日本司法書士会連合会について 情報公開

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意見書等

2012年(平成24年)01月31日

法務省民事局参事官室 御中

「会社法制の見直しに関する中間試案」に関する意見書

日本司法書士会連合会
〒160-0003
新宿区四谷本塩町4番37号
Tel 03-3359-4171
Fax 03-3359-4175
jimukyoku@nisshiren.jp

 標記について、以下のとおり意見を述べる。

第1部 企業統治の在り方

第1 取締役会の監督機能
1 社外取締役の選任の義務付け
【意見】
B案に賛成である。
【理由】社外取締役が果たすべき、取締役会の監督機能を考えると、一定規模の株式会社においては、一人以上の社外取締役の選任を義務付けるべきである。その場合、社外取締役が監督機能を果たすべき会社は、資本金の額が一定額以上という会社ではなく、不特定多数の株主がいる会社になろう。そうであれば、金融商品取引法第24条1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない会社が当該会社に該当するといえる。
 金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において、一人以上の社外取締役の選任を義務付けるものとするとしても、社外取締役が存在していることが公示されていなければ、意味がないことから社外取締役である旨の登記を登記することも併せて義務付けるべきである。現状、社外取締役である旨の登記は、①特別取締役による議決の定めがあるとき、②委員会設置会社であるとき、③社外取締役の責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあり、当該契約を締結しているか又はその予定があるとき、であるが、これに限定されることなく、社外取締役が就任したときには、社外取締役である旨の登記をすることを義務付けるべきである。
【補足意見】A案を採用するのであれば、現行では登記事項となっていない「大会社」について登記事項に加えるべきである。なお、「大会社」については会計監査人設置会社の要件であることから、社外取締役の選任の義務付けをするかどうかにかかわらず、登記事項とすることを検討すべきである。
 B案を採用するのであれば、現行では登記事項となっていない「金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社」について登記事項に加えるべきである。
【理由】社外取締役が義務付けられる会社について、その前提である要件を登記により公示し、明確にすべきである。

2 監査・監督委員会設置会社制度
(1)監査・監督委員会の設置
【意見】
「監査・監督委員会」制度を採用するのであれば、監査・監督委員会設置会社である旨及び同委員の氏名について、それぞれ登記事項に加えるべきである。
【理由】他の機関設計と同様に、その旨を登記により公示し、明確にすべきである。

(2)監査・監督委員会の構成・権限等
【意見】
監査・監督委員会が選定する監査・監督委員は、株主総会において、監査・監督委員である取締役について、当該取締役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができるものとすべきである。
【理由】監査・監督委員会の権限を強化させるためにも、特に監査・監督委員である取締役の選任などについては、株主総会での意見を述べるようにすべきである。

(3)監査・監督委員会の経営者からの独立性を確保するための仕組み
【意見】
監査・監督委員である取締役については他の取締役とは別に株主総会にて選任するものとすべきである(株主総会選任型)。なお、監査・監督委員である取締役の任期については、他の取締役より長くする必要はない。
【理由】会社経営者からの独立性を確保するために、株主総会において、監査・監督委員である取締役の選任等をする必要がある。株主総会において、監査・監督委員である取締役の選任等をすることから、あえてその任期を他の取締役より長くする必要はない。

(4)監査・監督委員会設置会社の取締役会における業務執行の決定
【意見】
取締役に委任できる範囲を会社法第362条第4項第1号乃至第5号とすべきである。
【理由】監査・監督委員会が設置されている株式会社において、代表者等の業務執行の監査・監督を監査・監督委員がすることができることから、監査・監督委員は業務執行自体にかかわる必要性は少ないとして、会社法第362条第4項の取締役に委任できない事項についても、できるだけ委任できる事項を拡げても問題ないと考える。

3 社外取締役及び社外監査役に関する規律
(1)社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い
【意見】
A案に賛成である。
【理由】グループ企業等においては、親会社の取締役や監査役が子会社の社外取締役や社外監査役を兼ね、または、親会社の取締役や監査役であった者が子会社の社外取締役や社外監査役となることが多い。これらの社外取締役や社外監査役は親会社の意向の下に行動すると考えられることから、子会社の業務執行を実質的に決定する親会社について監査・監督的機能を果たすことは考えにくい。したがって、A案のように、社外性の要件として親会社の役員であった者を除外すべきである。
 また、【A案】を採用するのであれば、社外取締役等の就任等登記申請に際して当該要件に該当しないことを証する何らかの資料を添付することとする商業登記法の改正を行うべきである。

(2)社外取締役等の要件に係る対象期間の限定
【意見】
対象期間を限定することには賛成する。ただし、10年という期間については、それが適当な期間か否かを検討すべきである。
【理由】(1)でA案を採用すると、社外性を持つ役員候補の選任が困難になることも予想されるため、対象期間を限定することで人材確保するという意見には賛成する。

(3)取締役及び監査役の責任の一部免除
【意見】責任限定契約を締結できる取締役を、業務執行をしない取締役とすべきである。また、監査役については、社外監査役であるかどうかは問わない。なお、最低責任限度額の算定に際して、職務執行の対価として受ける財産上の利益の額に乗ずべき数は、「2」だけではなく、「3」や「4」についても検討すべきである。
【理由】業務執行しない取締役については、業務執行する取締役を監督する権限・義務を有することから、あえて社外取締役だけを責任限定契約を締結することができる取締役とすることはない。また、監査役についても、社外監査役だけでなく社外性を有しない監査役についても同様に監査権限・監査義務を有することから、あえて社外監査役だけを責任限定契約を締結することができる監査役とする必要はない。ただし、最低責任限度額の算定に際して、職務執行の対価として受ける財産上の利益の額に乗ずべき数は、社外取締役及び社外監査役については「2」となっているが、業務執行を有しない取締役や社外監査役でない監査役については「3」や「4」についても検討すべきである。

第2 監査役の監査機能
1 会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定
【意見】
B案に賛成である。
【理由】取締役による不正行為については、いわゆる会計監査が「甘い」監査法人等の会計監査人の候補者を取締役会が選出することにより、助長する傾向がみられる。このような観点からは、取締役会が候補者として選出する監査法人等について、監査役が同意権を持つことが、取締役による不正行為防止となる。
 A案のように監査役が会計監査役の報酬について決定権を持つことも考えられるが、あくまでも監査役の権限は業務執行に関する監査をすることであることから、会計監査人の報酬決定という財務的経営判断にかかわる業務執行について決定権を持つことではなく、同意権を持たせるべきである。

2 監査の実効性を確保するための仕組み
【意見】
監査を支える体制や監査役による使用人からの情報収集に関する体制に係る規定の充実・具体化を図ること、取締役及び使用人が監査役に対して法令違反等の情報提供をした際に、これらの者に対して不利益な取り扱いがなされないようにすることには賛成する。
 内部統制システムの運用状況の概要等については、事業報告の内容に追加するか、または、株主総会の招集通知に提供される監査報告に追加することも検討すべきである。
【理由】監査役による監査の実効性を確保するためには、監査を支える体制や監査役による使用人からの情報収集に関する体制に係る規定の充実・具体化を図ることや、取締役及び使用人が監査役に対して法令違反等の情報提供をした際にこれらの者に対して不利益な取扱いをしないこととするべきである。
 なお、内部統制システムの運用状況の概要等については、事業報告の内容に追加することが検討されているが、監査役による監査という観点からは株主総会の招集通知に提供される監査報告に追加することを検討すべきである。

第3 資金調達の場面における企業統治の在り方
1 支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等
(1)株主総会の決議の要否
【意見】
A案に賛成である。
 なお、公開会社においては発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍を超えることができないとする規定について見直すことにより、第三者割当による募集株式の発行等を規制することも検討すべきである。
【理由】支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等については、取締役会だけで決定することは既存株主の利益を害する恐れがあることから、ある程度議決権を有する株主が当該募集株式の発行等に関与することができるようにすべきである。その点でA案に賛成できる。
 しかし、会社法では、公開会社においては発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍まで認められていることとして、取締役会に発行済株式総数を超える募集株式の発行等が認められていることから、そもそも公開会社における発行可能株式総数について見直す必要があると考える。つまり、発行可能株式総数については、発行済株式総数の2倍を超えない等、募集株式の発行等に関する取締役会の権限を制限することを検討すべきである。
【補足意見】A案を採用するのであれば、当該募集株式の発行に係る変更の登記の申請に際して、異議のないことを証する書面を添付しなければならないものとする商業登記法の改正を行うべきである。
 B案を採用するのであれば、当該募集株式の発行に係る変更の登記の申請に際して、反対株主がいないことを証する書面を添付しなければならないものとする商業登記法の改正を行うべきである。
【理由】会社法秩序維持の役割について、商業登記が担うために必要な措置である。

(2)情報開示の充実
【意見】
上記(1)においてA案を採用する場合には賛成する。
【理由】株主に対して、引受人の情報や募集株式の発行がなされた場合の議決権の状況等について情報を与える必要がある。
 当該通知・公告を行うものとするのであれば、当該募集株式の発行にかかる変更登記申請に際して当該通知または公告をしたことを証する書面を添付することとする商業登記法の改正を行うべきである。 また、(注2)のような取扱いを採用するのであれば、現行では登記事項となっていない「金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社」について登記事項に加えるべきである。

2 株式の併合
(2)発行可能株式総数に関する規律
【意見】
公開会社における発行可能株式総数は、株式の併合が効力を生じた時だけでなく、資本金の額の減少においても、発行済株式の総数の4倍を超えることができないものとすべきである。なお、「4倍」ではなく「2倍」とすることも検討すべきである。
【理由】会社法では、公開会社においては発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍まで認められていることとして、取締役会に発行済株式総数を超える募集株式の発行等が認められているといえる。このことが取締役会に支配株主の異動の機会を与えることになりかねないことから、公開会社における発行可能株式総数について見直す必要があると考える。つまり、発行可能株式総数については、発行済株式総数の2倍を超えない等、募集株式の発行等に関する取締役会の権限を制限することを検討すべきである。

3 仮装払込みによる募集株式の発行等
【意見】
仮装払込みに関与した者の責任を見直すことには賛成する。
【理由】仮装払込みによる募集株式の発行等が無効にならないという判例法理が現行法においても引き継がれているとされることから、既存株主から引受人に対する価値の移転を防止するためにも、仮装払込みに関与した者の責任を規定するべきである。

第2部 親子会社に関する規律

第1 親会社株主の保護
2 親会社による子会社の株式等の譲渡
【意見】
原案に賛成である。
【理由】子会社の株式を譲渡することにより子会社の事業に対する支配を失うことは、親会社に対して事業譲渡と同様の影響が生じると考えられるため、これと同様の規律を設けるべきと考える。

第3 キャッシュ・アウト
1 特別支配株主による株式売渡請求等
【意見】
売渡株主の利益保護を十分に図ることを条件に、原案に賛成である。
【理由】キャッシュ・アウトを迅速、かつ、簡便な手続により実現する新たな制度を創設することには賛成である。ただし、⑧の(注)に示されているように事前、事後開示手続における開示事項を充実させる等、売渡株主の利益保護を十分に図る必要があると考える。

2 全部取得条項付種類株式の取得に関する規律
(1)情報開示の充実
【意見】
原案に賛成である。
【理由】キャッシュ・アウトの手法として利用されている全部取得条項付種類株式の取得については、少数株主の利益保護の観点から株式交換等組織再編手続と同様の情報開示手続を設けるべきであると考える。

(2)取得の価格の決定の申立てに関する規律
【意見】
原案に賛成である。
【理由】全部取得条項付種類株式の取得手続における株主の取得価格決定の申立ての機会を保障するため、組織再編手続における反対株主の株式買取請求手続と同様の規律を設けるべきであると考える。

3 その他の事項
【意見】
原案に賛成である。
【理由】株主総会等の決議が取り消されることにより株主の地位を回復する者についても、決議取消しの訴えの原告適格が認められるべきであると考える。

第4 組織再編における株式買取請求等
2 株式買取請求に係る株式等に係る価格決定前の支払制度
【意見】原案に賛成である。
【理由】濫用的な株式買取請求権に対処すべく、妥当であると考える。なお、(注4)について、反対株主は、株式買取請求した後、当該請求に係る株式について剰余金配当受領権を有しないこととする改正が必要であると考える。

3 簡易組織再編等における株式買取請求
【意見】原案に賛成である。
【理由】特に非上場の会社においては、株主にとって数少ない投下資本回収の場面となっていたが、本来の制度趣旨を考えると原案による改正は、妥当であると考える。

第5 組織再編等の差止請求
【意見】B案に賛成である。
【理由】現行法によっても対応可能な部分もあり、【A案】を採用することによる株式会社及び株主双方の影響を考えた場合、特段改正の必要はないと考える。

第6 会社分割等における債権者の保護
1 詐害的な会社分割における債権者の保護
【意見】
原案に賛成である。
【理由】なお、現行法制では、会社分割後も分割会社に請求することができる債権者は、異議を述べることができないため、当該債権者は会社分割の事実を知ることなく、濫用的な会社分割がされる場合がある。このことを防止するため、吸収分割株式会社又は新設分割株式会社が債務超過である会社である場合及び吸収分割承継株式会社又は新設分割設立株式会社が会社分割によって債務超過となる場合には、会社法第799条第2項又は第810条第2項の各別の催告を行わなければならないとする改正も行うべきである。

第3部 その他

第3 その他
1 募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約
【意見】原案に賛成である。
 ただし、契約の承認は、公開会社でない株式会社においては、株主総会の決議によることを原則とし、取締役(取締役会設置会社にあっては取締役会)に委任することができる、とする規律を採用すべきである。
 同様に、公開会社でない株式会社においては、割当先の決定(会社法第204条第2項)についても株主総会の決議を原則とし、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては取締役会の決議)に委任することができるものとする、という規律を採用すべきである。
 また、会社法第204条第3項の規定による払込期日の前日までに通知を要するとする規律については、株主総会の決議の日を払込期日と定めて同日に払込みがされた場合に、即日引受人が株主となることが可能となるようにすべきである。
【理由】会社法第204条第3項の規定により、株式会社は、第199条第1項第4号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。また、公開会社でない取締役会設置会社においては、募集事項の決定は株主総会(会社法第199条第2項)、割当先の決定は取締役会(会社法第204条第2項)が行うのが原則である。しかし、手続着手前から新株の引受先が既に決まっており、迅速に募集株式の発行の手続をとりたい株式会社にとっては、これらの規律が障害と感じられ、会社法第203条及び第204条の適用を回避するために、会社法第205条の規定による総数引受契約の締結を選択する面があった。
 したがって、公開会社でない株式会社においては、割当先の決定(会社法第204条第2項)について株主総会の決議を原則とし、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては取締役会の決議)に委任することができるものとし、契約の承認についても、同様の規律を採用すべきであると考える。
 また、会社法第204条第3項の規定による払込期日の前日までに通知を要するとする規律については、無用であると考えられ、株主総会の決議の日を払込期日と定めて同日に払込みがされた場合に、即日引受人が株主となることが可能となるようにすべきである。

2 監査役の監査の範囲に関する登記
【意見】
会社法第911条第3項第17号括弧書を削除して、会社法第2条第9号が定める「監査役設置会社」についてのみ、その旨を登記することとし、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社については、「監査役設置会社」である旨の登記を要しないものとすべきである。
 仮に、監査役の監査の範囲を公示するのであれば、中小企業の負担を考慮して限定がある会社について登記するのではなく、限定のない会社について登記事項とすべきである。なお、当該登記については、登記期間や登録免許税について格別の配慮を講ずべきである。
【理由】監査役を置いている株式会社は、次のように種別される。
① 公開会社
② 公開会社でない株式会社であり、かつ、監査役会設置会社又は会計監査人設置会社
③ 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)であり、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがない株式会社
④ 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)であり、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社
 このうち、①~③は、監査役設置会社(会社法第2条第9号)であり、問題となっているのは、大多数の中小零細株式会社が属する④である。
 そもそも商業登記制度が会社法等の規定により登記すべきとされた事項を公示することによって、会社に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的としている(商業登記法第1条)ことに鑑みると、登記することにより公示する必要があるのは、業務監査権限を有する監査役を置いている「監査役設置会社」(会社法第2条第9号)であって、④の範疇の株式会社について、会計監査限定の監査役を置いていることを殊更に公示する必要は、極めて乏しいと言わざるを得ない。
 また、定款変更により監査役を置かないことにしたり、逆に置くことにすることによって、監査役設置会社である旨の登記につき変更の登記の必要が生じやすいのが④の範疇の株式会社であるが、例えば、解散に際しても、監査役を置かないことにするためには、登録免許税を余計に3万円負担する必要があるために、実質的に機能しない監査役であるにもかかわらず、廃止の登記をせずに放置されがちであるという実態もある。
 したがって、④の範疇に属する株式会社に関しては、監査役設置会社である旨の登記を要しないものとすべきであり、会社法第911条第3項第17号括弧書を削除して、会社法第2条第9号が定める「監査役設置会社」についてのみ、その旨を登記することとすべきである。

4 発行可能株式総数に関する規律
【意見】公開会社における発行可能株式総数は、発行済株式の総数の2倍を超えることができないものとすべきである。ただし、発行可能株式総数を超えた新株の発行を行う必要があるときは、募集事項の決定につき株主総会の決議を要するものとして、許容すべきである。
【理由】「支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等」に関する規律と併せて考えると、募集事項の決定を取締役会が行うのが原則である公開会社における発行可能株式総数は、発行済株式の総数の2倍を超えることができないものとするのが合理的である。また、株式の併合や消却によって発行済株式総数が減少した場合に、その何倍もの株式を新規に発行することは、妥当ではないので、これらの場合にも同様の規律を設けるべきである。
 そして、発行可能株式総数を超えた新株の発行を行う必要があるときは、当該枠外発行の数を前提とする発行可能株式総数の増加に係る条件付定款変更を行い、かつ、募集事項の決定につき株主総会の決議を要するものとすべきである。
 この点、吸収合併における事案であるが、吸収合併に際しての発行可能株式総数を超えた株式の発行及び当該枠外発行の数を前提とする発行可能株式総数の増加に係る条件付定款変更の可否について、法務省民事局商事課長通知(平成20年9月30日付法務省民商第2665号)により「吸収合併に際し、公開会社である吸収合併存続会社が、吸収合併消滅会社の株主に対して合併対価として当該吸収合併存続会社の株式を交付するために、当該株式をその発行可能株式総数を超えて発行することとするとともに、あらかじめ当該吸収合併の効力発生前に当該吸収合併存続会社の株主総会において当該効力発生を停止条件としてその枠外発行の数を前提とする当該発行可能株式総数の増加に係る定款の変更の決議をすることは可能である」として許容されており、募集事項の決定につき株主総会の決議を要するものとすれば、同通知の射程を募集株式の発行の場合にも拡げることは可能であると考える。

 会社法制の見直しに関する中間試案の指摘事項となっていないものの見直しに関する意見

1.募集新株予約権について
【意見】
募集新株予約権の発行の場合において、取締役会に委任できる事項につき、その委任できる範囲を旧法と同程度にすべきである(第239条関係)。
【理由】新株予約権の内容について、その全てを株主総会で定めなければならないとすることは、いたずらに株主総会の開催を必要とするものであり、機動性に欠けるからである。株主総会において株主が判断することで株主保護は十分にはかられていると考え、取締役会に委任できる事項を旧法と同程度とすべきである。平成17年改正前商法においては、株主総会の授権決議により取締役会にある程度の決定権限が移譲されていた(例えば、行使価額について株主総会において定めた行使価額が下限であり、これを上回る行使価額を取締役会にて決議することは許容されていた)が、平成17年改正後の会社法においては、これを一切認めないとする取扱いとなっているため、株主総会を都度開催しなければならないこととなっている。

2.新株予約権の消滅について
【意見】新株予約権の消滅に関する規定と行使することができなくなった場合が不明確である点を、明確にすべきである(第287条関係)。
【理由】新株予約権の消滅事由を、行使することができなくなったときとする会社法第287条の規定は不明確であり、新株予約権の行使の条件等の関係から、退職者等の場合の取り扱いについて実務上不明確な点が多いからである。また、新株予約権が消滅したことによる登記も頻繁に生じていることから、会社法第915条第3項事由につき、新株予約権の消滅による登記も含めるべきである。

3.新株予約権の行使の条件について
【意見】上記要望に関連して、新株予約権の行使の条件を新株予約権の内容とすべきである(第236条関係)。
【理由】解釈として、新株予約権の行使の条件も新株予約権の内容とされているが、会社法第911条3項12号ハとの関係を明確にするために、これを明文化すべきである。

4.社外取締役等に関する登記義務について
【意見】社外取締役・社外監査役である旨の登記事項について、「責任限定契約を締結する予定があるとき」という要件は不明確であることから、明確な規定とすべきである(第911条第3項関係)。
【理由】社外取締役である旨の登記は、①特別取締役の議決の定めが設けられた場合(会社法第911条第3項第21号)、②委員会設置会社である場合(会社法第911条第3項第22号)、③社外取締役が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがある場合で、かつ、当該社外取締役と契約を締結し、又は締結を予定している場合(会社法第911条第3項第25号)のいずれかに該当するときにその登記申請が必要となる。また、社外監査役である旨の登記は、①監査役会設置会社である場合(会社法第911条第3項第18号)、②社外監査役が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがある場合で、かつ、当該社外監査役と契約を締結し、または締結を予定している場合(会社法第911条第3項第26号)のいずれかに該当するときにその登記申請が必要となる。しかし、実際に責任限定契約を締結しようと予定した者について社外取締役の登記をしたところ、責任限定契約の予定がなくなった場合には、当該社外取締役の旨の登記を抹消する必要があるなど、社外取締役・社外監査役の旨の登記義務を責任限定契約を締結する「予定」によることは、登記の公示機能の意味をなしていないからである。

5.取締役等による責任免除に関する手続について
【意見】取締役等による責任免除に関する手続に不明確で不合理な部分があるので、これを、明確で合理的な規定に整理すべきである(第426条関係)。
【理由】会社法第426条では、監査役設置会社において、会社法第423条の責任の免除について定款に定めることができるとしているが、会計限定の監査役を置く会社が定款変更をして会社法426条の定めを設けようとする場合、会社法第425条第3項に定める監査役の同意は、会計に限定されない監査役の同意が必要であるとされているため、当該定めを設けるためには、まず株主総会で監査役の権限を拡大し、その後の株主総会で定款変更の議案を上程するという手間を要している。よって、係る不都合を避け、速やかに定款変更ができるよう規定を整理する必要があると考える。

6.定時株主総会における報告の省略について
【意見】監査役の権限を会計に限定している会社が定時株主総会を行おうとする場合、監査役の報告が株主総会において行われることを前提としているが、会社法第319条及び第320条による手続だけで足りるように改正すべきである(第389条第3項関係)。
【理由】会社法第319条の規定は、株主全員の同意があれば株主総会を省略できるようにしたものであり、報告事項についても会社法320条の規定によって、株主総会を省略できるようにしたものである。ここで、会社法第389条第3項の報告のために実際に株主総会を開催する必要があるとするのは立法趣旨に反すると考えられるからである。

7.取締役等の任期の起算点について
【意見】取締役等の任期の起算点が選任時からとしているものを、就任時からとすべきである(第332条等関係)。
【理由】会社法では、役員の任期起算点が選任時となっているが、そのために任期計算が複雑化し、また、登記記録から任期計算ができないようになってしまっているからである。これでは、商業登記制度の公示性の機能を損ないかねないからである。

8.決算公告の義務について
【意見】
決算公告義務について、大会社以外の会社においては、現行のような決算公告の義務を廃止すべきである(第440条等関係)。
【理由】中小企業は、ほとんどの会社が決算公告を行わず、登記申請の際に必要とされる場合のみ行っているのが実情である。その上、そのような形で決算公告を行ったとしても、債権者保護として機能していないのが実情であるため、中小企業など一定の会社については、事実上機能していない制度にかかるコストを削減する観点から、決算公告義務を廃止すべきである。なお、廃止が困難であるなら、登記情報を取り扱う法務局のシステムを利用して、無償または安価に公告する方法も検討すべきである。

9.募集株式における総数引受契約について
【意見】
総数引受契約を締結する場合につき、現状その様式について特段の定めはないが、最低限の記載事項等手続を明確にすべきである(第205条関係)。
【理由】総数引受契約を締結する場合には、会社法第205条等のように、契約書記載事項や決定機関についての定めがない。契約自由の原則があるとはいえ、中小企業等を取り巻く投資家においては与えられる情報も限られていることから、最低限契約書記載事項につき定めることや、契約締結に係る決定機関について明文化すべきである。

10.会計監査人の任期について
【意見】会計監査人の任期に関する会社法第338条第1項の規定を改正すべきである。
【理由】現行法の下では、定時株主総会において、事業年度を変更して、最初の事業年度を1年超とする場合、会計監査人の任期に関して、「1年内に終了する最終の事業年度」が存在しないこととなる不都合が存在するため、適切に改正すべきである。

11.事業譲渡に関する登記について
【意見】事業譲渡についても登記を要することとすべきである。
【理由】事業譲渡は、組織再編行為ではないが、これに準ずるものとして、一定の場合、株主総会の決議を要するものとされているにもかかわらず、登記事項とはされていない。会社分割が、事業譲渡と極めて類似するものであり、会社分割に登記が必要とされていることとの平仄を欠く。取引の安全の観点から、公簿上記録されることが望ましいケースもあるからである。

12.取締役等の資格喪失制度について
【意見】取締役等の資格喪失制度を創設すべきである。
【理由】消費者問題の在り方に関する国民生活審議会の意見書においては、「特に悪質な事業者については、積極的に解散命令を活用することや、再犯歴がある個人は会社設立に関与する資格を剥奪する制度を構築することも考えられる。その際、そうした対応を一定の悪質行為に対応する行政処分として行うことの可否や、可能である場合はその執行主体としてどのような主体が適切か等の問題を検討する必要がある」と述べられていた。
 我が国における取締役の資格については、会社法第331条第1項が定める取締役の欠格事由に加えて、各種の業法による厳格な規制が存する。例えば、宅地建物取引業法においては、同法第5条第1項第7号及び第3号により、執行猶予期間が経過してからさらに5年を経過しない者は、宅建業を営む会社の役員に就任することができないものとされており、通常の事業を営む会社に比して、厳しい取扱いとなっている。取締役の資格をより一層制限するためには、立法に拠らねばならないが、例えば、英国には、取締役の資格剥奪制度があり、取締役の行為が不適任であると裁判所が判断した場合に、一定期間取締役として会社経営に関与することを禁じることができるとされているが、我が国においても同様の取扱いの導入を検討すべきである。
 また、会社の設立の際に、出資者又は取締役等の「無犯罪証明書」を要求する国もあり、ビザ(査証)の発給に際して同証明書が要求されるケースがあることから、我が国においても、かかる証明書を発行する例があるようである。したがって、設立登記の添付書面として、同証明書を要求する取扱いの採用も不可能ではない。

13.株主総会議事録等の保存期間について
【意見】株主総会議事録及び取締役会議事録の保存期間を、20年とすべきである。また、商業登記における附属書類の保存期間も同様に20年とすべきである。
【理由】不法行為の除斥期間と合わせる必要がある。

14.組織再編の際の電子公告を行う場合における公告の継続期間について
【意見】組織再編の際の電子公告を行う場合、「効力発生日まで」公告を継続しなければならないという規定を「前日まで」とすべきである。
【理由】会社法第940条第1項第1号の文言では、効力発生日まで公告を継続しなければならず、効力発生日に登記の申請をすることができないという不都合があることから,実務では「前日まで」でよいものと取り扱われている。したがって、実務上の取り扱いと同様「前日まで」と改正すべきである。

15.株式分割と同時に行う発行可能種類株式総数の増加について
【意見】株式分割と同時に行う発行可能種類株式総数の増加について、株式分割の割合の範囲内であれば、取締役会決議による定款変更を認めるべきである(会社法第184条関係)。
【理由】株式分割と同時に行う発行可能株式総数の増加について、株式分割の割合の範囲内であれば取締役会決議による定款変更が可能とされている(会社法第184条第2項)が、発行可能種類株式総数については、このような取扱いが認められていない。しかし、発行可能株式総数と発行可能種類株式総数とでこのような違いを設ける必要性は薄く、種類株式発行会社ではあるが現に1種類の株式しか発行していない株式会社が、機動的に株式分割を行う妨げとなっている。
 よって、発行可能種類株式総数についても、発行可能株式総数と同様の取扱いを認めるべきである。

16.その他
【意見】商業登記規則第61条第3項を改正し、取締役会設置会社における取締役及び監査役設置会社における監査役についても、設立の登記又は当該取締役及び監査役の就任による登記の申請書には、当該取締役及び監査役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならないこととすべきである。
【理由】会社法第429条又は同法第847条等の規定に基づく訴訟を提起しようとしても、当該取締役及び監査役の住所が不明で訴状等の送達ができないケースがしばしば見受けられる。悪質な場合には、虚無人の氏名で登記がされることもあるようである。取締役及び監査役の責任の重要性に鑑みると、実在人証明の要請は、単に代表取締役のみに限られない。したがって、取締役会設置会社における取締役及び監査役設置会社における監査役についても、取締役会設置会社以外の株式会社における取締役の場合と同様に、設立の登記又は当該取締役及び監査役の就任による登記の申請書には、当該取締役及び監査役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならないこととすべきである。

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