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総会決議集

司法書士を国家への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の適用対象とする立法化に反対する決議

司法書士の守秘義務を守り、依頼者の利益ひいては市民が安心して司法書士にアクセスする権利を守るため、司法書士を国家への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の適用対象とする立法化に反対する。

 

以上のとおり決議する。

2006年(平成18年)6月23日
日本司法書士会連合会 第68回定時総会

【提案理由】

  1. ゲートキーパー制度とは、マネー・ロンダリング(資金洗浄)対策やテロ資金対策を目的として、国家機関への報告義務を負う者の範囲を現行の金融機関のみならず、金融等取引に関与する法律専門家に拡大する制度である。FATF(金融活動作業部会-OECD加盟国を中心とする31か国参加の政府間機関)の勧告(以下「40の勧告」という)において、その内容が定められ、現在、加盟各国に対して国内法の整備を求めている。
    これを受け政府は、短期間に高額な現金を出し入れするなどテロ資金の提供や組織犯罪などによるマネー・ロンダリングが「疑わしい取引」の報告義務を、司法書士等法律専門家にも適用し、その報告義務違反に対しては刑罰の制裁を課すとした法案を来年の通常国会に提出する準備を行っている。なお、報告先は警察庁となる予定である。
  2. この「40の勧告」において、報告義務の対象となる「特定業務」として例示されているのは以下のとおりであり、司法書士の日常業務に直結するものである。
    ア 不動産の取引

    イ 依頼者の金銭その他の資産の管理

    ウ 銀行口座等の管理

    エ 会社の設立等に関する出資金のとりまとめ

    オ 法人等の法的機構の設立並びに事業組織の売買等

     

  3. もちろん、テロ対策及びマネー・ロンダリングの防止は重要であり、司法書士がマネー・ロンダリングに加担することは許されない。
    仮に司法書士が、取引の対象が犯罪利益であることを確定的に知っていた場合には、かかる取引を止めるように依頼者に助言すべきであり、司法書士は、依頼者が上記の助言にもかかわらず、取引を停止しないときには、それ以上の業務遂行を断固拒否するべきであって、それを怠った場合、司法書士法第2条「職責」、会則で定める「違法行為の助長の禁止」「品位の保持」、司法書士倫理第15条「違法行為の助長等」などに抵触し、懲戒処分の対象となると考えられる。
    以上のとおり、司法書士のマネー・ロンダリングへの加担は、ゲートキーパー制度によらなくても防止できるのである。
    また、そもそも司法書士がマネー・ロンダリングに深く関っていることを示す事例は報告されていない。国際的な規制の方向には充分考慮する必要はあるが、少なくともわが国においては、司法書士に対してマネー・ロンダリングの疑いのある活動について報告義務を制度化する前提たる立法事実が存在しないのである。
  4. 司法書士の法的事務は、委任契約を締結する依頼者との間の信頼関係を前提としている。そしてこの信頼関係は、司法書士が業務上知り得た事実に関する守秘義務を貫徹すること、法律家として依頼人の権利保護のために最善を尽くすという誠実義務を貫徹することなどを基礎として形成される。
    この点につき「40の勧告」では、守秘義務に対する一定の配慮をし、法律専門家の職業上の守秘義務の範囲では報告を義務付けられないとしている。しかし、守秘義務の範囲自体が一義的に明確でないがゆえに、「疑わしい取引」という抽象的なレベルでの報告義務違反に対する刑罰を恐れて、結果的に守秘義務の範囲内の事項を報告してしまう危険性は拭いきれない。
    また、司法書士が依頼者の取引内容について報告したことを依頼者に告げること(内報)を禁止されれば、依頼者は秘密のうちに報告がなされることを恐れて真実を打ち明けなくなり、司法書士との信頼関係の構築はきわめて困難となる。そればかりか、市民が安心して司法書士にアクセスすることすらできなくなるという弊害をもたらす。
    このようにゲートキーパー制度が実現すれば、司法書士制度を利用する依頼者及び一般市民の権利・利益を侵害することになる可能性が高い。
  5. なおFATF加盟国の弁護士会の多くはこの法制化に批判的で、反対運動をしたり違憲訴訟で争っている。国際的な取り決めであっても、国内の状況に応じた対応がなされてしかるべきであり、現在、日弁連及び多くの弁護士会が組織を挙げて反対の意思表示をしているところである。
  6. よって、司法書士の守秘義務を守り、依頼者の利益ひいては市民が安心して司法書士にアクセスする権利を守るため、司法書士を国家への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の適用対象とする立法化に反対する。
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