情報は欠くべからざるものである。
④「家族事項」は、家族関係を推認させる情報である。
  在留外国人は本国に居住していないので、身分変動事項(婚姻・離婚・養子縁組・離縁等)が自動的に本国に備置される身分登録簿に直接反映されることはない。一定のタイムラグが生じることが通例である。また、国によっては本国の一定の場所に身分変動事項を連続的に記録し備置する方法を採用していない国も少なくない。その場合に、世帯主である場合は「世帯を構成する者の氏名、出生の年月日、国籍及び世帯主との続柄」、日本にいる「父母及び配偶者の氏名、出生の年月日及び国籍」は家族関係を推認させる貴重な情報である。
  そこで、外国人住民票に限って住基法7条14号の「政令で定める事項」に「国籍国の住所又は居所」「出生地」「家族事項」を加えることとし、標記の住基令案30条の25に加えるべきである。
 

2 「国籍国の住所又は居所」「出生地」「家族事項」は「仮住民票」作成時に「登録原票」から移記すべきである。 

 1で述べたように、上記事項は外国人住民票の記載事項とすべきなので、登録原票によって仮住民票を作成するときはそれらを移記するとともに、当事者に通知するものとする(改正住基法附則3条5項)。
 

3 氏名欄の「氏名」の文字はローマ字(アルファベット)で表記し、本人の希望があれば「本国文字」表記、「漢字」表記、「本国文字・漢字のカタカナ読み」表記を併記する。

 外国人住民票の氏名の表記は、在留カード等(特別永住者証明書含む)の氏名に倣うとされているからか、標記の意見募集では触れられていない。
 一方、入管法規則案(2011.10.27意見募集案)19条の6第1項、入管特例法規則案(2011.10.27意見募集案)4条では、「ローマ字により表記する」とされている。
 本来、在留カード等や外国人住民票の氏名は、本国文字による表記が原則であろう。その理由とは、①氏名権は人格権の一種であり、氏名は国籍を問わず人のアイデンティティ保持の重要な要素であること、②渉外的氏名の準拠法は人格権の問題として本国法とすべき見解が大勢であり、日本の戸籍実務も本国法を準拠法としていること、③氏名が本国文字で表記されることにより、国籍国の身分登録簿にアクセスする際の指標になること、④氏名の本国文字の表記は、旅券でその表記確認が容易であること、からである。しかしながら、入国管理局の在留カード等作成の事務や市町村窓口の事務手続を考慮すれば、ローマ字(アルファベット)による表記に統一せざるを得ないであろう。
 ただし、本人の希望があれば、「本国文字」「漢字」「本国文字・漢字のカタカナ読み」を氏名欄に併記すべきである。本国文字を併記すべき理由は、上記①②③④の理由による。また、漢字・本国文字の「カタカナ読み」併記の必要性は、外国人の氏名は日本の各種公簿(戸籍、登記、登録など)には漢字やカタカナだけで表記されるので、各種公簿と照合して識別・同定が容易であることが、その理由である。ちなみに、この場合の「本国文字」とは、「中国」人であれば「簡体字」(繁体字)であり、「韓国・朝鮮」人であれば、ハングル文字であり、「ブラジル」人であれば、ポルトガル語文字である。
 なお、入管法規則案(2011.10.27意見募集案)19条の7、入管特例法規則案(2011.10.27意見募集案)5条では、「申出があったときは」漢字氏名を表記できるとあるが、この場合の「漢字」は「中国」人であれば「簡体字」(繁体字)を含むとすべきである。
 

4 本人の希望があれば、氏名欄に通称名を併記すべきである。

 標記の意見募集で示されている住基法施行令案30条の26では、住基法7条14号の「政令で定める事項」に「通称」と「通称の記載と削除に関する事」を加えること、通称とは「氏名以外の呼称であって、国内における社会生活上通用していることその他の事由により居住関係の公証のため住民票に記載することが必要であると認められるもの」であり、外国人住民票に通称の記載を求めるものは申出書を提出しその記載が必要であることを証する資料を提示しなければならないこと、また転出証明書を添付して転入届があり転出証明書に通称が記載されていたときなどは市町村長は通称を外国人住民票に記載しなければならないこと、通称を記載したときは通称を記載した市町村名および年月日を記載しなければならないこと、などが示されている。
 また、住基法施行規則案45条では、通称の申出書には「氏名、住所並びに住民票コード又は出生の年月日及び男女の別」と「記載されるべき呼称が国内における社会生活上通用していることその他の居住関係の公証のために住民票に記載されることが必要であると認められる事由の説明」を求めている。
 通称名の使用は、歴史的な要因と日本社会の偏見などにより「韓国・朝鮮」人「中国」人に加えて日系二世・三世に許容されて来たところである。そこで、日本の各種公簿(登記、登録など)で一般化していることや外国人の識別・同定にも欠かせないので、本人の希望を前提に通称名の氏名欄への併記は賛成である。
 その場合に、婚姻・離婚や養子縁組・離縁などにより、配偶者や親の通称名を使用することは当然に許容すべきであるが、その他の理由による通称名の使用は厳格に対処すべきである。
 

5 「登録原票」の氏名欄に記載されている事項は、すべて「登録原票」から「仮住民票」に移記し、本人に通知した上で、法施行後に当事者の申出により変更すべきである。

 現行の「登録原票」では、原則として、漢字圏の者の氏名欄は漢字表記で行い、それ以外の者はローマ字(英字)で表記される。また、通称名も併記されている。それらはすでに在留外国人の社会生活の営みに欠かせない。本人の識別・同定にも必要不可欠である。そこで、「登録原票」の「氏名」欄に表記されているすべての事項は、「基準日」(住基法附則3条1項)に「仮住民票」にすべて移記し、本人に通知すべきである(同法附則3条5項)。その上で、法施行後に本人の希望や申出を踏まえて対処すべきである。
 

6 「仮住民票」の「転入をした年月日」「前住所」欄を空欄とする運用は撤回し、「登録原票」に記載されている「前居住地」とその変更年月日を移記し、法施行時の「外国人住民票」に記載すべきである。

 現在、「仮住民票」の「転入をした年月日」「前住所」欄を空欄とする運用が検討されているようである。しかし、在留外国人が社会生活を営む上で住所の履歴は欠かせないばかりか、「登録原票」の所在地でもあった「前住所」の記録はそれら記録を辿る際にも重要な手掛かりとなる。「登録原票」の「居住地」が「住所」の概念と異なるとか、「住基法」施行により「住所」が決定されたとの見解は、在留外国人の生活実態とはかけ離れた議論である。空欄とする運用は撤回し、「登録原票」に記載されている「前居住地」とその変更年月日を移記し、法施行時の「外国人住民票」に記載すべきである。
 

 7 消除又は改製された「外国人住民票」の保存期間は、消除又は改製された日から80年以上とすべきである。

 現行の住基令34条では、消除又は改製された住民票の保存期間は5年間となっている。
 1で述べたように、在留外国人の身分関係が本国の身分登録簿に直ちに反映されることがないばかりか、氏名欄に記載される通称名や住所の変遷などは本国の身分登録簿の記載事項ではない。「外国人住民票」のそれらの記載が外国人の識別や同定を証する唯一の記録になるといっても過言ではない。今日の長寿高齢化社会の到来は、在留外国人とて同様である。そこで、住基令34条2項の「在外者等」の保存期間の80年に準じて保存期間を80年以上とすべきである。
  

8 法務省に送付された「登録原票」の保存期間を150年とすべきである。

 外国人登録法は法施行時に入管法等改正法4条で廃止され、「市町村の長は、施行日の前日において市町村の事務所に備えている登録原票を施行日以後速やかに、法務大臣に送付しなければならない」(同法附則33条)。登録原票にあった膨大な在留外国人の記録は法務省で保管されることになる。法施行後は「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第58号)12条で定める開示手続によってそれら情報を取得することになる。
 法務省に送付された「登録原票」の保存期間は30年といわれるが、「登録原票」が在留外国人の身分情報や住所・氏名の履歴等を記録する重要な帳簿であるとの認識の下に、戸籍法規則5条4項の150年保存(平成22年法務省令第22号)に準じて、保存期間を150年とすべきである。
 

9 「外国人住民票」の記載事項の開示については、記載事項を再度精査して原則非開示とすべき事項を明定すべきである。

 「外国人住民票」の記載事項には、在留資格・在留期間や在留カード等(特別永住者証明書を含む)の番号、それと上記1で述べた「国籍国の住所又は居所」「出生地」「家族事項」は在留外国人の私的な身分情報である。そこで、上に述べた事項に限るかも含めて、どの記載事項を原則非開示とするか、非開示とした場合に本人の許諾がある場合に限るか、また、記載事項によっては、現行のとおり弁護士や簡裁訴訟等代理権を有する司法書士等に限るのかなど、その方策を再度精査する必要がある。

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